【香港国際競走回顧】地元勢の活躍が光るもウインマリリンは海外で初G1制覇!

2022年12月13日 17:00

 現地時間1211日、香港シャティン競馬場で4つの香港国際レースが行われた。

日本からかの地へ渡ったのは14頭。レース前日の10日には残念ながらサリオス(牡5歳、美浦・堀宣行厩舎)が左前脚のハ行のため出走取り消しとなったが、それでも13頭が参戦。長引く新型コロナウイルス騒動で、上限が3万5千人に制限されながらも、実際には4万を超えたファンの前に姿を現した。

最初に行われたのは香港ヴァーズ(G1、芝2400メートル)。日本の大将格は3度目の勝利を目指すグローリーヴェイズ(牡7歳、美浦・尾関知人厩舎)。過去2勝時同様、J.モレイラ騎手が手綱を取った。また、ウインマリリン(牝5歳、美浦・手塚貴久厩舎)にはD.レーン騎手が乗り、アイルランドのブルーム(牡6歳、A.オブライエン厩舎)には武豊騎手が跨った。

 ゲートが開くとメンドシーノがスタートを切らず、枠内に取り残された(競走中止)。対照的にポンと飛び出したのはウインマリリン。逃げる勢いで飛び出したが、外からセニョールトーバ、バターフィールド、ボタニク、内からストーンエイジらが加速すると、それらを行かせて中団へ下げた。ウインマリリンの少し後ろとなったグローリーヴェイズは1~2コーナーのコーナーリングを活かし、内からかわしていく。向こう正面に入ると更に後ろにいたブルームが外から番手を上げる。

前半1200メートルは11551のスロー。セニョールトーバ、ボタニク、ストーンエイジといった先団は変わらないまま34コーナーへ。この時、ウインマリリンは一瞬、9頭の最後方まで下がってしまった。

直線に向き、ラスト300メートルで先頭に立ったのはボタニク。そのすぐ外に馬群の中を伸びて来たグローリーヴェイズが迫るが、最後方まで下がってしまったはずのウインマリリンが大外に持ち出されると、エンジンに点火。豪快に伸び、ラスト150メートルでボタニクを捉え、堂々と先頭に。最後はレーンが抑える余裕の勝利で自身初のG1制覇を海の向こうで飾ってみせた。

1馬身半差の2着がボタニクで更にクビ遅れてグローリーヴェイズが3着でゴールした。

続いて行われたのが香港スプリント(G1、芝1200メートル)。14頭立てのこのレースの日本馬は4頭。高松宮記念(G1)勝ちのナランフレグ(牡6歳、美浦・宗像義忠厩舎)、スプリンターズSG1)の覇者ジャンダルム(牡7歳、栗東・池江泰寿厩舎)の他、メイケイエール(牝4歳、栗東・武英智厩舎)と前年2着のレシステンシア(牝5歳、栗東・松下武士厩舎)が出走した。

香港スプリントは地元の最強馬ウェリントンが快勝。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

しかし、結論から言うと今年も短距離王国香港の高き壁を越えられる馬は出て来なかった。

レースはC.ルメール騎手騎乗の地元馬サイトサクセスとシンガポールからの遠征馬リムズコジオスコがハナ争い。これに3コーナー手前から掛かり気味に上がって来たメイケイエールが加わり淀みのない流れに。レシステンシアが中団の内、その少し後ろの馬群の中にウェリントンがいて、更に後方のインからナランフレグとジャンダルムが追走した。

直線、早目に抜け出したのはサイトサクセス。そのすぐ後ろまで迫っていたメイケイエールが伸びそうで伸びない間に、ウェリントンがかわして一気に先頭に。結果、レーティングの最も重いこの馬が、2着のサイトサクセスに4分の3馬身差をつけて先頭でゴールイン。3着は昨年の覇者スカイフィールドで、日本馬はメイケイエールの5着が最高。ナランフレグが10着、ジャンダルムが12着、レシステンシアが13着にそれぞれ敗れた。

