【世界の馬主紹介 Vol.19】カルメットファーム/ブラッド・ケリー

2021年12月22日 15:00

 アメリカ・ケンタッキー州にあるカルメットファームを経営するブラッド・ケリーは1956年3月27日、ケンタッキー州生まれ。タバコ農家で育ち、1990年に廉価帯のタバコを製造するコモンウェルスブランズを創業して大成功(2001年には10億ドルで売却)。2013年には、彼が設立したNC2メディアが世界的に有名な旅行ガイドブックであるロンリープラネットの権利をBBCから購買したことでも話題となった。また、環境や野生生物の保護にも熱心で、テキサス、フロリダなどに多くの土地を所有。ランドリポートの2020年のデータによれば、アメリカで8番目の地主となっている。

 ケリーは2009年からブルーグラスホール社の名で競走馬を所有し、2012年9月には自家生産馬のオプティマイザーでG3ケントSを制して重賞初制覇。同年11月にはハイテイルでBCジュベナイルスプリント(当時リステッド)に優勝した。

 また、その少し前の2012年5月にはケンタッキーの名門カルメットファーム(1924年創設。ワーラウェイ、サイテーションという2頭の米三冠馬を含め8頭の自家生産馬でケンタッキーダービーに優勝。前記2頭の三冠馬に加えて、アリダーなど11頭が米国競馬殿堂入り。1991年に一度破産)がカルメットインベストメントグループトラストに約3600万ドルで買収され、同時にトラスト側からケリーにリースされることが発表され、その名が競馬界に大きく轟いた。

2013年にG1プリークネスSを制したオックスボウ。(Photo by Getty Images)

 その後、翌年2月には馬主名義もブルーグラスホール社からカルメットファームへと変更されることが発表。すると、この年の5月にはオックスボウでG1プリークネスSを制して、新星カルメットファームとして初めてのG1勝ちを達成。以降も2017年のG1シューメーカーマイルSやフランクE.キルローマイルを制したバルアバリ、2020年のG1シガーマイルH優勝のトゥルーティンバー、などがG1に優勝。2018年と2019年にはブラヴァーゾとエバーファストがともにG1プリークネスSで2着に入っている。

 2019年は総収得賞金約650万ドルで北米馬主ランキング2位。北米生産者ランキング(収得賞金順)は2019年、20年と2年続けてトップ(2021年も首位濃厚)。カルメットファームにはG1BCターフの勝ち馬イングリッシュチャネルや、上記オックスボウを含む20頭の種牡馬が繋養されている。

近年のG1勝ち
2021年
アルフレッドG.ヴァンダービルトH(アメリカ):レキシトニアン
マンノウォーS(アメリカ):チャンネルキャット

2020年
シガーマイルH(アメリカ):トゥルーティンバー
パーソナルエンスンS(アメリカ):ヴェクセイシャス

2017年
シューメイカーマイルS(アメリカ):バルアバリ
フランクE.キルローマイルS(アメリカ):バルアバリ

文:秋山 響(TPC)