サトノダイヤモンドは4着、凱旋門賞での巻き返しに期待/フォワ賞回顧
2017年09月12日 11:25
現地10月1日のG1凱旋門賞(芝2400m)に参戦を予定しているサトノダイヤモンド(牡4、栗東・池江泰寿厩舎)とサトノノブレス(牡7、栗東・池江泰寿厩舎)が、その前哨戦として現地9月10日にフランス・パリ近郊のシャンティイ競馬場で行われたG2フォワ賞(芝2400m)に出走。凱旋門賞本番と同距離、同コースで行われる舞台でどのような走りを見せてくれるか注目されたが、重馬場に悪化した馬場の影響もあってC.ルメール騎手のサトノダイヤモンドは4着、川田将雅騎手のサトノノブレスは6着。優勝したのはドイツのチンギスシークレットだった。
今年のフォワ賞には、昨年のG1菊花賞とG1有馬記念に優勝したサトノダイヤモンド、2014年のG2日経新春杯などこれまで重賞4勝を挙げているサトノノブレスのほか、地元フランスから5月のG1ガネー賞まで重賞3連勝してここが休み明けのクロスオブスターズ、昨年のフォワ賞の覇者シルバーウェーヴ、昨年の凱旋門賞にも出走したタリスマニック、ドイツでG1を勝って臨んだチンギスシークレットの6頭が顔を揃えた。
レースは、スタートしてすぐに日本の2頭が前に出ると、サトノノブレスがサトノダイヤモンドの先導役を務めるべく、川田騎手が肩ムチを入れてハナを主張。先頭から4馬身ほど後ろにサトノダイヤモンドがつけ、それを直後でマークするようにシルバーウェーヴ、チンギスシークレットが続き、差なくタリスマニックとクロスオブスターズが後方に待機して前半は流れた。
残り1000m付近で6頭が一団の馬群となり、最終コーナーへ向かっての下り坂でチンギスシークレットが動いて徐々に進出を開始。直線を向いたところでサトノダイヤモンドがサトノノブレスに外から並び掛け、後続もさらに外に持ち出して日本の2頭に迫る。
サトノダイヤモンドはルメール騎手が追い出しを我慢して残り350mでスパートをしたが、いつものような鋭い反応は見られない。先頭に立ったところで外から伸びるチンギスシークレット、クロスオブスターズに交わされ、勝ったチンギスシークレットから3馬身1/2差の4着。サトノノブレスも直線でしぶとさを発揮したが、最下位の6着でレースを終えた。
優勝したチンギスシークレットは昨年10月22日に重馬場で行われたG3伊セントレジャー(芝2800m)で重賞初制覇を果たし、今年5月7日のG2ゲルリンク賞(芝2400m)を連勝。続くG2バーデン経済大賞は5着に敗れたが、その後に7月1日のG2ハンザ大賞(芝2400m)を制し、前走8月13日のG1ベルリン大賞(芝2400m)でG1初勝利を挙げていた。G2ハンザ大賞も不良馬場で勝利していたように、重賞での重馬場経験がなかったサトノダイヤモンドとは、馬場の巧拙の差が出た格好となった。
管理するM.クルーク調教師はG1独ダービーで今年のヴィントシュトース、2014年のシーザムーンと、ここ5年で2度優勝しているドイツのトップトレーナーの一人。本来であればドイツ調教馬のチャンピオン決定戦である9月3日のG1バーデン大賞(芝2400m)に向かうのが一般的なローテーションだが、凱旋門賞に登録のあるチンギスシークレットに本番と同じ舞台を経験させようという陣営の考えが功を奏した結果となった。
サトノダイヤモンドは欧州の重馬場に戸惑ったことが主な敗因だろうが、前走4月30日の天皇賞(春)(キタサンブラックから0.2秒差の3着)の影響もまだわずかながらあったのかも知れない。ディープインパクトのレコードタイムを1秒近く更新する3分12秒5で走破したキタサンブラックと同レース2着のシュヴァルグランが、続くG1宝塚記念で9着と8着に崩れていることが、天皇賞(春)が相当にタフなレースであったことを物語っている。
サトノダイヤモンドとサトノノブレスを管理する池江泰寿調教師にとっては、厳しい結果を突きつけられた格好だが、ここから凱旋門賞までの3週間で立て直し、過去にオルフェーヴルで凱旋門賞2年連続で2着に敗れた雪辱を果たしてくれることを期待したい。
最後にフォワ賞と同日にシャンティイ競馬場で行われた2つのG1凱旋門賞の前哨戦、G1ヴェルメイユ賞とG2ニエル賞についても簡単に触れておこう。今年のG1凱旋門賞路線は、英国の3歳牝馬エネイブルがG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスSやイギリス、アイルランドのオークスダブル制覇などここまでG1を4連勝して抜けた存在となっており、前哨戦でこれを脅かす馬が出てくるかが見どころの1つだった。
しかし、牝馬によるヴェルメイユ賞に優勝したバティールは、レース後に陣営から凱旋門賞には向かわない意向が伝えられ、3歳馬によるニエル賞を快勝したクラックスマンも、エネイブルを擁するJ.ゴスデン厩舎の所属であることから、エネイブルにアクシデントがない限り凱旋門賞は回避する見込み。前哨戦が終了した時点でのブックメーカーによる凱旋門賞の前売りオッズは、単勝2倍前後の圧倒的な1番人気になっているエネイブルの一強状態という図式に変わりはなく、このまま本番を迎えることになりそうだ。
(サラブレッドインフォメーションシステム 伊藤 雅)