7レースに行われたのが香港マイル(G1、芝1600メートル)。冒頭で記した通りサリオスが取り消したので、こちらに出走した日本馬はシュネルマイスター(牡4歳、美浦・手塚貴久厩舎)とダノンスコーピオン(牡3歳、栗東・安田隆行厩舎)の2頭。両頭を抑え、日本プールでも1番人気に支持されたのが地元のゴールデンシックスティ。前年の香港マイルではサリオス(3着)、インディチャンプ(5着)、ヴァンドギャルド(6着)、ダノンキングリー(8着)らを抑えて優勝したディフェンディングチャンピオン。その後、連敗を喫したが、更に後に3連勝。前哨戦も制し、ここに挑んで来た。

カリフォルニアスパングル(左)がゴールデンシックスティ(右)を破った香港マイル。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

レースは日本の2頭が立ち遅れる感じでスタート。序盤でハナに立ったのはカリフォルニアスパングル。ゴールデンシックスティはいつもより前の好位づけ。シュネルマイスターは中団少し後ろの6番手で前にゴールデンシックスティを見る位置。ダノンスコーピオンは更に後ろでブービーから最後方を追走した。

レースが動いたのは3コーナー。H.ボウマン騎手騎乗のビューティジョイがカリフォルニアスパングルを一気にかわして先頭に。この時、日本の2騎は後方で早くも鞍上の手が動いたが、カリフォルニアスパングルとゴールデンシックスティは持ったまま4コーナーへ。

一度は番手を下げたカリフォルニアスパングルだが、慌てて追いかける事なく追走すると、直線で再び進出。先頭に奪い返すとその外からゴールデンシックスティが差を詰めてきた。しかし、序盤でいつもより前にいたせいか、普段より多い頭数で外を回らされたせいか、これまでのような鋭い伸びがない。結果、早めに抜け出したカリフォルニアスパングルを最後までかわせずに2着でのゴール。カリフォルニアスパングルが大一番で大金星をあげた。

なおダノンスコーピオンは6着でシュネルマイスターはルメール騎手が早々に諦める感じで最下位9着。アクシデントでない事を願うしかない、という結果になってしまった。

 そしてメインの香港カップ(G1、芝2000メートル)にはジオグリフ(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)、ジャックドール(牡4歳、栗東・藤岡健一厩舎)、ダノンザキッド(牡4歳、栗東・安田隆行厩舎)、パンサラッサ(牡5歳、栗東・矢作芳人厩舎)、レイパパレ(牝5歳、栗東・高野友和厩舎)の計5頭、日本馬が参戦した。

香港カップはロマンチックウォリアーが1番人気に応えた。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

 こちらは大方の予想通りパンサラッサの逃げでレースが流れた。しかし、予想に反したのは“大逃げ”にならなかった点。パンサラッサのすぐ後ろにカーインスターがつけ、その後ろにも差なくレイパパレやマネーキャッチャー、そして連戦連勝中のロマンチックウォリアーらが続いた。

 また、これも先行すると思われていたジャックドールはゲートの中で暴れたためスタートで安めを売り、中団からの追走。ジオグリフとダノンザキッドは更に後ろから進む形になった。

 前半1200メートルの通過ラップは11238。馬場の違いなどがあるにしてもパンサラッサの逃げとしては決して速くない数字。ぴたりと後ろについたカーインスターが直線入口では早くもかわして先頭に立つ。しかし、その時、すでにロマンチックウォリアーがそれを射程圏に捉える位置まで上がって来ると、直線半ばでは堂々と抜け出す。これに対し、日本勢はどれも伸びを欠く中、唯一ダノンザキッドだけが後方から一気の脚を見せ、2番手に上がる。とはいえ、その時すでにロマンチックウォリアーははるか前方。結局同馬が15970のレースレコードでゴールインしてから4馬身半遅れてダノンザキッドが2着でゴール。3着には先行策から粘ったマネーキャッチャーが入り、以下の日本勢はジオグリフが6着、ジャックドールが7着、レイパパレが9着、そしてパンサラッサは10着に敗退した。

取材・文:平松さとし