【ケンタッキーダービー回顧】「経験したことのない馬場で…」雨に泣いた日本馬2頭、ゴドルフィンが初栄冠

2025年05月05日 13:30

 3歳ダート競馬の頂点を決める第151回ケンタッキーダービーが現地時間53日(土)、米国・チャーチルダウンズ競馬場2000mで行われ、日本からは2頭が出走したものの、ジョアン・モレイラ騎手騎乗のルクソールカフェ(牡3=美浦・堀宣行厩舎)は12着、アドマイヤデイトナ(牡3=美浦・加藤征弘厩舎)は19着に終わった。

 何よりも不運だったのは、大雨により水がハッキリと浮き出る“泥んこ”の不良馬場になってしまったこと。顔を泥だらけにしたルメール騎手も“お手上げ”といった表情でレース直後のインタビューに答えていた。

「良いスタートで、良いポジションも取れましたけど、こういう馬場で全然合わなかったです。返し馬からあまり良くなさそうでした。向こう正面までは良かったけど、その後はちょっと滑ってしまったし、ペースについていくことができませんでした。苦しかったです。日本馬はこういう馬場に慣れていませんでした」

 レースは内よりの5番ゲートから好発を決め、最初の1コーナーまでのゴチャつきも巧みなハンドリングで回避。5番手のインを確保し、これは絶好位のポジションかと思われた。だが、ルメール騎手が語ったようにぬかるんだ馬場に脚を取られてしまい、また、この不良コンディションにも関わらず最初の400m2281800m4623と、前を引っ張る先行馬がガンガンと飛ばすハイペースもたたってスタミナを消耗。好位だったはずのポジションが結果的には裏目に出てしまい、3コーナー過ぎからもう余力がなく後退してしまった。

 一方、ルクソールカフェは伸びあがるようにゲートを出てしまい、後手を踏んでしまったことがまずは痛かった。

「パドックから返し馬までの馬の雰囲気とフィーリングはとても良かったです。ただ、ゲートに入ると、競馬場の音響など、慣れない環境で馬の集中が途切れてしまい、スタートのタイミングが合いませんでした」とモレイラ騎手。

 すぐさまリカバーしたかったが、1コーナーに入るまでの密集の中で最内に押し込められてしまい道中は馬群の中、中団よりやや後ろ。このポジションは「理想よりも後方の位置取りとなってしまった」という。

 ただ、向こう正面から3コーナーにかけては下がってくる馬をかわしつつ、インからスルスルと押し上げていくと、直線入り口では先頭集団も視界に捉える射程圏。ここから日本で見せていた末脚を使えれば……と期待も高まったが、アドマイヤデイトナ同様にやはり道悪が足かせとなり力を発揮できなかったようだ。

「経験したことのない馬場でキックバックも受け、最後の直線ではベストな脚を使うことができませんでした。タフな環境で、馬は最後までよく頑張ってくれましたが、今日の展開ではベストなパフォーマンスを出せませんでした」

 昨年のフォーエバーヤング(牡4=栗東・矢作芳人厩舎)が勝ち馬からハナ、ハナ差の3着と、歴史的勝利まであと一歩と迫っただけに今年も好勝負を期待するファン、関係者の思いは強かっただろう。ましてルクソールカフェは米国産馬で父はクラシック三冠馬のアメリカンファラオ。JRA発売分の単勝オッズは2番人気の支持を集め、現地オッズでも4番人気とダート競馬の本場アメリカのファンの評価も高かった。

ゴドルフィンにKYダービー初制覇をもたらしたソヴリンティ。(Photo by Getty Images)

 だが、終わってみれば日本馬2頭は揃って2ケタ着順の敗戦。不良馬場に敗因を求められるとはいえ、勝利したソヴリンティ(牡3)はJRA発売分で3番人気、2着ジャーナリズム(牡3)が1番人気、さらに3着に入ったバエザ(牡3)も5番人気と、いずれも上位人気の一角だった。そんな優勝候補たちがこの不良馬場をものともせずに能力を発揮したのだから、やはり米国ダートのトップホースは底知れない強さがある。

 勝ったソヴリンティは外よりの16番ゲートという不利なスタートポジションから、道中は単独の後方4番手。3コーナー手前から一気に加速して大外を捲るように上がっていくと、最後の直線は中団から同じく外を回って先頭へと躍り出たジャーナリズムを目掛けてパワフルな伸び。残り1ハロンでついに捉えると、最後は1馬身半突き放してのゴールだった。

 騎乗したジュニオール・アルバラード騎手はケンタッキーダービー初勝利。ウィリアム・モット調教師は2019年カントリーハウス以来の2勝目だが、最初の勝利は1位入線したマキシマムセキュリティの降着により繰り上がりでの1着だった。それだけに今回の優勝はまた格別の味だろう。

 そして同馬を生産・所有するのは、日本でもおなじみのゴドルフィン。これが嬉しいケンタッキーダービー初勝利となった。しかも、ゴドルフィンは前日のケンタッキーオークスをグッドチア(牝3)で制し、2日続けて3歳牡牝の米クラシック初戦を制覇。さらにイギリスでは、ケンタッキーダービーと同日に行われた三冠初戦である2000ギニーをルーリングコート(牡3)で、翌4日の1000ギニーもデザートフラワー(牝3)で勝ち、この週末に行われた英米の3歳クラシックを完全制覇の快挙。ブルーの勝負服が世界の競馬を席巻した3日間となった。