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【ドバイWC】栗山求氏による血統傾向と有力馬分析!

2019年03月27日 15:00

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 過去の成績を振り返ると2011年に日本馬がワンツーフィニッシュを決めている。この年を含めて10年から14年までの5年間はダートではなくオールウェザーで行われた。この期間中、アメリカ調教馬はアニマルキングダム1頭しか連対できなかった。

 15年以降と、ナドアルシバで行われた09年の計5年間はダートで行われ、アメリカ調教馬は連対馬10頭中6頭を占めた。ダートで行われた年にアメリカ調教馬が連対できなかったことは一度もない。ドバイゴールデンシャヒーンと同じく、ダートのスペシャリストを多数抱えたアメリカ調教馬を素直に評価するのがセオリーだ。

 とはいえ、今年の遠征メンバーを見渡すと、アロゲートやカリフォルニアクローム級の大物は見当たらない。イギリスのブックメーカーのオッズを見ると1~3番人気はドバイ勢が占めている。

 昨年、アメリカ勢をなぎ倒してレコード勝ちを収めたサンダースノー(牡5歳)が今年も出走してくる。アイルランドで誕生し、ゴドルフィンの持ち馬らしく寒い時期はドバイ、暖かくなるとヨーロッパという環境に置かれ、3歳春にUAE2000ギニー(首G3・ダート1600m)とUAEダービー(首G2・ダート1900m)を連勝してダートで才能のあるところを見せた。ヨーロッパでは芝1400mと芝1600mの仏G1を勝ったが、昨年春にドバイのダート戦線に進むと素質を開花させ、ドバイワールドカップで驚きの逃げ切り勝ちを収めた。

「ヘルメット×ドバイデスティネーション」という組み合わせ。父ヘルメットはオーストラリア産馬で、芝1400~1600mのG1を3勝した一流馬だった。父系はエクシードアンドエクセルをへてデインヒルに遡るのだが、ダートを得意とする父系とはいえない。母の父ドバイデスティネーションは、サンダースノーの他にポストポンド、ゴールデンホーン、ゴッドギブンなど大物を次々と送り出しており、ブルードメアサイアーとして評価が高い。ただ、こちらも芝・ダート兼用といったタイプで、トップクラスのダート戦を勝つような血統には見えない。突然変異的に生まれたアイルランド産のダート巧者、と考えるしかなさそうだ。

 前哨戦のアルマクトゥームチャレンジラウンド3(首G1・ダート2000m)は、逃げたキャッペッザーノを見る形で進み、4コーナーで並びかけていったが、最後の直線は交わすどころか突き放され、9馬身半差の2着に終わった。昨年の同レースでも2着だったが、このときはスタートで出負けし、道中馬群に揉まれる苦しい展開。負けたとはいえ敗因が明確だった。今年のレースぶりは体調が良くないのでは、と感じさせるものだったので本番までの調整ぶりに注目したい。

 前哨戦でサンダースノーをちぎったドバイ調教馬キャッペッザーノ(セ5歳)は、これが重賞初制覇だった。昨年の同レースは7着で、その次のゴドルフィンマイル(首G2・ダート1600m)は13着と大敗した。しかし、その後長い休養を挟んだので馬が良くなっているのかもしれない。今年に入って3連勝と波に乗っている。「バーナーディニ×アンブライドルズソング」という組み合わせのアメリカ産馬で、母の半姉に名種牡馬スパイツタウンがいる良血。エーピーインディ系は過去4年間で3回連対しており、母の父アンブライドルズソングは17年の優勝馬アロゲートの父でもある。ドバイ調教馬なのでアメリカで走った経験はないが、血統的には100%アメリカンで、しかもこのレース向きだ。

 ドバイ勢のもう1頭はノースアメリカ(セ7歳)。昨年、前哨戦のアルマクトゥームチャレンジラウンド3を鮮やかに逃げ切り、本番でも高い支持を集めたものの、痛恨の出遅れによって自分の競馬ができず最下位に敗れた。その後、長期休養を挟んで今年1月に復帰。アルマクトゥームチャレンジラウンド1(首G2・ダート1600m)、アルマクトゥームチャレンジラウンド2(首G2・ダート1900m)を連勝してここに臨む。「ドバウィ×ヤンキーヴィクター」という組み合わせで、父ドバウィはダートで行われたドバイワールドCでプリンスビショップ(15年1着)、ムブタヒージ(16年2着)と2頭の連対馬を出している。ちなみにオールウェザー時代にはモンテロッソが勝っており、このレースと相性がいい。母の父ヤンキーヴィクターはワンミリオンス(エンプレス杯、TCK女王盃)の母の父でもある。自分の競馬ができたときには素晴らしい力を発揮するので、スタートを決められるかどうかだろう。今年は「逃げれば強い」という馬が複数いるので先行争いが厳しくなりそうだ。

