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【香港マイル】栗山求氏による血統傾向と有力馬分析

2017年12月06日 13:00

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 出走馬のなかで最も勢いがあるのは地元香港の5歳セン馬シーズンズブルーム。直近4戦のうち3戦を制し、香港マイルの前哨戦G2ジョッキークラブマイルでは堂々1番人気に応えて外から差し切った。ただし、斤量55.8kgは、半馬身差2着のヘレンパラゴン、そこからクビ、アタマ差4着のビューティーオンリーの58.1kgに比べると2.3kg軽い。本番では同斤になるので割り引きは必要だ。

 父キャプテンソニャドールは現役時代にオーストラリアでマイルG1を勝った。2代父シャマーダルはダーレーグループのエース格ともいえる名種牡馬で、近い世代にストームキャットとマキャヴェリアンを抱えているため堅い芝への適性が高い。ヨーロッパよりも相対的に速いタイムが出る香港では産駒が大活躍しており、14年の当レース優勝馬で香港年度代表馬にも輝いたエイブルフレンド、今年のG1クイーンエリザベス2世カップでネオリアリズムの2着となったパキスタンスターの父でもある。シーズンズブルームの母の父ノットアシングルダウトは、リダウツチョイス→デインヒル→ダンジグとさかのぼる血統。ダンジグ系は当レースと相性がいい。

 昨年の覇者ビューティーオンリーは今年8戦して一度も勝っていない。重ハンデを課せられ、それに泣いたレースもいくつかあったので、衰えたわけではない。5月に行われた別定戦のG1チャンピオンズマイルではクビ差2着となっている。4着に敗れた前走のジョッキークラブマイルは、前述のとおり勝ったシーズンズブルームよりも2.3kg重い斤量を背負っていた。デインヒル系のホーリーローマンエンペラー産駒。同産駒は香港競馬と相性が良く、本馬の他にデザインズオンロームやリッチタペストリーがG1を制覇している。目標のレースにキッチリ仕上げてくるクルーズ調教師の手腕は怖い。

 昨年2着のヘレンパラゴンは、年明けから芝1600mと芝1400mのG1を連勝。その後はビューティーオンリーと同じく重ハンデを課せられたレースでは結果を出せなかったが、前哨戦のジョッキークラブマイルでは58.1kgを背負い、2.3kg斤量が軽いシーズンズブルーム相手に2着と健闘した。父ポランはブラッシンググルーム系で、現役時代に重賞すら勝っていない無名馬だったので産駒もほとんどいない。そのなかでヘレンパラゴンを送り出したのは立派だ。サドラーズウェルズのクロス(4×3)を持つのは今年の凱旋門賞を勝った女傑エネイブルと同じ。今後、このクロスを持つ活躍馬はどんどん増えてくるに違いない。馬群を割れるガッツと、使い減りしないタフさと、息の長い末脚が持ち味。晩成型の血を受け継いでいるのでこれからキャリアの頂点を迎える可能性は十分ある。

 冒頭に記したとおり、香港調教馬以外は、過去10年間でわずか4頭しか連対していない。内訳は、日本、イギリス、フランス、アラブ首長国連邦が1頭ずつ。アイルランド調教馬ローリーポーリーはクールモア&オブライエン軍団の1頭で、今年、ライアン・ムーア騎手とのコンビでファルマスS、ロートシルト賞、サンチャリオットSと英仏の牝馬G1を計3勝した。

 父はダンジグ系のウォーフロント、母の父はサドラーズウェルズ系のガリレオという組み合わせで、母ミスティフォーミーは愛1000ギニーなどG1を4勝した名牝。ローリーポーリーのほかに今年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬に選ばれたユーエスネイビーフラッグを産んでいる。逃げまたは2番手からしぶとく抜け出す、というのがこの馬のスタイルで、11着と敗れた前走のブリーダーズCマイルは、スタートで出遅れて進路を締められ、仕方なく後方を追走するという不本意な競馬。持ち味を発揮できなかった。今回、スタートを決めれば前走のようなことはないだろう。ただ、当レースはラストの決め手比べとなるケースがほとんどなので、実力は認めても展開的に向くとはいいがたい。

 同じくクールモア&オブライエン軍団のランカスターボンバーは、これまたローリーポーリーと同じウォーフロント産駒。マイルG1を3勝したエクセレブレーションの半弟にあたる。重賞勝ちはなく、G1で2着5回というもどかしい成績。前走のブリーダーズCマイルも2着だった。戦績が示すとおり決め手が甘いので、このレース向きではないものの、レースの流れに乗るのは上手いので、展開次第では2、3着の残り目も考えられる。

【栗山求の最終見解】

 4レース行われる香港国際競走のうち、距離の長い2レースはヨーロッパ勢や日本勢が主役だが、距離の短い2レースは地元香港勢が強い。香港マイルは過去10年間の連対馬20頭中16頭が地元調教馬によって占められている。香港スプリントが14頭なのでそれよりも多い。

 日本馬は15年にモーリスが優勝した。同馬は日本における近年最高のマイラーで、15年にJRA年度代表馬となり、翌年は距離の壁を打ち破って天皇賞・秋を制覇した。香港マイルはモーリス級でようやく勝算が立つレースなので、その域に達していない日本馬は苦戦を免れないだろう。

 安田記念を制したサトノアラジンは、天皇賞・秋のしんがり負けは記録的な降雨の影響で仕方がなかったとはいえ、続くマイルチャンピオンシップも12着と大敗。稍重ならばそれなりに格好をつけられるはずなので、調子がもうひとつ上がってこない印象だ。一昨年は香港カップで11着、昨年は香港マイルで7着。馬券圏内に入れば大健闘ではないだろうか。

 クールモア&オブライエン軍団の2頭、ローリーポーリー、ランカスターボンバーは、能力の高さは認めても香港マイル向きの決め手は持ち合わせていない。

 となると、地元香港調教馬の争いになるのではないか。本命はヘレンパラゴン。昨年の2着馬で、晩成型の血統だけにまだまだ伸びしろがある。サドラーズウェルズのクロス(4×3)は凱旋門賞馬エネイブルと同じで、血統的なトレンドに合致するという見方もできる。他馬と接触してもひるまず馬群を割れるのは大きなセールスポイント。多頭数の大レース向きだ。

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