【香港チャンピオンズデー回顧】英雄に及ばず2着もマスカレードボールは「本物」、今後へ自信深める走り
2026年04月27日 14:30
3つの国際GIレースが行われる春の香港競馬の祭典、香港チャンピオンズデーが4月26日(日)にシャティン競馬場で開催された。メインレースの芝2000m、クイーンエリザベス2世カップには昨年の秋の天皇賞馬マスカレードボール(牡4=美浦・手塚貴久厩舎)がクリストフ・ルメール騎手鞍上で参戦。当地の英雄ロマンチックウォリアー(セン8=香港・C.シャム厩舎)に挑んだものの、1馬身及ばず2着に敗れた。
レースはやや後手を踏んだスタートから最後方を追走したマスカレードボール。道中のペースは遅く、また向こう正面を過ぎてからも各馬に動きは見られなかったため、淡々とした流れのまま最終4コーナーから最後の直線を迎えた。
ちょうど中団の4番手から運んだロマンチックウォリアーはジェームズ・マクドナルド騎手の追い出しに鋭く反応して一気に先頭へと立ち、さらに後続とのリードを広げにかかる。そんな横綱相撲を展開した最大の強敵を相手に、マスカレードボールもグイグイと急追したが、1馬身差に詰め寄ったところで無念のゴールを迎えた。
「惜しかったですが、とても良い競馬をしてくれました。能力も出してくれたので、今日は良かったです。ラスト300mはすごく良い脚を使ってくれました」とルメール騎手。一方の手塚調教師は「あわよくば差し切ってほしいなと思っていたのですが」と悔しそうな表情を浮かべつつも、「ここまでの過程を踏まえると、今回は良く走ってくれたなと思います」と、合格点を与えていた。
本来、昨年のジャパンカップ以来となる今年初戦は3月のドバイシーマクラシックを予定していたが、中東情勢の緊迫化により自重。それにより一度は大阪杯に矛先を変えたものの、最終的に香港をターゲットにしたという経緯での参戦だった。決して思い描いた通りではなかった臨戦課程で迎えた5カ月ぶりの実戦で、しかもルメール騎手、手塚調教師ともに嘆いたスローペース。確かにロマンチックウォリアーはとてつもなく強かったが、それでもマスカレードボールはGI4勝馬で昨年の凱旋門賞3着のソジー(牡5=仏・A.ファーブル厩舎)に1馬身半差をつけて先着した。
英雄の“庭”であるシャティンで1馬身差までに迫り、かつ、まぎれもない欧州トップホースを負かした競馬は、今後への確かな手応えになるに違いない。手塚調教師も「彼のパフォーマンスが本物だなということが分かった」と自信を深めている。
「この後はよくケアして、この1年で日本を代表する馬になれるように、また改めて鍛え直したいなと思います」
日本ではひと足先に同い年のライバル・クロワデュノールが大阪杯で復活Vを決めて、その力を再度アピールした。マスカレードボールは勝利こそならなかったが、今年の日本競馬の主役の1頭であることを示すに十分な、海外デビュー戦だったと思う。
また、同じく日本からクイーンエリザベス2世カップに出走したジョバンニ(牡4=栗東・杉山晴紀厩舎)は、ジェイソン・コレット騎手騎乗で2番手の好位から懸命に脚を伸ばすも5着。ジョアン・モレイラ騎手とのコンビで挑んだジューンテイク(牡5=栗東・武英智厩舎)はゲートが決まらず後方2番手からの競馬となり最下位の8着に敗れた。
なお、ロマンチックウォリアーは2022~24年の3連覇以来となる同レース4勝目、GI勝利は通算14勝目となった。
芝1600mで行われたチャンピオンズマイルには昨年のJRA賞最優秀マイラー、ジャンタルマンタル(牡5=栗東・高野友和厩舎)が川田将雅騎手とともに参戦したものの、14頭立てでまさかの13着。出遅れ気味のスタートから積極的にポジションを取り返しに行き、3番手で最後の直線を迎えたが、その後は力なく後退してしまった。
「まずは無事にゴールまで走ってくれたことに感謝しています。実績を積み自信を持って挑んだ2度目の香港なので、この走り、この結果になってしまったことが非常に残念です」と川田騎手はコメント。高野調教師は「自分の感覚と馬の状態がマッチしていなかったというところに僕の調教師としての未熟さを感じました。馬のコンディション作りを重大な敗因として捉えていて反省しています」と、この敗戦の責任は自身にあると語った。
一昨年12月の香港マイルでも13着に敗れているジャンタルマンタルだが、あの当時は熱発で予定していた富士ステークスを使えず、NHKマイルC1着以来7カ月ぶりの競馬が初の海外遠征というハードルの高い条件でもあった。それだけに今度は本来の力を見せたいという思いが陣営にはあっただろうが、またしても厳しい結果に……。「馬場も含めて根本的に合わないところがあるのかもしれない」ともトレーナーがコメントしたように、日本では無敵の強さを見せているマイル王にとって、香港は思わぬ鬼門となってしまった。
また、日本からはもう1頭、シュトラウス(牡5=美浦・武井亮厩舎)がモレイラ騎手を背に、ジャンタルマンタルを見る形で道中を進めたものの12着。直線で前が壁になる不運もあったが、「残念ながら少し行きたがってしまって、序盤でエネルギーを使ってしまいました」と鞍上はコメント。快勝した前走のアブダビゴールドCの再現とはいかず、折り合いの不安をまた見せる形となってしまったようだ。
なお、勝ったのは地元のマイウィッシュ(セン5=香港・M.ニューナム厩舎)。日本でもおなじみヒュー・ボウマン騎手の豪快なアクションに応えて後方4番手から差し切り勝ち。初のGIタイトル獲得となった。
そして、香港、日本のみならず、世界を驚かせたであろう超絶パフォーマンスを披露したのが芝1200mのチェアマンズスプリントプライズを4馬身1/4差で圧勝したカーインライジング(セン5=香港・D.ヘイズ厩舎)だ。道中は3番手追走から、最後の直線でザック・パートン騎手が軽く仕掛けると、あっという間に後続を置き去り。高松宮記念を快勝して再び上昇気流に乗ったJRA賞最優秀スプリンターのサトノレーヴ(牡7=美浦・堀宣行厩舎)がモレイラ騎手とともに末脚を懸命に伸ばすも、全く追いつくことができなかった。
勝ちタイム1分7秒10をマークして自身のレコードタイムを更新したカーインライジングは、これで20連勝を達成。モレイラ騎手が「世界一のスプリンターと言えるような相手に当たってしまいました」と脱帽したように、まるで異次元の速さだ。この連勝街道はいったいどこまで続くのだろうか。そして、世界にカーインライジングを止められる馬はいるのだろうか。
文:森永淳洋