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【香港ヴァーズ】木村拓人の見解

2018年12月08日 12:00

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 香港国際競走の中で欧州勢が優勢なのがこの香港ヴァーズ。昨年まではハイランドリールが3年連続で好走しているように、欧州トップレベルの馬が自分の力を出せる状態で出走すれば結果が出ている印象だ。

 日本馬にとっても得意なカテゴリだと思うが、ジャパンCや有馬記念という中長距離の大レースが同時期に行われている影響か意外と参戦が少ない。個人の印象としてはG1で入着できるレベルの馬が遠征すれば十分に通用するイメージで捉えている。

 さて今年のメンバーを見渡すと最も注目を集める存在はヴァルトガイストだろう。クリンチャーの出走したフォワ賞を直線一気の末脚で快勝。凱旋門賞でも人気を集めていたので、日本のファンにもおなじみとなっている馬だ。

 前走のBCターフは5着。勝負所では勝ったエネイブルに付いていく形で上がっていけたが、直線に入ってからの伸びがひと息。相手関係を考えると物足りない内容に映るが、凱旋門賞では直線で狭いところを通りながらもしっかり脚を使っての4着。

 この内容を見れば2400m戦では欧州トップレベルの一角を担っているのは間違いなく、ここでも主役を張れるだろう。ただ前走の敗因が体調なのか、荒れ馬場なのか、小回りなのかはっきりしないのも確か。可能な限り中間の様子や直前の気配を気にしたい。

 ちなみに画面で見ている限りではパドックで見栄えがするタイプではないと思うので、たとえ他馬と比べて見劣る印象を受けても、本馬の体調さえ良さそうならば必要以上に評価を落とさない方がいいだろう。

 イギリスから遠征してくるサルウィンも注目の一頭。ジャパンCにも登録があったが、こちらに矛先を向けてきた。今年は未勝利ながらも大崩れなく走れており、5走前のコロネーションCではクラックスマン相手にあわやの2着と力を見せつけた。

 凱旋門賞ではいつもより位置取りが後ろになり、直線でも一旦ブレーキをかける不利があっての6着。スムーズならばヴァルトガイストあたりとは差のない競馬をしていたはずだ。

 それを考えれば間に一戦を挟んでいないぶんローテーション的にはこちらの方が優勢だし、本来先行して粘り込むタイプ。直線一気が難しいシャティンの馬場にも脚質的にマッチする。

 鞍上のマーフィーは今年ロアリングライオンやベンバトルで大レースを勝ちまくり、ワールドベストジョッキーのランキングで2位となった若手の有望株。この翌週から短期免許を取得して来日する予定だけに、その手綱さばきにも注目しておきたい。

 ミラージュダンサーはエネイブルと同じアブドゥラ殿下の所有馬。2走前に英G3を勝ったのが初重賞と実績的には少し見劣るが、3走前はコーフィールドCを制したベストソリューションと半馬身差の2着。前走は英ダービーでも人気していた素質馬ヤングラスカルと短アタマ差の2着と資質の一端を見せている。

 父がフランケルで欧州よりもスピード寄りのシャティンがマッチする可能性も大いに高く、当日の気配次第で評価を一気に上げる準備をしておきたい。

 日本馬からはクロコスミアに注目している。距離は少し長いような気もするが、近年の香港国際競走は時計が速くなりやすく、前走のエリザベス女王杯を見ても自分でペースを作ればしぶとい馬。主張すれば先手を取れそうなメンバー構成だし、父も香港で勝っているステイゴールド。1番ゲートと最高の枠を引き当てたのも追い風となり、人気次第では積極的に狙ってみたい。

 リスグラシューは前走エリザベス女王杯でクロコスミアを捕らえて念願のG1制覇。大きく崩れたのは昨年のエリザベス女王杯と今年の安田記念だけと安定感が大きな武器だ。前走は後方から一頭だけ際だった伸び脚を見せており、肉体的にも充実してきている印象だ。こちらもこの距離に一抹の不安はあるのだが、鞍上は香港の名手モレイラ。距離さえ克服できれば能力的に通用しても不思議はない。

 地元勢では今年のクイーンエリザベス2世Cを制したパキスタンスターに注目か。相変わらず気性面に難しさを抱えており、走ってみないと分からない部分があるというのが非常に怖いが、クイーンエリザベス2世Cでテン乗りながら結果を出したビュイックが再び手綱を取るのはなんとも不気味。いとも簡単に好位から抜け出してみせただけに、この相手でも注意は必要。距離も決してマイナスに作用することはないだろう。

 愛ダービー勝ち馬のラトローブは3走前の英インターナショナルSでロアリングライオンに大きく差をつけられての7着。ジャパンCに参戦したカプリもそうだったが、愛ダービー馬は欧州でもより重厚なイメージがある。本馬も2走前に2800mを使っているようにスタミナに特化したタイプと推測。前走は中距離戦線のレベルが決して高いとは言えない豪州で勝ち切れていないのも気になる。愛ダービー馬という肩書きだけで必要以上に人気になるならば疑ってかかりたい。

 ヴァルトガイストの体調次第で最も混戦となりそうなのがこの香港ヴァーズ。手広く考えておいた方が良さそうだ。

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