【凱旋門賞回顧】英国牝馬アルピニスタがV 日本馬は過去最多4頭挑戦も…矢作師「力負けと認めないと」

2022年10月03日 17:00

 現地時間102日、フランスのパリロンシャン競馬場で第101回凱旋門賞(G1)が行われ、イギリスからの遠征馬アルピニスタ(牝5歳、M・プレスコット厩舎)が優勝。日本馬は過去最高の4頭が名を連ねたが、残念ながら今年も勝利の女神は極東から来た挑戦者には微笑まなかった。

 朝から小雨が降ったり止んだりを繰り返す不安定な天候だったが、レース直前には大粒の雨が降り始め、激しく馬場を叩いた。そんな中、世界最高峰と呼ばれるこのレースに出走したのは日本馬4頭を含む20頭。ゲートが開くとその日本馬の1頭であるタイトルホルダー(牡4歳、美浦・栗田徹厩舎)がハナを奪い、19頭を先導した。これにピタリとついて行ったのがブルーム 。そのすぐ後ろにこれもまた日本のディープボンド(牡5歳、栗東・大久保龍志厩舎)が追走。さらに後ろの好位のインにイギリスの牝馬アルピニスタが続いた。ステイフーリッシュ(牡7歳、栗東・矢作芳人厩舎)は中団の外、ドウデュース(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)は後方からレースを進めた。

 フォルスストレートに入ってもタイトルホルダーの逃げは変わらないが、相変わらずそのすぐ後ろをブルームがピタリとつける。34番手がアルハキームとアルピニスタで、その後ろの外にディープボンドという隊列で直線へ向いた。

 ラスト300mでタイトルホルダーがつかまり、代わって抜群の手ごたえで先頭に立ったのがアルピニスタ。内から今年の仏ダービー(G1)の覇者ヴァデニが伸び、外からは昨年の凱旋門賞勝ち馬トルカータータッソも伸びた。結果、アルピニスタが23571のタイムで真っ先にゴール。半馬身差の2着がヴァデニで、さらにクビ差の3着でトルカータータッソがゴールインした。

10度目の挑戦も勝利に届かなかった武豊騎手。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

 一方、日本馬は皆、精彩を欠いた。タイトルホルダーとディープボンドが後退し、それぞれ1118着、ステイフーリッシュも一杯になって14着、ドウデュースは後方のまま19着。いずれも大きく敗れてしまった。

 勝ったアルピニスタは、イギリスでサーの称号を持つプレスコット調教師が管理する5歳の牝馬。これで昨年8月のベルリン大賞からG1レースは実に6連勝となった。また、5歳の牝馬が凱旋門賞を勝ったのは1937年のコリーダ以来、実に85年ぶりの快挙。プレスコット調教師、手綱を取ったL・モリス騎手ともに凱旋門賞はうれしい初制覇となった。

 日本馬の中では最先着となったタイトルホルダーの栗田調教師は、「仕上がりは良かったし、自分の競馬はできた。やれることはやっての結果なので仕方ありません」とレース後にコメント。ステイフーリッシュの矢作調教師は「枠とか馬場ではなく、力負けと認めないといけない結果でした」と潔く語った。

ハナを奪うも最後は力尽きたタイトルホルダー。(Photo by Getty Images)

 また、ディープボンドの大久保調教師は「直前に降った雨で昨年同様の緩い馬場になってしまったのが痛かったです」と唇を噛むと、思わぬ大敗となったドウデュースの友道調教師は「1度叩かれて良くなっていたと思えただけに残念でした。日本にはない悪い馬場になってしまったのが敗因かと思います」と言い、騎乗した武豊騎手は「馬の状態は良かっただけに残念です」と言って小首を傾げてみせた。

 先述した通り、史上最多の4頭の布陣で挑んだ日本馬だが、またしても欧州勢の牙城を崩すには至らなかった。この敗戦を糧に、来年以降改めて頂に立てる馬が出てくることを願おう。

取材・文:平松さとし