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【香港ヴァーズ】栗山求氏による血統傾向と有力馬分析

2017年12月06日 13:00

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 香港競馬はオセアニア生産界と結びつきが深い。しかし、このレースは北半球産馬が圧倒的に強く、過去10年間の連対馬20頭中19頭を占めている。オセアニア産馬が得意とするスプリント戦やマイル戦とは異なり、長丁場の2400mはヨーロッパ勢の独壇場。昨年、日本のサトノクラウンが勝ったものの、開催時期がかぶるジャパンカップに有力馬が出走するため、このレースはどうしてもメンバーが手薄になり、過去10年間に連対を果たした馬は2頭しかいない。


 一貫してヨーロッパ血統が優勢のレースだが、13年以降、血統の傾向が変わってきている。父または母の父がダンジグ系、という馬が8頭の連対馬中7頭を占めている。13年の優勝馬ドミナントや14年の2着馬ウィリーカザルスのように、ヨーロッパで誕生した香港調教馬もダンジグの血を持っている馬であれば信頼できる。サドラーズウェルズ系もさすがの強さで、父または母の父にこの系統を持つ馬が過去10年間に8頭連対している。

 一昨年優勝、昨年2着のハイランドリールは「ガリレオ×デインヒル」という血統。このレースの好走傾向に合致する血統なので信頼性が高い。父ガリレオは英愛リーディングサイアー8連覇(計9回目)が確定的となっている大種牡馬で、父系はサドラーズウェルズにさかのぼる。母の父デインヒルはダンジグの息子。今シーズンは6月にコロネーションSとプリンスオブウェールズSを連勝し、相変わらずの実力を示している。前走のブリーダーズCターフは勝ち馬から4分の3馬身差の3着。連戦の疲れと馬場の悪化がなければ今回も勝ち負けに持ち込めそうだ。

 タリスマニックはサドラーズウェルズ系のメダグリアドーロの子。3走前のモーリスドニュイユ賞で初めて重賞を制覇し、前走のブリーダーズCでは伏兵の1頭だったが好位から抜け出して優勝した。母の父がミスタープロスペクター系のマキアヴェリアンなので堅い馬場が合っている。  地元香港のゴールドマウントはイギリス産馬。母が「ダンジグ系×サドラーズウェルズ系」なのでこのレースに向いた配合構成だ。父エクセレントアートはヌレイエフ系のピヴォタル産駒で、イギリスのG1を勝った一流馬だが、種牡馬としては成績不振でインドへ輸出された。前走は芝2000mのG2でワーザーの4着だったが、同馬の5着に敗れた5月の香港チャンピオンズ&チャターCよりは内容が良化しているので、前潰れの展開になれば馬券の一角に食い込んでくる可能性を秘めている。

 地元香港のイーグルウェイはオーストラリア産馬。母の父ルアーがダンジグ系だが、父がヘイロー系のモアザンレディで、オーストラリア産馬だけあってやや血統が軽い。5月の香港チャンピオンズ&チャターCで3着と健闘したが、その後は6着、5着と冴えない成績なのは気になる。

 ティベリアンは前々走の仏G2ドーヴィル大賞を制覇。2400m前後を得意とするタイプなので怖い。ダンジグ系のティベリウスカエサルが父、母の父は昨年のこのレースの覇者サトノクラウンの父としても知られるマルジュ。前走のメルボルンCは7着と敗れたが、慣れない遠征競馬だったので致し方ない。春にはタリスマニックに二度先着しており、軽い馬場も重い馬場もこなす。うまく立ち回れば怖い1頭だ。

 日本のキセキは「ルーラーシップ×ディープインパクト」という組み合わせ。父ルーラーシップは生涯唯一のG1制覇が香港のクイーンエリザベス2世Cだったように、香港の馬場はいかにも合いそうだ。その父キングカメハメハの代表産駒ロードカナロアも香港スプリントを2連覇しており、基本的にキングカメハメハの血は香港の馬場とフィットする。サトノクラウンとの比較をすれば、まだその域には達していないように思われるが、母がグレーターロンドンの全姉だけあって決め手のある馬なので、展開が向けばおもしろい。

 トーセンバジルは重賞タイトルはないものの、前走の京都大賞典ではスマートレイアーから半馬身差の2着。阪神大賞典と神戸新聞杯で3着となっている。父ハービンジャーは今年の秋、京都芝で産駒がG1を3勝した。洋芝を得意とするタイプなので香港の馬場は合うだろう。なおかつ、本馬の従兄弟トーセンスターダムはオーストラリアへ移籍後、G1を2勝。母方の血も洋芝OKなので一発があっても不思議はない。

【栗山求の最終見解】

 昨年は日本馬サトノクラウンがハイランドリールを差し切って優勝。凱旋門賞2着のあとブリーダーズCターフを制した一本被りの人気馬を、G1未勝利の日本馬が負かす大番狂わせだった。サトノクラウンはダービー3着の実績があり、香港ヴァーズの後、宝塚記念を勝ち、天皇賞・秋でも2着となった実力馬。潜在的には優にG1級の能力を身につけていたということだろう。

 過去、このレースを日本馬は2勝。サトノクラウンのほかに01年にステイゴールドが勝っている。毎年、ヨーロッパからそれなりの実力馬がやってくるので、ジャパンCに出走しないレベルの日本馬が負かすのは容易ではない。

 日本勢の大将キセキは3歳馬。神戸新聞杯でダービー馬レイデオロに2馬身差を付けられて敗れたが、雨で極度に馬場が悪化した菊花賞を快勝した。当初からここが目標だったので「ジャパンCに出走しないレベル」というわけではない。

 菊花賞馬が香港ヴァーズに直行した例は過去に一度だけある。06年のソングオブウインド。2番人気に推されたものの4着に敗れている。クラシック馬といえども3歳馬ではこのあたりが精一杯ともいえる。

 しかし、キセキの場合、父が香港でG1を制したルーラーシップなので馬場が向く可能性が高い。キングカメハメハ系はロードカナロアが香港スプリントを2連覇したように香港の洋芝ときわめて相性がいい。ルーラーシップは成長力豊かなダイナカール牝系なのでまだまだ伸びしろがあると思われる。そして、海外競馬に無類の強さをみせるディープインパクトを母の父に持つのも心強い。いまの勢いなら通用するのではないか。

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