【凱旋門賞回顧】今年も壁は高く…「外枠は難しい」クロワデュノール14着、ビザンチンドリーム健闘5着

2025年10月06日 14:00

 ヨーロッパにおける最強馬決定戦、第104回凱旋門賞(G1)が105日(日)にフランスのパリロンシャン競馬場2400m芝で行われ、今年は日本から3頭が出走。だが、JRA発売分の単勝オッズ4番人気のビザンチンドリーム(牡4=栗東・坂口智康厩舎)が日本馬最先着の5着、3番人気のクロワデュノール(牡3=栗東・斉藤崇史厩舎)は14着、6番人気のアロヒアリイ(牡3=美浦・田中博康厩舎)は16着に終わり、日本馬の悲願達成はまたしてもならなかった。

 今年、日本から挑戦した3頭はすべて前哨戦を勝っての参戦。これは史上初のケースであり、今度こその悲願成就か――そんな期待感が国内はもとより、海外メディアでも大きく報じられていた。だが、日本の総大将格だったダービー馬クロワデュノールは不利とされる大外17番枠に決まり、前哨戦のフォワ賞で昨年の凱旋門賞4着馬ソジーを倒して評価急上昇のビザンチンドリームも外めの15番枠。加えて金曜午後から土曜お昼前まで雨が降り、土曜の夕方には2度のスコール。日曜朝にも雨が降り、こともあろうにレース直前にも強い雨と、日本馬には次々と試練が襲い掛かった。

 それらをすべて跳ね返してほしいという思いは騎手、調教師、日本馬の関係者、そしてファンも皆同じだっただろう。だが、やはり凱旋門賞の壁はどこまでも高い。

 レースは大外から抜群のスタートを切ったクロワデュノールがなるべく早いうちにインへと寄ろうとするも、14番枠のロスアンゼルスも同じように先行してきたためになかなか内へと入り込めない。

「今日に関しては枠順と位置取りと、展開も含めて上手く行かなかったという感じですね。外から上手く立ち回れたら良かったのですが、ロスアンゼルスもなかなか引かなかったですし、それのもう一つ外というのもなかなか難しい選択だったと思うので……」と斉藤調教師。

 ならばと北村友一騎手はさらに積極的に仕掛け、ロスアンゼルスの前に出て2番手をようやく確保。さらに前半1000mを過ぎるころにはハナにも立ったが、マイペースではなかった分、リズムも折り合いも完璧とまでは行かなかったようだ。

「最初から外枠は難しいと思っていましたけど、一番はもっとリラックスして走らせてあげることができれば良かったなと思っています」

 レース後、北村騎手はそう振り返った。ジョッキー自身が太鼓判を押したように、仕上がり途上の前走・プランスドランジュ賞を使ったことで状態は確実にアップ。「馬自体のコンディションは良くなっていたと思いますし、すごくフレッシュになっていたとは思います」。それだけに力を100%発揮するには難しい大外枠スタートがやはり大きく響いてしまったか。オープンストレッチに入る残り450mからはもう余力はなかった。

 同じく外枠発走だったビザンチンドリームはゲートがひと息だったこともあり、初手は最後方からの追走。ただ、騎乗したオイシン・マーフィー騎手は「最後にインを突くのはもともとの作戦でした。内側の馬場がすごく良い状態だったのでそこを使おうと思っていました」とレース後に明かしており、あえてゆっくりとゲートを出したのかもしれない。

 16頭を前に行かせて、自身は空いたインへとジワジワ進路変更。そこから最内を回ってくるわけだが、後方待機のまま何もしないわけではなく、レース中盤からスルスルと番手を上げていき、最後の直線に向くころには先頭を射程圏に捉える中団まで進出したマーフィー騎手のハンドルさばきはさすが世界の名手である。

 そしてオープンストレッチの利点を最大限に生かし、最内から鋭く脚を伸ばしたものの、フォワ賞のように突き抜けるまでには至らず。これはやはりペネトロメーターの数値で4.1の馬場=日本での重、それも不良に近い道悪の影響が大きかった。

「道中も内側で上手くすり抜けられて本当に良い感じで運べました。ただ、馬場がちょっと緩くて切れ味が落ちてしまいました」とマーフィー騎手。それでもこの条件の中で持てる力は出し切っており、健闘の5着と言っていいだろう。

 一方、この2頭とは対照的に絶好の4番枠スタートだったアロヒアリイは前半45番手の好位を追走。ところが「ちょっと斜行があって、ぶつけられてしまいました」と手綱をとったクリストフ・ルメール騎手。これでバランスを崩してしまい、中団まで下げる形となってしまったようだ。

 それでも手応え良く直線を迎えられたかに見えたが、「直線に向いてペースが上がった時に加速することができなかったです。残念ながら今日の馬場はまた重かったです」。前走のギヨームドルナノ賞では逃げて3馬身半差の快勝を飾るスピードを見せたアロヒアリイだったが、同じフランスの競馬場でもドーヴィルとパリロンシャンの馬場は別物。当地特有の重馬場を克服することはできなかった。

 3頭とも残念な結果に終わったが、斉藤調教師は「実力以外の部分で上手くいかなかった」と話しており、またマーフィー騎手、ルメール騎手ともに相棒の実力、素質を“GIでも勝負になる馬”と高く評価している。今回の悔しい敗戦を大きな糧に変えての成長、そして来年の再チャレンジをぜひ期待したいものだ。

 一方、第104代凱旋門賞馬に輝いたのは地元フランスの3歳馬、JRA発売分の単勝オッズ10番人気の伏兵ダリズ(牡3=仏・F.グラファール厩舎)だった。2番枠スタートから道中は2番人気ミニーホーク(牝3=愛・A.オブライエン厩舎)を見る形で56番手グループのインを追走。最後の直線では外に持ち出したクリストフ・スミヨン騎手のミニーホークがいち早く先頭へと躍り出たが、その外からさらに伸びたダリズが一騎打ちをアタマ差だけ制し、ゴール前で見事に差し切った。

 前走のプランスドランジュ賞でもゴール前では鋭く伸びてクロワデュノールを追い詰めたダリズだったが、その末脚はやはり本物。大一番の舞台でさらに輝きを増し、地元馬の誇りと意地を示すG1初制覇となった。なお、父シーザスターズに続く父子2代制覇となり、シーザスターズの母アーバンシーも含めれば、変則的ではあるが“親子3代制覇”ともなる。

 また、騎乗したミカエル・バルザローナ騎手はかつてJRA短期免許を取得したことがあり、管理するフランシスアンリ・グラファール調教師はイラプト、ゴリアットでジャパンカップに参戦経験がある。日本でもおなじみの二人はともに嬉しい凱旋門賞初制覇となった。