香港カップ

Hong Kong Cup

2017/12/10(日)17時30分発走 ※発走日時は日本時間

シャティン競馬場

  

【香港カップ】栗山求氏による血統傾向と有力馬分析

2017年12月06日 13:00

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 日本馬は過去5回優勝、2着3回。一昨年エイシンヒカリ、昨年モーリスと現在2連勝中。4レース組まれた香港国際競走のなかで最も分のいいレースだ。芝2000~2400mは国際的に日本馬の実力が高く、なおかつ2000m路線はジャパンCとさほど競合しないため、国内の強豪がエントリーしやすいという背景がある。昨年は5頭出走し、1、3、4、9、10着。今年は日本馬、香港馬、欧州馬の実力が接近していて混戦ムードだ。

 香港のオッズで1番人気が確実視されているのは、地元の大将格ワーザー。今年、香港ゴールドカップとチャンピオンズ&チャターCとG1を2勝している。休み明けをひと叩きしたあとの前走、G2ジョッキークラブCをクビ差勝ちして本番に臨む。ニュージーランドで生産され、オーストラリアで走ったあと、香港へ移籍した。父タヴィストックはモンジューを経てサドラーズウェルズにさかのぼる系統。母の父ザビールはニュージーランドの大種牡馬サートリストラムの息子で、自身もオーストラリアとニュージーランドの両国でリーディングサイアーとなった。

 香港カップは過去10年間、さまざまな国で調教された馬が勝っているが、オセアニアで生産された馬は一度も連対していない。これは気になるデータだ。サドラーズウェルズ系は昨年の連対馬2頭がいずれも母の父に持っていたものの、過去10年間の成績を見ると意外に低調で、勝ち馬は出ていない。

 ポエッツワードはアイルランド生まれのイギリス調教馬。4歳を迎えた今年頭角を現し、イギリスのG3グロリアスSを勝ったあと、愛チャンピオンSと英チャンピオンSでいずれも2着。前者は前が止まる展開に助けられ、後者は勝ち馬から7馬身離されていたものの、G1のなかでもトップクラスといえる格式を誇るレースでこの成績は立派だ。父ポエツヴォイスはミスタープロスペクター系の名種牡馬ドバウィの息子で、現役時代にマイルの英G1を制した。母は「ナシュワン×シャーリーハイツ」というステイヤー配合。アイルランド産馬らしい重厚な血統で、軽い芝への対応が鍵だろう。過去10年間でイギリス産馬とアイルランド産馬は合計10頭連対しているが、それらはスノーフェアリーを除いてすべて他国で調教された馬だった。基本的にアイルランドとイギリスから遠征してくる馬は割り引き。

 タイムワープはイギリス生まれの香港調教馬。前走の馬体重が562kgと巨大な馬格を誇る。昨シーズン末の6月中旬から7月中旬にかけて3連勝と波に乗り、今季初戦の10月から重賞ばかり3戦して3、2、2着。まだ重賞勝ちこそないものの、ここ2戦はアタマ差、クビ差で、前走は王者ワーザーを相手に2.3kgの斤量差があったとはいえ一騎打ちに持ち込んでいる。父アーキペンコはキングマンボを通じてミスタープロスペクターにさかのぼる父系に属し、ヌレイエフ≒バウンド3×1という強度の4分の3同血クロスを持つ。母方にはそのクロスに絡む血が3つあり、人為的に作られたとしか思えない計画的な配合の産物だ。まだまだ伸びしろを感じる馬で、ワーザーに対する2.3kgの斤量的アドバンテージは今回消滅するが、大駆けの期待が掛けられる。

 ブロンドミーはアイルランド生まれのイギリス調教馬。同国を拠点にアメリカ、トルコ、イタリア、フランス、カナダと世界を巡っている。遠征慣れしたタフな牝馬なので、これが引退レースとなる香港でも力を出せるだろう。昨年9月にトルコでG2を勝って重賞初制覇。今年5月、イギリスのG2ミドルトンSを勝ち、G1ナッソーSでも2着と健闘。フランス遠征では大敗したものの、前走、カナダのE・P・テイラーSでG1初制覇を飾った。母ホルダはパンプ≒スペシャル2×4という4分の3同血クロスを持つ。本馬はそれを継続発展させ、ヌレイエフ≒サドラーズウェルズ3×4。この馬もタイムワープと同様に計画性の感じられる好配合馬だ。父タマユズはミスタープロスペクター系でマイネルエテルネル(小倉2歳S)の父でもある。アイルランドとイギリスから遠征してくる馬は割り引いて考えるのがセオリーだが、この馬は遠征経験が豊富で、多種多様な馬場に対応しているので問題なさそう。あとは牡馬相手の力関係だけ。

【栗山求の最終見解】

 外国馬は一長一短、それぞれセールスポイントとウィークポイントが混在していて決め手がない。展開や枠順によって着順が変動しそうだ。これならば、過去2年間で3頭の連対馬を出している日本馬のほうが信頼できる。

 春に当地でクイーンエリザベス2世Cを勝ったネオリアリズムはネオユニヴァースを父に持つ。スピードの持続力を武器とし、終いが切れるタイプではないので、序盤が超スローペースとなったクイーンエリザベス2世Cではモレイラ騎手がレース途中から動き、ロングスパート戦にレースを作り替えて快勝した。香港競馬はラストの決め手勝負になりやすい。それを回避するために再度動くことも考えられる。

 スマートレイアーとステファノスの2頭はディープインパクト産駒。2年前の優勝馬エイシンヒカリは同産駒だった。

 スマートレイアーは昨年、芝2400mの香港ヴァーズに出走して5着。前々走の京都大賞典ではトーセンバジル、シュヴァルグランを相手に勝っている。前走のエリザベス女王杯は6着と敗れたが、前残りの流れとなったことが響いた。展開が向けば馬券圏内に食い込む力はある。日本の牝馬は一昨年にヌーヴォレコルトが2着となった。


 ステファノスは4回目の香港遠征。一昨年のこのレースは10着、昨年はモーリスの3着と健闘した。大阪杯で2着となったように、良馬場の芝2000mという条件ならこのメンバーに入っても十分やれる。前走の天皇賞・秋は極悪馬場の影響で10着。これで人気が落ちそうなのもいい。突出した馬がいない今年はチャンス十分だろう。