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【香港スプリント】栗山求氏による血統傾向と有力馬分析!

2018年12月06日 15:00

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 香港競馬の短距離路線はレベルが高く、過去10年間の連対馬20頭中15頭が地元香港調教馬。過去4年はワンツーフィニッシュを決めている。それら8頭はすべて前哨戦のジョッキークラブスプリント(G2・芝1200m)を使って本番に臨んでいる。両者のつながりは深いものの、2つのレースを連勝した馬は意外に少なく、過去10年間では昨年のミスタースタニングしかいない。

 今年、ジョッキークラブスプリントを勝ったのは4歳セン馬ホットキングプローン。馬体重が530キロを超える芦毛の巨漢馬で、デビュー以来10戦9勝(2着1回)とほぼパーフェクトに近い成績を挙げている。重賞初挑戦となった3走前のナショナルデーカップ(G3・芝1000m)は2番手からレースを進めてアイヴィクトリーに競り勝った。

 ただ、斤量はホットキングプローンのほうが7キロ軽かったので、内容的には相手方に軍配が上がる。前々走で逃げ切り勝ちをしたプレミアボウル(G2・芝1200m)でも、2着フィフティーフィフティーよりも2.5キロ、3着ミスタースタニングよりも4.5キロ軽い斤量だった。また、前走のジョッキークラブスプリントも逃げ切り勝ちで、半馬身差2着のミスタースタニングよりも2.5キロ軽い斤量だった。重賞を3連勝しているとはいえ、下級条件から出世してきた馬の常として、軽い斤量で戦えるメリットがあった。しかし、今回の香港スプリント(G1・芝1200m)は、牡馬とセン馬は57キロ、牝馬は55.5キロと斤量が決まっているので、本当の意味で実力が試される舞台となる。

 ホットキングプローンの父はサートリストラム系のデンマン。“南半球のノーザンダンサー”ともいわれたサートリストラムは、1970年代末から1980年代にかけてオセアニアで一世を風靡した。しかし、その後は北半球からやってきたデインヒル系に押され、勢力は縮小を余儀なくされた。それでも、2003/2004年シーズンにはロンロが豪年度代表馬に輝いた。種牡馬としても2010/2011年シーズンの豪リーディングサイアーに輝いた。デンマンはその代表産駒で、現役時代に芝1400mの豪G1を勝った。

 本馬はオセアニア産馬ならではのヴェインのインブリード(3×5)を持っている。ヴェインは豪年度代表馬で、リーディングサイアーにも輝いたオーストラリアの歴史的スプリンターだった。25戦全勝を記録した女傑ブラックキャビアも同馬のインブリードを3×4で持っている。ホットキングプローンの母の父アンブライドルズソングも非凡な資質を伝える種牡馬で、配合全体から大物感が漂う。ただ、来年以降はともかく、今回はまだ他の有力各馬より明確に上と断定できるだけの材料はない。

 ミスタースタニングは、昨年の香港スプリント優勝馬。ただ、今年に入ってからは惜しい競馬で勝ちを逃し続けている。他馬よりも重い斤量を背負わされるG2はともかく、同斤量のG1でも同じような成績が続いている。1月のセンテナリースプリントC(香G1・芝1200m)、4月のチェアマンズスプリントプライズ(香G1・芝1200m)でいずれも僅差の2着だった。力の衰えとまでは言わないが、こうした結果が出ているのは事実だ。

 この2つのレースで接戦を演じたビートザクロック、アイヴィクトリー、ディービーピンは、展開や位置取り、調子で着順が入れ替わるだけで、ほとんど同じような実力と考えていいだろう。

 ミスタースタニングの父エクシードアンドエクセルは、オーストラリアでリーディングサイアーとなり、ヨーロッパやアメリカでも大レースの勝ち馬を出している。デインヒル系ながら母方がアメリカ血統なので堅い芝にも適応している。母の父デイジュールは1990年代のヨーロッパ最強スプリンター。ミスタースタニング自身はダンジグ3×3で、スピードに特化した配合だ。ミスタープロスペクター系と並んでダンジグ系の血を持つ馬は香港スプリントの連対馬に目立っている。惜しい競馬が続いているだけに、年末の大一番はキッチリ決めたいところだろう。

 ビートザクロックは昨年まで条件クラスだったが、今年に入って重賞クラスで走るようになり、2、2、2、1、3、3着とほとんど崩れていない。デインヒルの3×3というクロスを持ち、父ヒンチンブルックは豪リーディングサイアーとなったスニッツェル(日本でも供用される)の4分の3弟にあたる良血。ファストネットロックを経ているので堅い芝への適性が感じられる。前走のジョッキークラブスプリントは、同斤のホットキングプローンが1着、斤量が2.5キロ重いミスタースタニングが2着、本馬が3着という結果だったが、4月のチェアマンズスプリントプライズ以来7か月ぶりのレースだったことを考えると悪くなかった。使っての上昇が期待できるのでおもしろい。

 希少性の高いプリンスキロの父系を受け継ぐアイヴィクトリーは、4月のチェアマンズスプリントプライズ(香G1・芝1200m)を勝ってG1初制覇を飾った。しかし、ここ2走は10着、7着と冴えない。前走のジョッキークラブスプリントは2番手を追走したものの直線半ばで力尽きて後退してしまった。本調子を欠いているようだ。

 昨年の香港スプリント2着馬ディービーピンは、1月のセンテナリースプリントC(香G1・芝1200m)で香港スプリントの覇者ミスタースタニングに雪辱を果たして優勝。それから長期休養に入り、前走のジョッキークラブスプリントで10か月ぶりの復帰を果たした。結果は後方を追走して伸びきれず、シンガリの9着と敗れた。しかし、目標は今回であり、一変できれば怖い。ニュージーランド産馬で、父ダルシブラーマはデインヒル系。母の父ピンズは名馬エアロヴェロシティの父でもある

【栗山求の最終見解】


 有力各馬は実力が拮抗しており大きな差はない。レベルは高くも低くもなく、ごく平均的といったところ。それならば日本馬ファインニードルに期待したい。4月のチェアマンズスプリントプライズはアイヴィクトリー、ミスタースタニング、ビートザクロックに先着を許し4着と敗れたものの、初めて国をまたいでの遠征競馬だったことを考えれば悲観するような内容ではない。秋の2戦、セントウルS(G2)とスプリンターズS(G1)の勝利は、さらに地力を増したと感じられるパフォーマンスだった。もっと上を狙える余地はある。2014年のストレイトガール(3着)以来となる馬券圏内突入に期待したい。

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