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タップリットがG1初制覇! エピカリスら人気馬が出走取消でチャンス掴む/ベルモントS回顧

2017年06月12日 15:00

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 現地6日10日に米国・ニューヨーク州のベルモントパーク競馬場で、米国三冠の最終戦にあたるG1ベルモントSが行われ、日、米でともに2番人気に支持されたタップリットが優勝した。

 今年のG1ベルモントSは、三冠初戦のG1ケンタッキーダービーの勝ち馬オールウェイズドリーミング、二冠目のG1プリークネスSを制したクラウドコンピューティングが、5月20日のG1プリークネスS後に相次いで回避を決め、昨年の米最優秀2歳牡馬クラシックエンパイアも右前肢の膿瘍により直前で戦線から離脱して混戦模様に。日本調教馬による北米ダートG1初勝利を目指して遠征したエピカリスにも勝利を掴むチャンスが十分に見込めるメンバー構成になったが、そのエピカリスも右前肢跛行のため、残念ながら出走取消。レース当日に主催者獣医師の馬体検査により、スクラッチ(出走取消)の判断が下された。

 レースは、好スタートを決めた1番人気アイリッシュウォークライと外のミーンタイムが、お互いを牽制するように先行し、コーナーワークでアイリッシュウォークライが先頭に立つ。J.オルティス騎手が押して好位を取りにいったタップリットは馬群3番手の内に収まり、その外にゴームリーとパッチが続いて馬群を形成。ツイステッドトム、ジェイボーイズエコーが差なく追走し、末脚にかけるルッキンアットリー、シニアインベストメント、マルチプライヤーは後方に待機する。前半1200mの通過は1:14.01。平年よりやや遅いくらいのペースに落ち着いて、先頭から最後尾までおよそ8馬身の間隔に馬群が固まってレースは流れた。

 最終コーナー手前で2番手につけていたミーンタイムが一杯になって脱落し、後続の騎手たちの手も動き始める中、先頭を行くアイリッシュウォークライのR.マラージ騎手はまだ手応え十分。ここまま逃げ切るかと思えたが、3番手のインコースにいたタップリットが一完歩ごとに逃げ馬との差を詰めて、直線半ばで逆転。最後は2着アイリッシュウォークライに2馬身差をつけて勝利を手にした。優勝タイムは2:30.02。さらに5馬身3/4差離れた3着にパッチ(タップリットと同じトッド・プレッチャー厩舎)が続いた。なお、スタート後に最後方にいたハリウッドハンサムは1コーナー付近で前が詰まった際に、F.ジェルー騎手がバランスを崩してアブミから足が外れた状態になり、バックストレッチで競走を中止している。

 タップリットはデビューから5戦目にあたる今年3月11日のG2タンパベイダービー(ダート1700m)に勝利して以来の重賞2勝目で、G1は初制覇。重賞初勝利後は、4月8日のG1ブルーグラスSで5着に敗れ、5月6日のG1ケンタッキーダービーは同じトッド・プレッチャー厩舎のオールウェイズドリーミングから大きく離され6着。三冠2戦目のG1プリークネスSを見送って、ここに備えていた。

 米国の年度表彰エクリプス賞でこれまで最優秀調教師に7度輝いているT.プレッチャー調教師は、2007年のラグズトゥリッチズ(牝馬)、2013年のパレスマリスに続く3度目のG1ベルモントS制覇(三冠競走は前述のオールウェイズドリーミングに続く5勝目)。昨年のG1ベルモントSには管理馬2頭を出走させ、タップリットの共同オーナーでもあるエクリプス・サラブレッド・パートナーが所有するデスティンが、クリエイターからハナ差の2着に惜敗しており、オーナーと調教師にとっては、1年越しの胸をすくような勝利となったことだろう。

 また、同一年に異なる馬でのG1ケンタッキーダービーとG1ベルモントSの両レース制覇は、プレッチャー調教師自身もその下でアシスタントトレーナーを務めていたことがあるD.ウェイン・ルーカス調教師が、1996年にグラインドストーン(G1ケンタッキーダービー)とエディターズノート(G1ベルモントS)で達成して以来となった。

 プエルトリコ出身のJ.オルティス騎手は嬉しい三冠競走での初勝利。昨年クリエイターで優勝した1歳上の兄I.オルティスJr.騎手との兄弟でのG1ベルモント制覇となった。なお、兄、弟とも3度目のG1ベルモントS挑戦で栄光を手にしており、そのパートナーはともにタピットの産駒によるものだった(タピット産駒のG1ベルモントS優勝は2014年のトーナリストを含めてここ4年で3頭目)。

 今年の米国の三冠はG1ベルモントSを持って幕を閉じたが、北米3歳ダート路線は、今後も続く。7月30日にニュージャージー州モンマスパーク競馬場で行われるG1ハスケル招待S(ダート1800m)、8月26日にはニューヨーク州サラトガ競馬場で開催されるG1トラヴァーズS(ダート2000m)が控えており、G1ベルモントSを見事に勝利したタップリットや、オールウェイズドリーミング、クラウドコンピューティングの今後の動向に加えて、昨年のG1トラヴァーズSを圧勝して彗星のごとく表舞台に現れたアロゲートのようなスターホース候補が出てくるかにも注目していきたい。

(サラブレッドインフォメーションシステム 伊藤 雅)