メルボルンカップ

Melbourne Cup

2019/11/5(火) 13:00発走※出走日時は日本時間

フレミントン競馬場

見どころ

オセアニア域外から初のカップ・ダブルを目指すメールドグラース(Photo by Getty Images)

日豪競馬史に残る快挙へ、高い壁に挑むメールドグラースとD.レーン騎手

現地5日(日本同日)に迫ったメルボルンカップは、日豪の競馬史を照らす記念すべき1日となるかもしれない。日本調教馬として2頭目の優勝を目指すメールドグラースは19日にコーフィールドカップを制しており、ここも勝てばオセアニア域外から初の“カップ・ダブル”を達成する。また、コンビを組むD.レーン騎手は、3月のゴールデンスリッパーステークス、今月26日のコックスプレートと合わせ、豪州4大レースの同一年制覇を史上初めて成し遂げることになる。それだけに両雄の眼前にそびえる壁は高く険しいが、競馬の枠を超える注目のチャンレンジだ。

ともにハンデ戦のコーフィールドCとメルボルンCを同一年に制すことはカップ・ダブルと呼ばれ、これまで140回以上の歴史の中で11頭しか達成していない。直近でも2001年のニュージーランド調教馬エセリアルを最後に途絶えている難業だ。それ以降のコーフィールドC優勝馬でメルボルンCにも出走したのは12頭。しかし、最高着順は2004年エルヴストロームの4着で、同馬を含め10着以内でさえ5頭しかいない事実からも、メールドグラースの挑戦が一筋縄では行かないことがわかる。

そのメールドグラースはコーフィールドCで出走18頭の3番目(タイ)に重いハンデを負担し、他馬と一線を画す完勝ともいうべき内容を残した。快勝劇を受けて今回のハンデは56kgに増量されたが、これは今回の出走馬で2番目に重く、現地入り後に故障で除外されたマルメロ(昨年のメルボルンC2着馬)に予定されていたのと同じハンデだ。前走の2400mまでしか距離経験のないメールドグラースにとって、さらに800m延びる舞台で昨年2着馬相当という高い評価が、そのまま実力の証明となるか、あるいは重荷となるのか。これが勝負の分かれ目となる。

コーフィールドCよりさらに6頭多い最大24頭立てもあってライバルは絞りづらいが、まずは連覇を狙うクロスカウンターに敬意を払うべきだろう。メールドグラースより1.5kg重く、前年比では6.5kgも増えた57.5kgのトップハンデを、3歳から4歳への成長分で克服できるかが焦点。前3走は英愛の長距離G1でひと息のレースを続けているものの、その前の3戦はメルボルンCを含め平坦なコースで勝ち負けに絡んでいる。大外から豪快に追い込みを決めたフレミントン競馬場に戻って目覚める可能性はあるだろう。

また、メールドグラースとの関係性ではコーフィールドCで手合わせした面々の見直しが必要か。着差以上の完勝を収めたメールドグラースはハンデ増量。その上に頭数も増える。1馬身差2着のヴァウアンドディクレアをはじめ、ミラージュダンサー、コンスタンティノープル、フィンシュ、ムスタジアーと2馬身圏内でゴールした各馬には展開次第で逆転のチャンスもあるだろう。ただし、これはメールドグラースにも当てはまることだが、2008年以降のコーフィールドC出走馬は計81頭がメルボルンCに挑み、2017年ヨハネスフェルメールの2着が最高。3着馬も3頭いるだけと苦戦傾向にある。

欧州の長距離王ストラディヴァリウス(左)の2着の実績があるサザンフランス(Photo by Getty Images)

こうしたデータからも、メールドグラースの強敵となり得るのは別路線組かもしれない。現地前売りではクロスカウンターやコーフィールドCの上位馬がメールドグラースと1番人気を争っているものの、前述の通りデータ的に有利とは言えない。その下に続くアイルランドのオブライエン調教師親子の管理馬たちが不気味だ。

父のエイダン師はコックスプレート4着のマジックワンド、直前のムーニーバレーゴールドカップを勝ったハンティングホーンの経験豊富な2頭に3歳馬イルパラディーゾを登録しているが、2走前まで管理馬だったサザンフランスも見逃せない。前走から豪州のC.マー&D.ユースタス調教師の共同管理馬となったが、転厩初戦は愛セントレジャーで3着。豪州で走るのは今回が初めてというオブライエン調教師の影響が色濃く残る1頭だ。

一方、2年前にリキンドリングでこのレースを制している息子のジョセフ師は、6月の英ゴールドカップで長距離王ストラディヴァリウスの1馬身とハナ差3着に食い下がったマスターオブリアリティをはじめ、昨年の愛ダービー勝ちや豪G1マキノンステークス2着など高実績のラトローブ、同馬を6月のG2カラカップで下したトワイライトペイメントという重厚な布陣。さらに、ダウンドラフトもG3ホッサムハンデキャップで優先出走権を獲得し、中2日での参戦と多彩なメンバーをそろえた。

これらオブライエン勢では、同斤量でクロスカウンターに先着した経験がありながら、今回は同馬より2kg軽いサザンフランスとマスターオブリアリティに恵まれた印象がある。また、イルパラディーゾもG2ロンズデールカップでストラディヴァリウスから1馬身半圏内の3着があり、52.5kgのハンデからも軽視はできない。

なお、メルボルンCは最近4年連続でハンデ53kg以下の軽量馬が勝っていることから、伏兵が台頭する余地も十分。ヤングスター(52kg)は近走成績こそ冴えないものの、血統的には距離延長で変わり身も。昨年のメルボルンC3着馬プリンスオブアランはハンデ54kgだが、前走のジーロンカップ勝ちにより1kg増量されたもので、前哨戦勝ちで優先出走権を獲得したサプライズベイビー(53.5kg)ともども侮れない。