【ブリーダーズC回顧】「いつもと違う感じ」フォーエバーヤング5着で連覇ならず、スプリントで日本調教馬初の快挙
2026年11月2日
米国競馬の祭典「ブリーダーズカップ(BC)」が現地時間10月30日、31日の2日間にわたって、今年はケンタッキー州のキーンランド競馬場で開催された。31日に行われたメインレースである2000mダートのBCクラシックには、JRA発売分の単勝で1番人気に支持された昨年の覇者フォーエバーヤング(牡5=栗東・矢作芳人厩舎)が坂井瑠星騎手とともに出走。だが、最後の直線で伸びを欠いて5着に敗れ、25年ぶり史上2頭目の同レース連覇はならなかった。(以下、単勝人気はJRA発売のもの)
日本のファンのみならず、世界の競馬ファンにとってもまさかの光景だったのではないだろうか。これまで中東、米国のダート競馬で世界トップの走りを見せ続けてきた、あのフォーエバーヤングが苦しんでいる。キャリアでは初めて3着以内を外す完敗だった。
「分からないですね。申し訳ないです」
レース直後のインタビューに答えた矢作調教師の表情は、ショックの色が明らかだった。レースの流れ、展開が悪かったわけではない。むしろ絶好の形で進んでいた。前走のG1パシフィッククラシックを1秒0差で圧勝した単勝3番人気のナイツブリッジがハナを切り、フォーエバーヤングはその後ろの2番手を難なく確保。望んでいた以上の形となったと、坂井騎手は振り返る。
「思ったよりもハイペースではなくて、まさか2番手を取れるとは思わなかったので『これはいいぞ』と思いながら乗っていました。去年と同じこの馬の勝ちパターンでしたし、すごく上手く行ったと思っていました」
3、4コーナーでも手応えは十分に見えた。「ドバイの時みたいに早々と手応えがなくなるということはなかったので、今日も勝てるんじゃないかなと雰囲気はありました」と、この時点では勝利も意識していたとジョッキーは語る。しかし、ここからがいつものフォーエバーヤングではなかった。
「ソヴリンティが来る前から少しずつ動かしていって一緒にスパートできたらと思っていたのですが、ソヴリンティが来た時にはもう脚が残っていなかったですね」
過去にも直線に入る手前で手応えが悪くなることはあったが、そこからファイトバックしてエンジンを点火させるのがこの馬の特徴の一つでもある。だが、今回は最後まで伸びあぐねてしまった。

道中の運び自体が完璧だった分、敗因はどこにあったのか、それを突き止めるにはまだ時間が必要かもしれない。ただ、坂井騎手自身は調教の段階から「何となくですが、いつもとはちょっと違う感じがありました」と、微妙な違和感があったという。それらの意見を矢作調教師、藤田晋オーナーらと集約しつつ、今後は噂されている有馬記念への出走へと踏み切るのか、ここをラストランとするのか、決めていくことになるだろう。まずはこの後も馬体に故障がないことを願いつつ、その決断を待ちたい。
なお、BCクラシックを制したのは、昨年の米国年度代表馬で単勝2番人気のソヴリンティ(牡4=米・W.モット厩舎)。先行勢を見る形の中団待機から3、4コーナーにかけて進出していくと、最後の直線で一気に突き抜けた。
また、BCクラシックにはもう1頭、日本からテーオーパスワード(牡5=栗東・高柳大輔厩舎)が木村和士騎手を背に参戦した。道中はフォーエバーヤングのインから進めると、木村騎手が「一瞬あるのかな」と勝利を期待するほどの走りでソヴリンティから約3馬身差の4着でフィニッシュ。フォーエバーヤングにハナ差先着する健闘だった。

フォーエバーヤングが敗れた一方で、その2時間半前に行われた1200mダートのBCスプリントでは、日本調教馬による快挙が達成された。坂井騎手を背に挑んだ2番人気のテーオーエルビス(牡4=栗東・高柳大輔厩舎)が、後方待機から最後の直線で矢のような伸びを見せて豪快な差し切り勝ち。先に抜け出した1番人気イングリッシュマン(牡3=米・C.ドゥヴォー厩舎)に1馬身1/4差をつける快勝で、日本調教馬初のBCスプリント制覇を達成した。
「状態も非常に良かったですし、一番強いと自信を持って乗りました。これで差せなかったら仕方ないなと思いましたが、強かったです。信じられないですね、スプリントを勝てるなんて……もちろん勝つつもりでしたが、本当にすごいことをやってくれたなと思います」と語ったのは、殊勲の坂井騎手。同馬を管理する高柳調教師は「もう本当に夢のようで、心臓が止まりそうでした」と興奮気味に喜びを語った。
ダート6ハロン戦は米国競馬のもう一つの「顔」とも言うべきレベルが高いカテゴリーだ。ダートスプリントの世界チャンピオン決定戦でのこの勝利は、昨年のクラシックを制したフォーエバーヤングに並ぶ歴史的快挙と言っても過言ではないだろう。また、3馬身1/4差で勝った5月のチャーチルダウンズステークスに続き、テーオーエルビスは米国G1を2連勝。これで米国競馬の年度表彰である「エクリプス賞」の最優秀短距離馬の最有力候補にも躍り出た。
なお、同じくBCスプリントに出走したアメリカンステージ(牡4=栗東・矢作芳人厩舎)は12着だった。
そのほかのブリーダーズカップ諸競走に出走した日本調教馬は、2400m芝のBCターフに出走したディープモンスター(牡8=栗東・池江泰寿厩舎)が14着、1600m芝のBCマイルに出走したアスクイキゴミ(牡3=栗東・藤原英昭厩舎)が5着、同じくルガル(牡6=栗東・杉山晴紀厩舎)が11着、1600mダートのBCダートマイルに出走したロードフォンス(牡6=栗東・安田翔伍厩舎)は6着だった。
文:森永淳洋
