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【香港ヴァーズ】栗山求氏による血統傾向と有力馬分析!

2018年12月06日 15:00

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 芝2400mは凱旋門賞(G1)の施行距離であり、本来、日本馬が得意とするカテゴリーだが、ジャパンC(G1)と有馬記念(G1)の間に行われるため、トップクラスの遠征がなかなか叶わないという事情がある。したがって、過去10年間で日本馬の連対は2頭しかいない。

 今年はエリザベス女王杯(G1)で優勝したリスグラシューと、2着のクロコスミアが挑む。

 リスグラシューは「ハーツクライ×アメリカンポスト」という組み合わせ。父ハーツクライは中長距離に実績があり、ジャスタウェイ、アドマイヤラクティ、ヨシダなど、海外G1を勝った実績も豊富だ。当地では2015年の香港C(G1・芝2000m)でヌーヴォレコルトが2着となっている。本馬は2000m以下がベストだが、前走、芝2200mのエリザベス女王杯は、スローペースの上がり勝負となったことでこの馬の切れ味がモノをいった。香港競馬はラストの決め手勝負となりやすいので向いている。シャティン競馬場を知り尽くしたJ.モレイラ騎手が乗るのも大きなプラス材料。

 クロコスミアは意外にも2400mは初距離。2200mのエリザベス女王杯は2年連続で2着と好走しており、いずれも9番人気と伏兵扱いだった。マイペースでリズム良く走ることができればしぶとい馬で、血統的には2400mが堪えるタイプとも思えない。「ステイゴールド×ボストンハーバー」という組み合わせで、ケープクロス、ディクタット、イフラージといった名馬が出ているパークアピール牝系に属している。母方にはナシュワン、サドラーズウェルズといった重厚なヨーロッパ血脈が入るので香港の洋芝には適性がありそうだ。実際、洋芝の北海道シリーズでは好成績を残している。

 過去10年間の成績を見ると、サドラーズウェルズ系とデインヒル系の成績がいい。20頭の連対馬のうち北半球産馬が19頭を占めている。長丁場の2400mはヨーロッパ勢の得意分野だ。

 ヴァルトガイストは、G1サンクルー大賞(芝2400m)を含めてフランスで重賞を4連勝したあと、凱旋門賞4着、ブリーダーズカップターフ(G1・芝12ハロン)5着と上位入線している。父ガリレオはこのレースと相性がいいサドラーズウェルズの子で、過去10年間で産駒が4回連対を果たしている(うち3回はハイランドリール)。凱旋門賞はいい競馬だったが、前走のBCターフは5着とはいえ勝ったエネイブルから十数馬身離された大敗。渋り気味の馬場は血統的に決して苦手ではなかったはずだが、最後はまったく余力がなかった。シーズン序盤から長い休みを挟むことなくコンスタントに使われてきて、フランス→アメリカ→香港と遠征距離も長い。相手は楽になるものの疲れがないか心配だ。

 サルウィンは「キャンフォードクリフス×ガリレオ」という組み合わせ。父は英・愛のマイルG1を5勝した名馬だが、母がスタミナタイプなので2400mを苦にしない。本馬は勝ち切れないタイプだが大崩れもないタイプで、G1でも勝ち負けに絡んでいる。前走の凱旋門賞は中団のインから直線でしぶとく伸びて6着。前が詰まって進路を立て直す不利がなければ4~5着はあった。馬場が渋ったほうがいいタイプで、切れ味勝負となると詰めの甘さが出そうだ。

 ミラージュダンサーは「フランケル×グリーンデザート」という組み合わせ。母ヒートヘイズは、米G1メイトリアークS(芝8ハロン)、米G1ビヴァリーD.ステークス(芝9.5ハロン)を勝った。2代母ハシリは歴史的な名繁殖牝馬といえる存在で、産駒から5頭のG1馬と1頭のG2馬を出している。そのうちの1頭ダンシリは種牡馬として大成功し、本邦輸入種牡馬ハービンジャーなど多数の活躍馬を出している。父フランケルはガリレオの息子で、現役時代はマイル戦を中心に走って14戦全勝。日本でオークス馬ソウルスターリング、安田記念優勝馬モズアスコットを出しているように堅い芝を苦にしない。また、本馬の伯父ダンシリも堅い芝への適性には定評がある。G3を勝ち、G2で2着となった程度の戦績なので実績的に見劣りは否めないが、トビの大きな走法でもあり、香港の洋芝に対する適性は高いと思われる。

 イーグルウェイは「モアザンレディ×ルアー」という組み合わせの豪州産馬。過去10年の当レース連対馬のなかで豪州産馬は1頭もいない。前走、香G2ジョッキークラブC(芝2000m)では大外を突き抜けて鮮やかに勝ったが、血統的に2400mへの距離延長は疑問だ。

 距離適性ならむしろ同レース2着のエグザルタントを上に見たい。ガリレオ産駒テオフィロを父に持つアイルランド産馬で、母方はスタミナ豊富。G1愛2000ギニー(芝8ハロン)3着のほか、香港移籍後に芝2400mのG3を勝った経験がある。5月のチャンピオンズ&チャターカップ(G1・芝2400m)では2着と健闘している。乗り方次第ではおもしろい。

 同じテオフィロ産駒の牝馬エジーラは、アイルランドのG2~G3ばかりとはいえ重賞を5勝している。8月の英G1ヨークシャーオークス(芝12ハロン)では3着で、同レースを勝ったシーオブクラスは次走凱旋門賞でエネイブルの2着と健闘した。距離や能力は問題なく、堅い馬場もこなせるはず。

 今年の愛ダービー馬ラトローブは、サドラーズウェルズ系のキャメロットを父に持ち、香港競馬に実績のあるシャマルダルを母の父に持つので注目したい。前走、オーストラリアへ遠征して臨んだマッキノンS(G1・芝2000m)は、中盤ラップを落とした逃げ馬の術中にハマり、ゴール前で外から猛然と追い上げたもののアタマ差2着。堅い馬場にも対応できたので香港の芝に戸惑うことはないだろう。移動距離の長い遠征競馬を体験できたのもいい。疲れがなければ十分勝負になる。

【栗山求の最終見解】

 展開がカギとなるが、落ち着いた流れからの切れ味勝負なら、リスグラシューにもチャンスはある。ヨーロッパ勢ではミラージュダンサーとラトローブに注目したい。いずれも血統的に見どころがあり、とくに後者は前走オーストラリア遠征で堅い芝と上がりの速い競馬を体験した。負けたとはいえ今回の糧となったはずだ。

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