【ドバイワールドカップデー回顧】敗因は馬場? フォーエバーヤング今年も苦杯、まさかの2着
2026年03月30日 13:15
春競馬最大の国際レース、ドバイワールドカップデーが現地時間3月28日(土)、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイのメイダン競馬場で開催された。
当時の米国最強馬シガーが歴史的な勝利を飾った1996年創設の第1回から今年で節目の30年。本来であれば日本からも各カテゴリーのトップホースが出走を予定しており、豪華な記念大会となるはずだった。しかし、米国・イスラエルとイランの戦闘による中東情勢の悪化により、多くの日本調教馬が自重。そのため、最終的に日本馬は5レースで6頭の出走にとどまった。
それでも今年のドバイワールドカップの主役は日本が誇る世界最強のダートホース、フォーエバーヤング(牡5=栗東・矢作芳人厩舎)だ。前走のサウジカップ快勝後は直接ドバイへと渡り、緊迫する中東情勢に影響されることなく現地で調整メニューを順調に消化。昨年3着に敗れた分のリベンジ、そして、サウジカップ、ブリーダーズカップ・クラシックも合わせた世界三大ダートレースの完全制覇を華々しく達成するはずだった。
しかし、結果は2着。日本だけでなく、世界の競馬ファンも驚くまさかの番狂わせだった。
レースは好スタートから鞍上の坂井瑠星騎手が押して位置を取りに行く積極策。勢いよくハナを切った重賞連勝中の米国馬マグニチュード(牡4=米・S.アスムッセン厩舎)をインに見る形の絶好2番手で進めた。道中は特に不利もなく、迎えた最後の直線。あとは先行馬を捕まえに行くだけだったが、フォーエバーヤングはなかなかスピードが乗って来ず、マグニチュードとの差を詰められない。残り100mを切ってようやくグイグイと追い込んだものの万事休す。約1馬身届かず、今年もドバイワールドカップのタイトルを手にすることはできなかった。
直線でバテたわけではなく、むしろゴール前でマグニチュードを追い詰めにかかった走りは、最後まで諦めないフォーエバーヤングらしさが出た競馬でもあった。しかし、BCクラシック、サウジカップと違った点と言えば、3、4コーナーの手応えだろう。もともと勝負どころでズブさを見せる馬ではあったのだが、この日は再び反応の悪さを出してしまい、その隙にマグニチュードとの差を広げられてしまった。これが最後まで致命傷となった形だ。
「メイダン競馬場の馬場がこの馬にはあまり合っていないように感じます」
そう現地メディアに語った矢作調教師。サウジでのロマンチックウォリアーとの激闘、さらに物議を醸した尿対検査があった昨年とは違い、今年は気になる疲れもトラブルもなくゲートインできた。それだけにパフォーマンスを発揮できずに敗れた原因を求めるとなると、“馬場”ということになってしまうのだろうか。
一方、坂井騎手は「すべてプラン通りに運ぶことができましたが、今日は勝ち馬が強かったです」とコメントしている。
勝ったマグニチュードはこれで重賞3連勝。G1レースはこれまでトラヴァーズステークス3着、ペンシルベニアダービー2着の結果があったが、ビッグネームを倒すアップセットで嬉しいG1初制覇となった。
この日、日本馬がスポットライトを浴びたのは第4レースで行われた3歳1900mダートのUAEダービー。クリスチャン・デムーロ騎手が騎乗したワンダーディーン(牡3=栗東・高柳大輔厩舎)が好位追走から力強く抜け出し、見事な勝利を収めた。
同時にケンタッキーダービーへの出走権を確実なものとし、高柳大輔調教師は「ここから直接アメリカに向かう予定です」と、挑戦を明言。また、C・デムーロ騎手は「理想的なレースができました。もしケンタッキーダービーで騎乗の機会をいただけるなら、それは自分にとって初めてのことであり、素晴らしい経験になるでしょう」と、米国でのコンビ継続を熱望している。
なお、今回のワンダーディーンの勝利で日本調教馬はUAEダービーを5連覇。また、同レースに出走したジェームズ・ドイル騎手騎乗のパイロマンサー(牡3=栗東・吉村圭司厩舎)は3着だった。
惜しかったのは第5Rで行われた1200m芝のアルクオーツスプリントに出走した鮫島克駿騎手騎乗のルガル(牡6=栗東・杉山晴紀厩舎)だ。2番手追走から前を行く地元UAEのネイティブアプローチ(セン5=A.ビン・ハルマシュ厩舎)を一度はかわしたかに見えたが、ゴール寸前で差し返され無念の2着。日本調教馬初となるアルクオーツスプリントVは惜しくもならなかった。
ほか、1200mダートのドバイゴールデンシャヒーンに出走した坂井騎手騎乗のアメリカンステージ(牡4=栗東・矢作芳人厩舎)は直線失速して最下位の12着。1800m芝のドバイターフに出走したガイアフォース(牡7=栗東・杉山晴紀厩舎)は坂井騎手とのコンビで果敢に逃げたものの6着に終わった。特にこのレースでは、圧倒的1番人気に支持された英国調教馬のオンブズマン(牡5=英・J&T.ゴスデン厩舎)が鮮やかな差し切りで1着。欧州中距離トップスターの強さをアピールするとともに、ゴドルフィン所属馬として記念の30回大会に華を添える勝利を飾った。
そして、2410m芝のドバイシーマクラシックに日本調教馬の出走はなかったものの、昨年のジャパンカップでも鮮烈な強さを披露したカランダガン(セン5=仏・F.グラファール厩舎)がこの日も豪快な末脚でV。芝・世界最強の力をまざまざと見せつけた。
最初に述べたように、中東情勢の不安がなければドバイターフにはミュージアムマイル、ジャンタルマンタル、ドバイシーマクラシックにはダノンデサイル、マスカレードボールが出走を予定していた。もし、この欧州トップ2と日本が誇る精鋭の直接対決が実現していたらと思うと……そう滅多にある機会ではないので、本当に残念でならない。
戦争は競馬の世界にも大きな損失を与える結果となったが、ともあれ、今回出走した日本馬たちが無事に帰国し、そして一刻も早く平和が訪れることを願うばかりだ。
文:森永淳洋