【凱旋門賞回顧】ドイツ調教馬が10年ぶりの戴冠、日本勢は見せ場作るも直線で力尽きる
2021年10月05日 13:25
現地時間10月3日、フランスのパリロンシャン競馬場で凱旋門賞(G1)が行われ、ドイツ馬トルカータータッソ(牡4歳、M.ヴァイス厩舎)が優勝した。
前日から当日の昼過ぎまで降った雨で馬場は重。各馬が蹴り上げた芝が泥の塊のようになって飛ぶ中でのレースが続いた。
前日までの仮柵を外して行われた凱旋門賞は、当初16頭立てになるかと思われたが、道悪を嫌ってティオーナが回避。また、前日になって熱発のためラブが出走を取り消し。14頭によって第100回のメモリアルとなる今年の凱旋門賞の覇は競われた。
14頭の中で日本馬は2頭。1頭はクロノジェネシス(牝5歳、栗東・斉藤崇史厩舎)。宝塚記念連覇に有馬記念勝ちなどG1を4勝。鞍上にはO.マーフィー騎手をイギリスから呼んだ。前哨戦を使わず宝塚記念以来の出走。「ある程度日本で仕上げてから輸送しました」と斉藤調教師が言うように9日前にようやくという感じでの現地入り。追い切りだけのためにマーフィー騎手が駆けつけた後、臨んだ。
もう1頭はディープボンド(牡4歳、栗東・大久保龍志厩舎)。こちらは自身初のG1制覇を目指し現地入り。同じ舞台で行われる前哨戦のフォワ賞(G2)を逃げ切ってここに挑む。「前走後の回復も早く、良いデキで行けそうです」と大久保調教師。
そしてもう1頭、日本馬ではないが日本のトップジョッキーである武豊騎手も参戦。騎乗するのはアイルランドのナンバー1トレーナーであるエイダン・オブライエン調教師が管理するブルーム(牡5歳)。キーファーズでお馴染みの松島正昭オーナーが同馬の共同馬主となった事で最高の舞台での夢のタッグが実現した。
各馬探り合いといった様相の序盤から、結局ハナを奪ったのは武豊騎手のブルーム。「行けたら行っても良いと言われたので……」と同騎手。
13頭が内で固まって進む中、1頭だけ離れて外を走ったのがクロノジェネシス。「オイシンなりに何か考えがあるのだろうけど、こういう乗り方もあるんだ……」という思いで、斉藤調教師はその走りを見ていた。一方、ディープボンドは中団を追走した。
3コーナーの上り坂でアダイヤーが掛かり気味に進出するとブルームをかわして先頭に。同じ頃、馬群に取りついて来たクロノジェネシスもブルームをパスする勢い。その後ろ、6番手からトルカータータッソ、ハリケーンレーン、そして内にタルナワがいて、外にディープボンドという隊列でフォルスストレートに向いた。
そのままの隊列で直線へ向くがディープボンドは手応えが悪いのか鞍上のM.バルザローナ騎手の手が盛んに動く。これにより一瞬、先団に進出したもののそこで一杯に。最後は鞍上が無理をせず最下位でのゴールとなり、バルザローナ騎手は次のように語った。
「全くグリップが利かない感じで進んで行けませんでした。雨でぬかるんだ馬場が合わなかったのかと思います」
一方、2、3番手で直線を向いたクロノジェネシスとブルームもそこから伸びを欠いた。先に脱落したブルームの武豊騎手が「好い競馬は出来ました。ただ相手も強く、最後は残っていませんでした」と独特の表現で言えば、クロノジェネシスのマーフィー騎手は「リラックスして良い状態だったけど、馬場が合いませんでした」と語った。
日本勢が馬群に沈む中、優勝争いをしたのは3頭。粘るアダイヤーをタルナワとハリケーンレーンがかわす。ここで一騎討ちかと思われたが、次の刹那大外から伸びて来たドイツ調教馬トルカータータッソがまとめてかわして先頭へ。最後は突き抜けてのゴールとなった。
騎乗したR.ピーチュレク騎手は初めての戴冠に涙を浮かべ「夢がかないました」と言った。ちなみに彼が使用していた鞍は日本のファンにもお馴染みのF.ミナリク元騎手のモノ。落馬による大怪我が元で引退を余儀なくされた彼とは懇意にしているということで、譲り受けた鞍だったと言う。
勝ち時計は2分37秒62でドイツ馬の優勝は2011年のデインドリーム以来。クロノジェネシスは7着でブルームが11着。ディープボンドは14着だった。
取材・文:平松さとし