 評価が高まってこないアメリカ勢だが、今年の遠征馬のなかで戦績的に評価できるのはシーキングザソウル(牡6歳)。4歳秋にクラークハンデキャップ(米G1・ダート1800m)を勝ち、直近3走はG1ばかり使って2、3、2着。前走のペガサスワールドC(米G1・ダート1800m)は、向正面で前から下がってくる馬を避けるときに若干ロスがあった。勝ち馬からは5馬身3/4離されたものの内容的には悪くなかった。雨が降り続いてコースに水が浮くコンディションでも闘志を失わず、最後も諦めずに伸びてきたので精神的にはかなりタフな馬だ。こういうタイプは海外遠征でも信頼できる。

「パーフェクトソウル×シーキングザゴールド」という組み合わせで、3代母は通算13戦全勝の名牝パーソナルエンスン。父パーフェクトソウルはサドラーズウェルズの子で、母シーキングザタイトルはアイオワオークス(米G3・ダート1700m)の勝ち馬で、ガゼルステークス(米G1・ダート1800m)でも3着と頑張っている。3走前はブリーダーズCダートマイル(米G1・ダート1600m)に出走しており(2着)、今回は2000mへの対応が鍵となるが、血統的には問題ないと思える。行きたい馬が多いので控える競馬ができるのはアドバンテージだ。

 ヨシダ(牡5歳)はノーザンファームが生産し、2015年のセレクトセールでアメリカ人に買われ、アメリカへ渡って競走馬となった。芝でキャリアを重ね、4歳緒戦のターフクラシックステークス(米G1・芝1800m)でG1初制覇。その後、イギリス遠征を経てダート路線に転じると、緒戦のウッドワードステークス(米G1・ダート1800m)をいきなり勝った。日本産馬がアメリカのダートG1を勝つのはこれが初めてだった。

 「ハーツクライ×カナディアンフロンティア」という組み合わせで、母ヒルダズパッションはアメリカでバレリーナステークス(米G1・ダート1400m)を圧勝するなど5つの重賞を制した名牝。ダート適性は母方から受け継いでいる。母方にシアトルスルーを持つハーツクライ産駒は有名なニックスで、スワーヴリチャード、アドマイヤラクティ、カレンミロティック、シュンドルボン、カポーティスター、ベルラップなどが出ている。

 前走のペガサスワールドカップターフ(米G1・芝1900m)は6着に終わったが、2走前のブリーダーズCクラシック(米G1・ダート2000m)は後方から追い込んで4着。勝ったアクセラレイトとは約2馬身差だった。メイダンは前へ行った馬が有利だが、あまりに先行争いが激化するようだと後ろからでも届くかもしれない。勝機は十分ある。

 ガンナヴェラ(牡5歳)は前走のペガサスワールドCで6着と敗れているが、道悪(不良)が響いたのかもしれない。2走前のブリーダーズCクラシックでは2着と好走。末脚勝負型で展開がハマると一発がある。エーピーインディ系は過去4年間で3回連対しており、近い世代にアンブライドルドとストームキャットを併せ持っているのでキャッペッザーノと配合構成がよく似ている。抜群の底力を伝えるグロースタークを持つのもいい。ハイペースのタフな展開になればおもしろい。

【栗山求の最終見解】

 メイダン競馬場のダートは先に行った馬が圧倒的に有利。そして、このレースには逃げなければ持ち味が出ない馬が複数いるので、スタートが勝負の分かれ目となる。ゲートを出るか出ないかで結果が大きく変わってくるのでギャンブル性の高いレースといえる。ほとんど運なので事前に読むことは難しい。行きたい馬がゲートを出たとしても今度は先行争いが発生する。それでも行き切った馬が有利なのでペースは間違いなく速くなるだろう。馬券的には逃げ馬を予想してそこから流すか、先行勢が全滅することに賭けて後ろから行く馬を組み合わせるか、という2通りの買い方が考えられる。後者はまったくの空振りに終わる可能性もあるが、マインドユアビスケッツが最後方から差し切った昨年のドバイゴールデンシャヒーンのようなこともないわけではない。

 というわけで本命はヨシダ。ウッドワードSで見せた怒濤の末脚は威力抜群。ハマったときの強さはナンバーワンだろう。

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