キングジョージ6世&
クイーンエリザベスステークス

King George VI And Queen Elizabeth Stakes

2019/7/27(土) 23:40発走

アスコット競馬場

  

【キングジョージ】専門家の見解

2019年07月26日 14:00

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【木村拓人(馬三郎)の見解】
 頭数は少な目ではあるものの、ある意味で凱旋門賞以上に濃いレースとなりそうな今年のキングジョージだ。

 底力が必要とされるアスコット2390mは、後方一手の脚質では勝ち切るのが難しく、好位から最後まで脚を使える総合力が問われるイメージ。となると最強牝馬エネイブルの優位は動かないか。

 今季初戦となったエクリプスSでは、道中2番手から直線半ばまで持ったまま。追い出してから後続を派手に突き放すような形ではなかったが、昨年のブリーダーズCターフでも接戦を演じたマジカルの追撃を、余裕を持って封じた内容は完勝と言っていいだろう。昨年と比べて順調に使えるのもプラス材料となる。

 もし負かすならば今年の英ダービー馬アンソニーヴァンダイクか。前走の愛ダービーではソヴリンの大逃げを捕らえきれずに6馬身差の2着と敗れたが、後続勢では際立った伸びを見せており、英ダービー馬の称号は伊達ではないことは示せたと考える。エネイブル59キロに対し、55.5キロで出走できることも魅力的だ。

 3番手以降は馬場次第で考えたい。重くなるならば道悪だったプリンスオブウェールズSを勝ったクリスタルオーシャンが上位も脅かす存在とまでなりうる。

 速くなるならばヴァルトガイスト、シュヴァルグランが浮上。ヴァルトガイストは前走が重い馬場でも伸びてきたが、その切れ味は軽い馬場でこそ。シュヴァルグランも前走のドバイシーマクラシックを見る限り、極端に馬場が重くならなければアスコットでも好走のイメージが沸く。

【土屋真光の見解】
 データ上では3歳と4歳が圧倒的。ところが、今年は出走馬のうち、3歳馬が2頭、4歳馬が2頭で、残りは全て5歳以上という組み合わせとなった。アンソニーヴァンダイクも、英ダービーを勝ったとはいえ、疑問符がつく。

 では、エネイブルで磐石かというと、そうではないと見ている。エクリプスSを勝ってここに臨んだ馬は、ユリシーズ、ムカドラム、そしてエネイブルの父ナサニエルのいずれもが、好走こそすれ、勝利を逃しているからである。そのエクリプスSの勝利も、正直なところ物足りなさを感じた。

 そこで、勢いを買って、今回はクリスタルオーシャンを1番手としたい。1番人気で臨んだ昨年はポエッツワードにクビ差の2着。高速決着が裏目に出たかに見えるが、3着以下は9馬身千切り捨てたように、決して不向きではない。今週末のアスコットはかなり堅い馬場が予想されるだけに、恩恵を受けるはず。もちろん、雨も大歓迎。

 2番手にエネイブル。今回は敢えて2着ないし3着ではないかと予想する。この馬も堅い馬場は問題ないクチだが、できれば渋って欲しいというのが陣営の本音のようだ。

 3番手は逆転の可能性も含めてヴァルトガイスト。06年の勝ち馬ハリケーンランを管理していたのもファーブル調教師。プリンスオブウェールズSは水の浮いた馬場に持ち味を削がれた。良馬場で巻き返しに期待。

 雨馬場となった場合に、ヴァルトガイストと入れ替えたいのがデフォー。こちらは堅い馬場では厳しい分、渋った馬場で力を発揮する。

 もう1頭押さえたいのが、ハンティングホーン。先行勢の中ではしぶとさも持ち合わせる。ラビットと油断するのは禁物だ。

【市丸博司の見解】
 凱旋門賞2勝を含めG1を8勝。現在10連勝中。負けたのは2戦目の条件戦だけで、12戦11勝。3歳時にはこのキングジョージも制している。エネイブルの戦績を見ていると、ため息しか出てこない。果たして、この馬が負けるシーンはあるのかと思ってしまう。

 難癖をつけるとすれば、まず牝馬なのに59キロという酷量。前走同じ斤量でエクリプスSを勝っているし、58キロで凱旋門賞を勝っている。斤量は関係ないと言われそうだが、前走よりかなり相手は強化されている。1キロしか重くない牡馬に対して、相対的に厳しくなるのは否めない。

 難癖その2は、ローテーション。5歳なのに、古馬になってからまだ4戦しかしていない慎重派だが、今回はエクリプスSから中2週。この臨戦過程は気になる材料だ。

 逆転があれば、3連勝中のクリスタルオーシャンではないか。15戦8勝2着5回3着2回という堅実派。3着2回はいずれも3歳春のG2戦で、まだそれほど成長していなかった。4歳になった昨年、重賞3連勝のあとキングジョージ2着、チャンピオンS2着などG1戦線で活躍。5歳になった今年は重賞3連勝で、前走でG1を初めて制している。

 いよいよクリスタルオーシャンの時代が来るのか。それともエネイブルがチャンピオンの座を守るのか。これだけでも見逃せないレースだ。

 日本のシュヴァルグランは、一昨年のJC以来勝ち星がない。しかし、2400m以上の距離では、ほとんどが4着以内と堅実に走っている。それだけでは厳しいかもしれないが、ドバイシーマクラシック2着で能力的にも世界に通用することを実証している。

 勝ち負けとなると厳しいようにも感じるが、2・3着ならかなり可能性は高いと思っている。

 以上3頭。あとは押さえに3歳馬アンソニーヴァンダイク。これでどうか。