【ベルモントS】栗山求氏による血統傾向と有力馬分析!
2017年06月07日 12:00
外国馬に門戸が開かれているとはいえ、アメリカ三冠競走のひとつであるため、外国からの出走はほとんどないに等しい。過去10年間の1、2着馬は、生産国と調教国がすべてアメリカとなっている。さかのぼると1990年にアイルランド生まれのアイルランド調教馬ゴーアンドゴーが優勝している。ベルモントSをアメリカ以外の調教馬が優勝したのはこの馬のみで、米三冠競走全体に範囲を広げても、1971年のケンタッキーダービーとプリークネスSを制したベネズエラ調教馬キャノネロしかない。
日本から挑戦するエピカリスは通算5戦4勝。前走のUAEダービー(首G2・ダ1900m)は2着に敗れ、デビュー以来初の黒星を喫したものの、勝ったサンダースノーはUAE2000ギニー(首G3・ダ1600m)を勝って臨んできた地元のエース。2歳時にフランスでG1を制し、イギリスのG2でも2着となった一流馬でもある。その強豪相手に、アウェーの不利がありながら短頭差2着、というレース内容はほとんど勝ちに等しいといえるだろう。
父ゴールドアリュールは、日本のダート種牡馬界においてキングカメハメハと並ぶ横綱。エスポワールシチー、スマートファルコン、コパノリッキーといった砂の名馬を送り出している。エピカリスは少なくとも3歳春の時点でこれらを上回る能力を備えている。
母スターペスミツコは芝1200mで1勝を挙げた短距離馬だったが、「カーネギー×マルゼンスキー」という血統は決して短距離向きではない。母の父カーネギーは凱旋門賞馬。2代母の父マルゼンスキーは菊花賞馬2頭の父となり、母の父としては天皇賞・春を4勝している。父ゴールドアリュールも中長距離には不安のないタイプ。ダート12ハロンという距離に関してはまったく問題ない。
昨年3着となったラニと同様、エピカリスはUAEダービーを使ってここに臨む。UAEダービーのレベルは昨年よりも今年のほうが高い。なおかつ、今回はケンタッキーダービー(米G1・ダ10ハロン)とプリークネスS(米G1・ダ9.5ハロン)の勝ち馬がいずれも出てこない。調整がうまく行き、アメリカの馬場に戸惑うことがなければ勝ち負けに持ち込む可能性は十分あるだろう。
過去10年間の血統傾向を見てみると、エーピーインディ系、ミスタープロスペクター系、デピュティミニスター系の3つが強い。「父」と「母の父」がこれらにいずれも当てはまるのはシニアインベストメント。通算7戦3勝。父ディスクリートリーマインはエーピーインディ系、母の父デピュティコマンダーはデピュティミニスター系。父はトムロルフ5×4というリボー系の重厚なクロスを抱えており、母の父はスタミナ豊富なタイプ。距離延長は問題ない。前々走のレキシントンS(米G3・ダ8.5ハロン)を勝ち、前走のプリークネスSは3着。昇り調子で臨めるのもいい。
上位人気が予想されるルッキンアットリーは11戦2勝。2歳の8月以来勝ち星から遠ざかっているが、ケンタッキーダービー2着、プリークネスS4着と安定して上位に食い込んでいる。父ルッキンアットラッキーはプリークネスSの勝ち馬で、産駒は9~10ハロンがベスト。母の父ラングフールはアポロケンタッキーの父として知られ、スタミナも豊富。配合的には12ハロンも問題ない。ただ、三冠皆勤賞なので、疲れが残っていないかが心配。
12ハロンの長距離戦であり、スタミナに不安のある馬はそもそも登録してこない傾向があり、どの馬もそれなりにスタミナに関して血統的根拠がある。そのなかでもとくに一発がありそうな馬を人気薄から拾うとすれば、ゴームリー、タップリット、アイリッシュウォークライの3頭。どれも距離延長に対してプラスとなりそうな血統構成だ。