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【香港国際競走回顧】香港勢が全レース制覇! 日本馬は3レースで2着と見せ場作るも…

2018年12月10日 17:00

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 香港には珍しい肌寒さを感じる曇天の下で行われた香港国際競走は地元香港勢が4つのレースのすべてに優勝。史上初の4競走完全制覇で幕を閉じた。

 9頭が参戦した日本馬は牝馬が随所で見せ場をつくったが、香港国際競走ではなぜか日本牝馬に優勝なし!というジンクスを破ることは叶わず。リスグラシューが香港ヴァーズ2着、これが引退レースだったヴィブロスが香港マイルで2着、ディアドラが香港カップ2着に頑張ったものの、2011年から昨年まで続いていた日本調教馬の海外G1勝利が見られない一年となった。

 お家芸の香港スプリントとワールドベストレースホースランキングの芝マイル部門でトップに立つビューティージェネレーションが立ちはだかる香港マイルの優勝は、戦前からある程度予想されたことだが、2000mの香港カップと、これまでは欧州馬、日本馬に馬場を貸す格好になっていた2400mの香港ヴァーズの制覇は香港ジョッキークラブが、ここ数年で進めてきた中長距離の分野でも世界に対抗できるタレントを育てようという戦略が実を結びつきつつあることを示している。

 今シーズンも断然のトップを突っ走るZ.パートン騎手は香港ヴァーズと香港マイルを制して、現在は欧州に戻って騎乗を続けているG.モッセ騎手と並ぶ香港国際競走で最多の8勝目を記録した。地元はえぬきのF.ロー調教師は香港スプリントをミスタースタニングで制して香港国際競走で嬉しい初優勝を飾ると、その約2時間後の香港カップを伏兵視されていたグロリアスフォーエバーで制し、2度目の表彰台に立った。ロー調教師の活躍は香港競馬サークル、特に地元馬主の間からじわじわと沸き上がっている「外国人(調教師、騎手)支配からの脱却」の先駆けと見ることも出来そうだ。

 芝2400mの香港ヴァーズを勝ったのはJRAで単勝13倍のエグザルタントだった。移籍前はG12000ギニーで3着した地力ある馬。3月の香港ダービー(2000m)では勝ったピンハイスターとともに最後方から追い上げて3着と見せ場を作り、その後も5月のG1チャンピオンズ&チャターカップ(2400m)でパキスタンスターに次ぐ2着となり、素質の片鱗を窺わせて現地では2番人気に推されていた。見逃せないのは最後方待機のイメージの強かった同馬を思い切って先行させた鞍上のZ.パートン騎手の感性である。パートン騎手による2度のG3勝ちでは早めに先頭に立って押し切ったが、大一番で逃げるクロコスミア(10)をがっちりマークした2番手の競馬にスタンドは息を飲んだ。直線で外から並びかけるリスグラシューをクビ差退けたのは「人馬一体」のたまものだろう。最後に内にもたれてしまったリスグラシューは直線で他馬と接触する不利がなければと悔やまれる。1番人気のヴァルトガイストは9番手からのびあぐねて5着に終わった。シーズンオフを迎えた欧州馬に見られるポカだったのかもしれない。

 地元勢の有利がささやかれた香港スプリントは香港の短距離路線の層の厚さを物語る結果となった。人気はトライアルを逃げ切って通算成績を109勝、21回としたホットキングプローンが集めたが、C.ルメール騎手のアイヴィクトリーが早めに接近したことで最後は脚が止まって9着。3番手を進んだミスタースタニングはK.ティータン騎手がゴーサインを出すと弾けるように伸びて優勝。連覇を達成した。今シーズンは2戦して3着、2着と足踏みを続けたミスタースタニングだったが、ここを目標にきっちりと仕上げたF.ロー調教師の手腕が光った。勝ち馬をマークしたディービーピンは昨年に続く2着。3着ビートザクロックは、これで17戦連続で3着以内を記録したが、期待された「堅実派」の殻を破ることは出来なかった。日本の春秋スプリントG1を制して香港に乗り込んだファインニードルはゲート内で興奮して出走除外となったピンウースパークのあおりをもろに受けてしまった。「ゲートで待たされて馬が気持ちを失ってしまった」という川田騎手のコメント通り、不完全燃焼のまま8着で競馬を終えた。

 香港マイルはJRAで単勝1.4倍、現地で1.5倍という圧倒的な支持を集めたビューティージェネレーションが期待通りの走りを披露。香港スプリントのミスタースタニングと同じく連覇を達成した。W.ビュイック騎手が騎乗したヴィブロスは9番手から直線目立つ脚色で2着に頑張ったが、その3馬身先に「世界一のマイラーがいた」(ビュイック騎手)。ペルシアンナイトはこの馬場が合わなかったのか末脚冴えず5着。モズアスコットはスタートで躓いたことが影響したか、安田記念で見せた鬼脚が影を潜めて7着で入線した。「香港のウィンクス」と呼ばれるビューティージェネレーションは来年のドバイターフ(メイダン競馬場、芝1800m)への参戦も噂されており、舞台と距離を変えて再度日本馬と対決する可能性が高い。

 日本馬にとっては最後の砦となった香港カップは1番枠を引いてハナを主張した地元のグロリアスフォーエバーが一度も先頭を譲ることのないままゴールイン。昨年の覇者タイムワープに続く兄弟制覇を達成した。日本、香港の双方で1番人気になり、優勝候補の最右翼となったディアドラは5番手追走から直線で長く良い脚を使ったが、1馬身遅れの2着で入線。橋田調教師は「馬場が堅かった。ペースが落ち着いたことが差し切れなかった原因」とレースを振り返った。タイムワープは7番枠から2番手を進んで3着で入線。今回は弟に完敗した。サングレーザーは4番手からポジションを挙げることなく4着で入線。香港で5度目の挑戦となったステファノスは出遅れて思うような競馬が出来ないまま最下位の9着でレースを終えた。

(サラブレッドインフォメーションシステム 奥野 庸介)

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