【クイーンエリザベスS回顧】「ちょっと残念」ルメール騎手、世界No.1牝馬貫録のGI・9勝目
2025年04月14日 16:15
GIクイーンエリザベスステークスが4月12日(土)、オーストラリアのランドウィック競馬場2000m芝で開催され、日本から2頭が参戦したもののクリストフ・ルメール騎手が騎乗したローシャムパーク(牡6=美浦・田中博康厩舎)は6着、ダミアン・レーン騎手が騎乗したジオグリフ(牡6=美浦・木村哲也厩舎)は13着に終わった。
クイーンエリザベスSは南半球オーストラリアの秋競馬における中距離チャンピオン決定戦。日本馬は2015年にトーセンスターダム(5着)、トゥザワールド(12着)が初参戦し、以降、2019年クルーガー(2着)、2020年ダノンプレミアム(3着)、2023年ユニコーンライオン(5着)と、5頭が参戦したものの、まだ日本馬による勝利はない。今年は皐月賞馬のジオグリフ、日米GIで2着が2度のローシャムパークと、実力・実績ともに申し分ない2頭の参戦で日本馬初Vが期待されたが、地元豪州馬の壁に跳ね返されてしまった。
レースは連闘で挑んだジオグリフが出遅れた前走から一転、好スタートから内枠を利して好位4番手追走の積極策。一方、13頭立て10番ゲートの外目発進となったローシャムパークは後方4~5番手で脚をタメる形となった。
「良い雰囲気の中で、この子の走りや振る舞いを見せられたと思います。ジョッキーとも話しましたが、今日はとても落ち着いていて、バックストレッチの走りまでは『これは』という手応えがあったようです」
レース後にそう語ったのはローシャムパークを管理する田中博調教師。見た目にもリズム良く追走しており、鞍上との折り合いもバッチリ。この様子なら、勝利まであと一歩と迫った昨秋の米国GIブリーダーズカップターフの末脚を再現して好勝負になる――そう期待した日本の競馬ファンは多かったはずだ。
ところが、勝負どころの4コーナーで手応えが悪くなってしまい、直線に入っても末脚はジリジリ。爆発的な伸びを見せられず6着でのゴールとなった。
「ちょっと残念です。道中はドバイオナーのちょうど後ろの位置で良い感じでした。良いコンディションでしたが、直線では加速することができませんでした」と、ルメール騎手も無念のコメント。また、道中は良い形で運びながら直線伸びあぐねたことについて、田中博調教師が「原因をしっかりと探っていきたいと思います」と話すとともに、「これで海外遠征は3度目になりますし、その度に心身共に成長していることを実感していますので、この経験を活かしてパフォーマンスを上げられるように取り組んでいきたいと思います」と、さらなるパワーアップへ前向きなコメントを残した。
一方のジオグリフは、「前走よりはるかに良くゲートを出てくれ、道中もリズム良く運べましたが、残り600メートル地点で力がなかったです」とレーン騎手が語ったように、3コーナー過ぎから脚色が鈍くなり、直線に入ったころにはもう余力が残っていなかった。
この春は先週のGIドンカスターマイル(ランドウィック競馬場1600m芝)の18着と合わせて豪州遠征2連戦に臨んだジオグリフだったが、結果は続けての2ケタ着順。木村調教師は「ジオグリフはどの国に来てもいつも一生懸命に走ってくれているので、自分が彼にどれだけのことをしてあげているか、もう1回考え直したいと思っています」と、今後の立て直しを誓った。
日本馬2頭がともに伸びあぐねた中、馬群の真ん中から鮮やかに突き抜けたのは地元豪州の女傑ヴィアシスティーナ(牝7)だった。道中はローシャムパークとほぼ同じ位置のインから追走。直線入り口で前が壁になったものの、先行各馬がバラけたところを見逃さず間隙をついて一気に先頭との差を詰めると、残り200mから堂々先頭へ。あとは後続をグンと突き放し、外から差してきた英国からの遠征馬で昨年のGI香港ヴァーズ2着のドバイオナーを全く寄せ付けず。余裕たっぷりの1.75馬身差でGI通算9勝目を飾った。
6歳の2023/24シーズンに英国から移籍したヴィアシスティーナは、昨年10月のGIコックスプレートで日本のプログノーシスに8馬身もの差をつけて圧勝。この一戦のパフォーマンスは日本の競馬ファンにも大きなインパクトをもたらし、レーティングでも2024年の年間3位、牝馬では世界最高となる127を獲得した。その後もGIの勝ち鞍を積み重ね、2024/25シーズンのみでGI・7勝。これは2018/19シーズンに名牝ウィンクスが打ち立てた1シーズンの最多GI勝利数に並ぶ記録ともなった。
JRA発売分の単勝人気でも6.1倍だった2番人気ローシャムパークを大きくリードする、1.4倍のダントツ人気にも応える満点の走り。世界の競馬史に名を残す牝馬としての実力と貫録をまざまざと見せつける完勝劇だった。
文:森永淳洋