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【海外競馬 ニュースまとめ】2018年9月

2018年10月01日 18:30

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ヨシダが日本産馬初の海外ダートG1制覇

 9月1日に米ニューヨーク州のサラトガ競馬場で行われたG1ウッドワードS(3歳以上、ダート9ハロン)を日本生まれのハーツクライ産駒であるヨシダ(牡4)が優勝。日本産馬として初めて海外のダートG1を制す快挙を成し遂げた。ヨシダは米G1バレリーナS(ダート7ハロン)を9馬身1/4差で圧勝したヒルダズパッションの産駒。2014年2月に安平町のノーザンファームで誕生し、翌年のJRHAセレクトセールにおいて9400万円で落札されて米国へ輸出。米年度代表馬シガーや日本で種牡馬となった米最優秀芝牡馬パラダイスクリークなどを手がけたことで知られる、殿堂入り調教師W.モットの下で調教を受けている。

 ヨシダは今年5月にG1ターフクラシックS(芝9ハロン)を制した。日本産馬の芝、特に中長距離におけるレベルの高さを考えれば、予測できる範囲ではあった。しかし、今回のG1ウッドワードS制覇には正直言って驚いた。

 なにせ、G1ウッドワードS(1954年創設)はケルソ(1961年から3連覇)、フォアゴー(1974年から4連覇)、シアトルスルー(1978年)、アファームド(1979年)、スペクタキュラービッド(1980年、単走での優勝)、シガー(1995、1996年連覇)、ゴーストザッパー(2004年)、カーリン(2008年)、レイチェルアレクサンドラ(2009年)、ガンランナー(2017年)といったアメリカを代表する名馬が勝ち馬として名を連ねるアメリカの最重要レースのひとつなのだ。

 冒頭では「日本産馬初の海外ダートG1制覇」と書いたが、ウッドワードSはただの海外ダートG1ではなく、“ダートの本場”アメリカのダートG1で、しかもその中でもG1中のG1と言えるようなビッグレース。掛け値なしの快挙と言える。日本産馬の新たな可能性を切り開いたという意味でも非常に大きな価値がある勝利となった。

【日本産馬の米国ダートグレードレース勝ち】
2018年:
ウッドワードS(G1):ヨシダ

2007年:
ウエストチェスターH(G3):ユートピア

2004年:
ダリアH(G3):フェスティバル

2002年:
ピーターパンS(G2):サンデーブレイク

●ペガサスワールドカップデーに芝G1が追加

 昨年、今年と世界最高賞金レースとして施行されたG1ペガサスワールドカップ(ダート9ハロン)をメインレースするペガサスワールドカップデー(米フロリダ州ガルフストリームパーク競馬場、来年は1月26日の開催)に新たに芝のG1が追加されることが決まった。9月18日に主催するストロナック・グループ(TSG)が明らかにしたもの。新たなレースの名称はペガサスワールドカップターフ(芝9.5ハロン)で、総賞金700万ドル(1着賞金は300万ドル)は米国の芝レースとしては最高額となる。

 また、これと同時に今年は総賞金1630万ドル(1着賞金700万ドル)で争われたG1ペガサスWCの賞金減額(総賞金900万ドル、1着賞金400万ドル)も発表され、出走権料もこれまでの1頭100万ドルから半額の50万ドルに引き下げられた(出走権料は2レースとも同額)。

 「出走権を1頭につき100万ドルで売って賞金に充てる」という斬新なコンセプトを導入して、一気に世界最高賞金レースとなったG1ペガサスWC。しかし、副収入(ペガサスWCにおける馬券発売、それに放送権料、スポンサー料による純利益を出走権購入者で分け合える)が思いのほか伸びずに1年目の出走権購入者の多くが多額の赤字に終わったこともあって、2年目の今年は最終的に2頭分が売れ残る形。何らかのテコ入れが必要と思われていたが、選んだのは希望者が多かったという芝レースの開催だった。

 今年のペガサスWCの賞金総額と来年の2レースを合せた賞金総額がほぼ変わらないため、これを芝レースの追加ととるか、ペガサスWCが2つのレースに分かれた、ととるかは地元メディアでも報じ方が分かれていたが、いずれにせよ今回のリニューアルのポイントは、馬主の支出(出走権料)を減らして、出走への敷居を下げたことだろう。出走権料を下げれば、レースのシステム上、どうしてもレース単体で見れば賞金は下がってしまうのだが、芝レースの新設はスケールダウン感を出さずに、うまく馬主の希望も取り込むもので、一石二鳥の名案といえる。

 なお、新設レースには通常G1格付けは与えられないが、今回のペガサスWCターフは例年2月に行われていたG1ガルフストリームパークターフHを継承する形が認められたため、いきなりG1レースとしての開催が可能になっている。

文:秋山 響(TPC)