【こんな人】“緊張しない男”川田将雅を生んだ初めての凱旋門賞の経験
2021年11月08日 17:55
<BCフィリー&メアターフ>◇6日(日本時間7日)=米デルマー◇G1◇芝2200メートル◇出走12頭
米国競馬の祭典で、歴史が動いた。ディープインパクト産駒ラヴズオンリーユー(牝5、矢作)と川田将雅騎手(36)が日本初の快挙を達成した。好位からゴール前で抜け出して殊勲のV。84年創設のブリーダーズC(BC)で日本人騎手、日本調教馬の勝利はいずれも史上初。3レース後の「砂の女王決定戦」BCディスタフ(ダート1800メートル)では同じ矢作厩舎のマルシュロレーヌ(牝5)が金星を挙げ、日本馬が2勝と快挙が拡大した。
日本人騎手初のBC制覇を成し遂げた川田将雅は、いまや「緊張しない男」だ。7年前に究極の重圧を乗り越えたからこそ今の姿がある。
初の海外G1騎乗が14年凱旋門賞。幼い頃から憧れた夢のビッグレースに、感情を表に出さない男が「人生で一番緊張した」という。本番を待つロンシャンのジョッキールームで心臓が暴れる。全身が握りつぶされるような圧迫感。どうすればいい? 出した答えは、あえて隠さずさらけ出すことだった。
隣にいた横山典騎手へ「すごく緊張してます」と打ち明けた。同じく初騎乗のベテランから返ってきた言葉は「当たり前だ。凱旋門賞だから」。そのひとことで吹っ切れた。モニターでオッズを見ると、ハープスターは1番人気(最終オッズは4番人気)。むしろ快感すら覚えたという。
「(6着で)結果は出せませんでしたが、緊張せずにすべてを終えることができました。『もうこの先、緊張することはない』と思えました」
あの経験を糧にできたから「僕の中で凱旋門賞と並んで特別なレース」というBCでも浮足立たずに挑めた。もう1つの目標に掲げる世界最高峰レースは日本競馬の悲願でもある。ぜひ夢をかなえてほしい。【太田尚樹】