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【メルボルンC回顧】英国王室・日本ゆかりの“ディープインパクトの孫”がV「スーパースターになる」

2026年11月4日 17:00

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 オーストラリア競馬の祭典、G1メルボルンカップが11月3日(火)にフレミントン競馬場3200m芝で開催された。メルボルンCはオーストラリア最大のレースで、毎年11月の第1火曜日に開催。その日は祝日に指定されており、「国が止まるレース」とも形容されるほど、オーストラリア国中が注目する大一番となっている。

 1861年に創設され、今年で166回目を迎える長い歴史も有する同レースでは、2006年にデルタブルースが1着、ポップロックが2着に入り、日本調教馬がワンツーを決めている。20年ぶりの快挙へ、今年は日本からスティンガーグラス(牡5=栗東・友道康夫厩舎)が出走を目指して現地入り。JRAでは7年ぶりにメルボルンCの馬券発売が決定し、同馬自身も今年2月のG3ダイヤモンドステークス(東京3400m芝)を快勝するなど、ステイヤーとして本格化の兆しを見せていただけに期待は大きく高まっていた。

 ところが10月30日、現地の獣医による脚部のCT検査などにより負傷のリスクが高いと診断され、無念の除外となってしまった。ただ、現地での調教は特に問題なく乗れていると友道調教師は日本メディアに伝えており、帰国後も状態に不安がなければG1有馬記念を目指していくという。

 日本の競馬ファンにとっては残念なニュースとなったが、レースでは新たなニュースターが誕生した。勝ったのはJRA発売分で単勝2番人気に支持されていたポイントオブロー(牡3=豪・C.マー厩舎、父フランケル)。21番人気のロイヤルスプレマシーが20馬身近いリードを取る大逃げを打つ展開の中、ポイントオブローは中団より後方のインで末脚を溜めると、最後の直線は馬群を一気に割って豪快な差し切り勝ち。2着の17番人気ザーラン(牡4=豪・C.マー厩舎)に3.75馬身差をつける快勝でメルボルンCを制した。

ポイントオブローでメルボルンCを制したE.ブラウン騎手(左)とC.マー調教師(右)。(Photo by Getty Images)

 ポイントオブローは今回の勝利で通算6戦4勝。英国王室の牧場で生産され、もともとはチャールズ国王とカミラ王妃の所有馬としてイギリスでデビューしている。今年7月のG3バーレーントロフィーで重賞初制覇を達成し、英国クラシック三冠の最終戦であるG1セントレジャーの有力候補にもなったが、その後にオーストラリアの馬主グループが購入。移籍後の初戦となった前走のG3ジーロンカップも勝利で飾り、重賞3連勝でG1レース初制覇となった。

 この背景だけでも十分に興味深いものだが、日本の競馬ファンにとってはもう一つ、血統面も見逃せない。ポイントオブローの祖母ディプロマは英国のエリザベス女王が所有していた馬で、ディープインパクトと交配するために日本に持ち込まれた。そして生まれたのが、ポイントオブローの母ポートフォリオである。つまり、“ディープインパクトの孫”がオーストラリア最大のレースを制したわけだ。

 ポイントオブローはまだ3歳で、通算6戦4勝、重賞3連勝という目下の戦績からもまだまだ将来が期待できる馬だ。手綱を取ったイーサン・ブラウン騎手も海外メディアのレーシングポストに「ものすごい末脚を使ってくれました。彼はスーパースターになるでしょう。本当に特別な馬です」と、その素質を絶賛している。

 そして、そのブラウン騎手は23歳だった3年前に、落馬事故で3日間にわたって昏睡状態となるほどの大怪我を負っていた。そこから奇跡的にカムバックして、この日、最高の栄誉を手にしたのだ。喜びもひとしおだろう。

 また、同馬を管理するキアロン・マー調教師は、今年のメルボルンCに大挙7頭出しでチャレンジし、1着ポイントオブロー、2着ザーラン、さらに3着にも同調教師の管理馬である10番人気ジュジャキボが入り、レース史上初の上位3着までを独占。勝ち馬の背景のみならず、騎手、調教師のドラマもいっぱいに詰まった2026年のメルボルンCだった。それだけに、ここに日本のスティンガーグラスが加われなかったことは、やはり残念でならなかった。

文:森永淳洋