【英インターナショナルS回顧】ライバルの騎乗経験豊富な名手に導かれてジャパンが3歳馬のトップに
2019年08月22日 19:00
英国の夏の終わりを告げるヨーク・イボア開催の目玉となるG1英インターナショナルステークスは、遠征して2戦目となるシュヴァルグランを含む9頭によって争われた。当日は薄陽の差す曇り空。馬場状態は日本流の表記で良となったが、英国の表記ではGood。良馬場と稍重の中間として発表された。
前走のG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスこそエネイブルに優勝を譲ったが、今シーズン4戦3勝の5歳牡馬クリスタルオーシャンが JRAの馬券発売で単勝1.4倍(現地ブックメーカーのラドブロークスのオッズでは2.2倍)の1番人気。この翌日のG1ヨークシャーオークスに回ったエネイブルと同じJ.ゴスデン厩舎、L.デットーリ騎手の3歳牡馬キングオブコメディが単勝6.4倍(同4.5倍)の2番人気で続き、前走のG1パリ大賞優勝から急遽、ここに鉾先を向けてきたA.オブライエン厩舎の3歳牡馬ジャパンが単勝7.6倍(同7.0倍)の3番人気。前走に続いてO.マーフィー騎手をパートナーとしたシュヴァルグランはJRAで単勝11.7倍の4番人気、現地では67.0倍の8番人気でスターティングゲートに並んだ。
逃げ馬の見当たらない顔ぶれにあってレースを先導したのはマイルのG1セントジェームズパレススステークスを制したオブライエン厩舎のサーカスマキシマスだった。これを射程圏に入れて大本命のクリスタルオーシャンが単独2番手をキープし、そのあとを追加登録して出走したエラーカムとR.ムーア騎手のジャパンが併走。シュヴァルグランはその後方を追走した。ヨークの直線は約1000m。逃げたサーカスマキシマスを内に見て、いつでも交わせる態勢にいたクリスタルオーシャンが直線半ばでこれに並びかけて単騎先頭に立つ。黒の勝負服、レモンイエローの帽色のコントラストも鮮やかなJ.ドイル騎手の両腕が激しく動いて押し切ろうかという流れに3番手から徐々に差を縮めたジャパンが近づく。
右ムチが2発、3発と入ったクリスタルオーシャンが、残り100mでもうひと伸びして抵抗したが、古馬より3.5kg軽い斤量と追うものの強みを追い風にしたジャパンがゴール前でこれを交わして優勝。クリスタルオーシャンはアタマ差で2着。優勝を争った2頭の後ろでポケットに封じ込められたエラーカムが、外のキングオブコメディを差し返して3着を確保した。4着にキングオブコメディ、5着リーガルリアリティ、6着ロードグリッターズ、7着サーカスマキシマス。シュヴァルグランは直線に入って馬群後方の外から追撃態勢に入ったが、上位6頭のペースが上がるとついてゆけず勝ち馬から約6馬身差の8着でレースを終えた。良馬場の勝ちタイムは2分7秒77。
ジャパンのR.ムーア騎手は、これまでのクリスタルオーシャンのキャリア(16戦)のうち7戦の鞍上にいて先を行く本命馬の泣き所がわかっていた。ドイル騎手の仕掛けに反応して相手を一頭に絞ったシンプルな競馬も好結果につながった。
今シーズンが始まるまでは2歳王者トゥーダーンホット(故障で引退)に次ぐ英ダービーの2番人気に支持されていたジャパン。G1英ダービーで3着した後に重賞を連勝(G2キングエドワード7世ステークスとG1パリ大賞)するも相手に恵まれた印象があって、ここは古馬に胸を借りる立場だったが、王者をねじ伏せての堂々たる勝利はジャパンを3歳世代のトップに押し上げた。次走候補にはディアドラも参戦を予定する9月14日のG1アイリッシュチャンピオンステークス(レパーズタウン競馬場、芝2000m)が挙げられていて、その後はG1凱旋門賞に参戦の可能性もある。
シュヴァルグランの友道康夫調教師は「ポジションが予定よりもちょっと後ろになってしまって、もう少しペースが流れてほしかったのですが、ヨーイドンの競馬になってしまい、長所である長くいい脚が使えなかった」とレースを振り返った。
(サラブレッドインフォメーションシステム 奥野 庸介)