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【ドバイワールドカップデー回顧】日本馬は馬券発売4レース全てで2着する健闘!

2021年03月28日 18:05

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 現地時間27日、アラブ首長国連邦、ドバイにあるメイダン競馬場でドバイワールドカップデーが開催された。新型コロナウィルス騒動で昨年は中止となったが、主催者発表はあくまでも1年間の延期。そのため、昨年予定していた“第25回記念"という看板を継承して2年ぶりの開催となった。

 しかし、残念ながら遠征馬は減少。メインのドバイWCこそ賞金は据え置きだったが、他は総計で25%ほど減額。加えてコロナ騒動が収束をみていない事がその理由と思われた。遠征馬が減った事に伴い、総体的なレベルは例年に比べ低調と思える中、日本からは12頭が駆けつけた。

 ドバイゴールデンシャヒーン(G1、ダート1200m)にはコパノキッキング(せん6歳、栗東・村山明厩舎)、ジャスティン(牡5歳、栗東・矢作芳人厩舎)、マテラスカイ(牡7歳、栗東・森秀行厩舎)、レッドルゼル(牡5歳、栗東・安田隆行厩舎)と4頭もの日本馬が出走した。

 大外から好スタートを決めてハナに立ったのがアメリカのゼンデン。結果、最後まで他馬に先頭を譲る事なく、この日の速い時計の出るダートを味方に逃げ切った。勝ち時計の1分09秒01は従来のレコードを更新するニューレコード。残念だったのはゼンデンがゴール入線直後に故障を発症した事。日本勢はレッドルゼルが追い上げて2着に健闘した。

 ドバイターフ(G1、芝1800m)にはヴァンドギャルド(牡5歳、栗東・藤原英昭厩舎)が出走。日本馬の得意なカテゴリーで期待された。

 レーティング的には抜けた存在だったのがロードノース。イギリス、ロイヤルアスコット開催のメインでもあるプリンスオブウェールズS(G1)でアデイブやバーニーロイ、ジャパンといった好メンバー相手にぶっち切りの優勝をした実績馬。その後、連敗を喫していたが、正直戦ってきた相手が他の出走馬とは格が違う感があり、ここに入れば上位と思わせた。

 また、前哨戦のジェベルハッタ(G1)を制したロードグリッターズは8歳といえ侮れない存在となった。一昨年のこのレースではアーモンドアイ、ヴィブロスに続く3着。直後にロイヤルアスコット開催のクイーンアンS(G1)を優勝。今年もここに照準を合わせるように成績を上げてきた。

 レースはヴァンドギャルドが中団のイン、ロードノースは後方3番手の外、更に後ろのインにロードグリッターズという馬順。直線へ向くと前を行く2頭の間を割るようにヴァンドギャルドが抜けてくるかというシーンを演出したが、次の瞬間には後方から伸びてきたロードノースが一気に突き抜けた。後は後続を放す一方。格の違う馬が格の違う競馬ぶりで順当に走った結果で圧勝。うまく経済コースを走ったヴァンドギャルドが2着。中距離路線における日本馬の強さを改めて感じさせる結果となった。ロードグリッターズは追い込み切れず6着に終わっている。勝ち時計は1分46秒46。

ドバイWCはミスティックガイドが完勝、チュウワウィザードが2着に入った。(Photo by Getty Images)

 ドバイシーマクラシック(G1、芝2410m)はクロノジェネシス(牝5歳、栗東・斉藤崇史厩舎)とラヴズオンリーユー(牝5歳、栗東・矢作芳人厩舎)の2頭の日本を代表する牝馬が出走。クロノジェネシスは昨年の春秋グランプリを制した事もあり、圧倒的な1番人気に支持された。

 外国勢で有力とされたのはモーグル。通常ならドバイへ大挙して出走馬を送り込むアイルランドの伯楽エイダン・オブライエン調教師の管理馬。今年はコロナ禍という事もあり、珍しくこの1頭だけで乗り込んだ。昨秋にはニエル賞代わりに開催されたパリ大賞(G1)を楽勝。破った相手が直後の凱旋門賞(G1)で2、4着と好走した。左回りの実績に劣る点だけが気掛かりだったが、ヨーロッパ勢の強いこのカテゴリーだけにたとえクロノジェネシスとて楽観視は出来ないと思えた。

 また、ダートのサウジCを勝利したミシュリフがドバイWCではなく、芝のこちらへ矛先を向けて来た。自身初となる距離を克服出来るかが課題となった。

 レースは予想通りアメリカの逃げ馬チャンネルメイカーが引っ張る形。北村友一騎手のクロノジェネシスは5番手ですぐ後ろのインにモーグル。その後ろの外にO.マーフィー騎手のラヴズオンリーユーで最後方にミシュリフという馬順で流れた。直線に向くと一杯になったチャンネルメイカーをかわしてウォルトンストリートが先頭に立とうとするが、その外から日本の2頭、ラヴズオンリーユーとクロノジェネシスが並びかけるように伸びてきた。

 しかし、更にその外から上がって来たのが序盤は最後方に控えたミシュリフ。最後はぶつかり合う日本馬2頭をミシュリフがまとめてかわしたところがゴールだった。勝ち時計の2分26秒65はレコード。2着がクロノジェネシスで3着はラヴズオンリーユー。モーグルは休み明けと実績のない左回りのせいか7着に敗れた。

 メインのドバイWC(G1、ダート2000m)にはチュウワウィザード(牡6歳、栗東・大久保龍志厩舎)が出走した。

 スタート前にグレイトスコット、ゲートイン後にはミリタリーローがそれぞれ放馬し、除外になるアクシデントがあり、12頭立てのスタートが切られた。戸崎圭太騎手に操られたチュウワウィザードは4番手のインを追走。3コーナー過ぎには手応えが怪しくなるシーンがあったが、そこからしぶとく伸びた。直線に向くとミスティックガイドが抜け出し、これには及ばなかったものの2着と大健闘。日本調教馬として、このレースでは2011年に1、2着したヴィクトワールピサ、トランセンド以来の連対、ダートで行われたドバイWCでは2001年のトゥザヴィクトリー以来となる2着だった。

 このレースで例年、活躍するアメリカのG1馬が今年は皆無で混戦模様だったが終わってみればアメリカのG1戦線で好走歴のある馬がしっかりと勝利。勝ち時計は2分01秒61だった。

 他のサポートレースを含め、12頭が挑戦した日本馬は勝つ事が出来なかったが、馬券を発売した4レース全てで2着するなど健闘してみせた。

取材・文:平松さとし