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【ブリーダーズカップ回顧】日本勢には残念な結果も物語に続きがある事を祈る

2023年11月07日 15:10

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 現地時間4日、ブリーダーズカップ(以下、BC)の各レースが米国サンタアニタパーク競馬場で行われ、日本馬8頭が6つの競走に挑んだ。

 当日はカリフォルニアらしい青空の広がる天候で当然、良馬場。メインレースのBCクラシック(G1、ダート2000メートル)に挑戦したのはウシュバテソーロ(牡6歳、美浦・高木登厩舎)とデルマソトガケ(牡3歳、栗東・音無秀孝厩舎)。ドバイワールドカップ(G1)の覇者である前者は、JRAプールの馬券で12頭立ての圧倒的1番人気に支持(以下、全てJRAプールでの人気)されたが、残念ながら5着に敗れた。

「状態は良かったです。ただ、ウシュバテソーロにとってはタフな馬場になってしまいました」

 管理する高木調教師は、残念そうな表情を隠す事なくそう語った。

BCクラシックで2着と大健闘したデルマソトガケ。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

 対照的に笑顔を見せたのが音無調教師だ。早々に手応えが悪くなったかと見えたデルマソトガケだが、そこからしぶとさを発揮。結果、2着と善戦。過去に4頭の日本調教馬が5度挑んだ北米競馬の頂点で、最高だった6着を大幅に更新し、日本馬として史上初めて連対してみせた。

「勝てなかったのは残念だけど、良く頑張ってくれました。4コーナーで少し離されてしまったのが痛かったです。あれがなければ……」

 音無調教師は笑顔の中にも悔しさを感じさせる口調でそう語った。

 なお、勝利したのは地元R.ダトローJr.調教師が管理するホワイトアバリオ。難しい気性に加え、蹄が薄いという弱点があったが、転厩と接着装蹄等でそれらを克服。白い馬体を躍らせ、2分2秒87のタイムで見事、先頭でゴールした。

1番人気に応えたオーギュストロダンがBCターフを勝利。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

 2頭が取り消し11頭立てとなったBCターフ(G1、芝2400メートル)はディープインパクト産駒のオーギュストロダンが1番人気に応えて勝利した。同じくディープインパクト産駒の日本馬シャフリヤール(牡5歳、栗東・藤原英昭厩舎)は1馬身1/4差の3着。前走の札幌記念(G2)では勝ち馬から3秒3も離される11着に大敗したが、その後、ノドの手術がうまくいったとの事で、一昨年のダービー馬であり昨年のドバイシーマクラシック(G1)の覇者が、復活の狼煙をあげる好走となった。

「昨年、ドバイで勝った時と同じように良い状態でした。そう大きく負けていないだけに残念です」

 騎乗したC.デムーロ騎手はそう語った。

BCマイルはマスターオブザシーズが接戦を制した。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

 BCマイル(G1、芝1600メートル)には13頭立てで行われ、ソングライン(牝5歳、美浦・林徹厩舎)とウインカーネリアン(牡6歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)が挑戦。前者はJRAプールのみならず、現地でも1番人気の支持を受けた。短い直線で外から伸びて来た時はまとめてかわすか?!とも思えたが、最後は伸びを欠き、残念ながら5着に敗れた。

「良い経験をさせていただきましたけど、勝てなかったのは申し訳なく感じています」

 手綱を取った戸崎圭太騎手は思わぬ完敗に唇を噛んでそう言った。

 一方、ウインカーネリアンは11着。三浦皇成騎手を背に、いつも通りの逃げの手を打ったが「上位勢となった後続に早目に来られて苦しくなってしまい」(三浦騎手)残念ながら馬群に沈む結果となった。

 勝ったのは英国馬でW.ビュイック騎手が乗るマスターオブザシーズ。小回りコースの大外枠で、最初のコーナーを回った時には後方から2番手という苦しい競馬になったが、直線、大外から豪快な末脚を披露。最後は早目に先頭に立ったモージとの競り合いをハナ差で制し、優勝。勝ち時計は1分32秒45だった。

BCフィリー&メアターフを勝利したインスパイラル。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

 BCフィリー&メアターフ(G1、芝2000メートル)は12頭立てで、日本からはウインマリリン(牝6歳、美浦・手塚貴久厩舎)が挑戦。しかし、勝利したのはL.デットーリ騎手騎乗の英国馬インスパイラル。英国の名門J&T.ゴスデン厩舎の名マイラーが距離を克服し、アイルランドの伯楽A.オブライエン調教師が送り込んだウォームハートにクビ差先着して優勝した。勝ち時計は1分59秒06だった。

ウインマリリンは4着。勝ち馬との差は僅か1馬身1/4程度。

「一瞬、伸びて来た時は『勝てるかな!!』と思い、興奮しました」

 手塚調教師が笑みを見せつつそう言うと、手綱を取ったC.デムーロ騎手は次のように語った。

「スタートで思ったよりも後ろになってしまったけど、直線は良い脚で伸びてくれました。ただ、最後は上位の馬と同じ脚色になってしまいました」

 また、BCターフスプリント(G1、芝1000メートル)のジャスパークローネ(牡4歳、栗東・森秀行厩舎)は12頭立ての12着、BCフィリー&メアスプリント(G1、ダート1400メートル)のメイケイエール(牝5歳、栗東・武英智厩舎)は9頭立て9着に敗れた。BCジュベナイル(G1、ダート1700メートル)に出走を予定していたエコロネオ(牡2歳、栗東・森秀行厩舎)は現地で怪我をして取り消したのを始め、今年の日本勢にとっては、残念な結果となり、ブリーダーズカップ全競走は幕を閉じた。来年はデルマー競馬場が舞台となる。競馬場こそ替わるものの、同じ西海岸のロサンゼルス近郊という事で、また多くの日本馬が挑戦する可能性がある。今年の雪辱を期す陣営もいるかもしれない。物語に続きがある事を祈ろう。

(平松さとし)