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【凱旋門賞】斉藤崇史調教師“後悔”から4年…クロワで世界のSAITOへ2度目の挑戦

2025年10月02日 15:55

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<パリで輝け 北十字星(4)>

 10月5日にフランス・パリロンシャン競馬場で行われる「凱旋門賞」(G1、芝2400メートル)に、今年の日本ダービー馬クロワデュノール(牡3、斉藤崇)が挑戦する。日刊スポーツでは「パリで輝け 北十字星」と題して、連載で関係者の思いに迫る。

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 もう失敗はしたくない。2度目の凱旋門賞挑戦となる斉藤崇史調教師(43)には1つの“後悔”がある。かつて厩舎を支えた看板馬クロノジェネシスと挑んだ21年凱旋門賞。2走前のドバイシーマCで2着と海外遠征も経験させ、世界でもやれると十分な手応えをつかんでの参戦だった。

 「フランスでうまく調整ができませんでした。それに尽きます。もっと準備をしていくべきでした。もう少しいい状態で使えていれば、あの馬場でももっとやれたと思うし、いい競馬ができたと思います」

 あれから4年。クロワデュノールがダービーを制し、世界最高峰への挑戦が決まった。「凱旋門賞に行きたいと思わせる馬はなかなかいない。それくらいの馬です」。師は早くから素質を見いだし、この挑戦を視野に入れていた。

 「ホープフルSが終わった時、凱旋門賞に行けたらと思いました。でも、3冠を取れると信じていたのでたぶん無理だなと思っていたんです。ただ、皐月賞で負けてしまって…。その時に、なら凱旋門賞に登録させてもらおうと。その日のうちにオーナーにお願いしました。行くかどうかは別にして、その選択肢をつぶしたくありませんでした」

 前哨戦のプランスドランジュ賞を収穫ある競馬で勝利した。本番まで中2週と間隔が詰まるG3戦。85年シリウスシンボリ(6頭立て6着)以来、40年間も日本馬が出走していなかった前哨戦を選択したのにも、明確な意図がある。

 「道中、ゆっくり流れた中でじわっとペースが上がっていく欧州の競馬に慣れてもらうために、本番よりも遅いペースを経験してほしかったんです。また、距離的にも2400メートルを走り切るより疲れが残りづらい2000メートルの方がいいと思いました」

 初めての海外輸送、大きな環境の変化もあり、良化途上でのレースとなった。それでもクロワは、次につながる1勝を飾った。

 「前哨戦の体調面、動きだと当然通用しないと思うので、馬任せな言い方になりますが、あのレースを経験してどれだけ動けるようになっているか。そこに期待するしかないです」

 斉藤崇師には目標がある。今後、海外で数多くのレースを勝ち、世界の陣営からマークされる厩舎を作りたい。その思いは強い。

 「海外でたくさん勝っていくことに憧れはあります。今、世界各国で勝っている矢作先生だけでなく、僕もそういう風になりたいという思いはあります。まだそれは夢の話ですけどね」

 日本競馬の悲願を達成し、“世界のSAITO”として名をとどろかせる。斉藤崇師は愛馬を信じ、パリロンシャンに立つ。(おわり)【藤本真育】

◆斉藤崇史(さいとう・たかし)1982年(昭57)8月29日、神奈川県生まれ。08年2月から栗東・松永幹夫厩舎で厩務員、調教助手。15年に調教師免許取得、16年3月開業。19年クイーンC(クロノジェネシス)でJRA重賞初制覇。同馬で19年秋華賞を制して同G1初制覇。他にラウダシオン、キラーアビリティ、ジェラルディーナなどG1馬を輩出し、今年はクロワデュノールでダービー初制覇。JRA通算2548戦301勝、重賞26勝(うちG1・9勝)。今年は先週終了時点でJRA42勝を挙げ、全国リーディング1位。

出典:日刊スポーツ