【ブリーダーズC】川田騎手が挑む父と夢見た憧れの舞台「勝つために行く」

2021年11月03日 12:00

<Big Challenge 日本馬初のBC制覇へ(1)>

 幼い頃から夢見たビッグチャレンジだ。18年目の川田将雅騎手(36)がBC初挑戦で日本人初Vを狙う。日本馬7頭が出走する今週末のBC競走(5、6日=デルマー)で国内外G1・2勝のラヴズオンリーユー(牝5、矢作)と挑むフィリー&メアターフ(G1、芝2200メートル、6日)をはじめ計3鞍に騎乗する。連載「Big Challenge」で米国競馬の祭典に挑む日本人ホースマンの思いに迫る。

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 その祭典のすばらしさは、父が録画したビデオテープが教えてくれた。幼き日に親子で見つめたブラウン管の映像は、今なお川田騎手の目に焼きついている。

 「僕の中で凱旋門賞と並んで特別なレースです。アメリカで一番の祭典ですから。幼い頃から父(佐賀の元騎手の孝好調教師)が録りためた『世界の競馬』(NHK BS1で放映された番組)を見ていました。ヨーロッパなら凱旋門賞、アメリカならBCが1年の総決算。30年ぐらい前に物心ついた時から2つのレースは認知していました」

 日本人のBC競走騎乗は過去3人だけで、現役では武豊騎手1人しかいない。現在はコロナ禍で帰国後に最短10日間の隔離を求められる。トップ騎手にとってG1シーズン中の遠征は簡単なことではない。

 「僕のジョッキー人生の中でBCにチャレンジする可能性が出たのは初めてで、その機会を逃したくないというのが一番でした。行くと決まった時点では(帰国後に)2週間の隔離がありました。それでも行かせていただきたいという僕のわがままで、ご迷惑をおかけする方々へは申し訳ないです。それだけの重たいものだととらえています」

 ラヴズオンリーユーの手綱を託されたのは今年からだ。6連敗の不振を脱する切り札としての起用。3週連続で調教に乗り、ハミ交換を進言するなど厩舎と一丸で復調に努め、初戦の京都記念で復活Vへ導いた。

 「立ち直って安定して走ってくれているのはありがたいです。海外でG1も勝ってポテンシャルは間違いない。もちろんチャレンジしに行くというのはありますが、勝つために行くので。参加することに意味があるというものではなく、真剣に勝つためにみんなで向かっていくわけですから」

 目指すは人馬とも日本初となる勝利だけだ。かつて父と夢見た憧れの舞台。アメリカンドリームをかなえる時が来た。【太田尚樹】

出典:日刊スポーツ