【ケンタッキーダービー回顧】「押し切れるかと思った」直線先頭ダノンバーボン、快挙を夢見た5着惜敗
2026年05月04日 12:00
米国の3歳最強馬決定戦でもある三冠レースの初戦、第152回ケンタッキーダービーがチャーチルダウンズ競馬場2000mダートで行われ、日本から参戦した西村淳也騎手騎乗のダノンバーボン(牡3=栗東・池添学厩舎)は直線半ばまで先頭に立つ奮闘で5着善戦。また、坂井瑠星騎手騎乗のワンダーディーン(牡3=栗東・高柳大輔厩舎)は8着だった。
昨年のBCクラシックを制したフォーエバーヤングに続き、今度は米国3歳最高峰の一戦で日本馬が新たな歴史の扉を開く――そんなシーンを夢見た日本の競馬ファンも多かっただろう。それくらい、ダノンバーボンは見せ場十分の走りだった。
「本当に悔しいです。手応え良く直線を迎えられましたし、押し切れるかなと思ったんですけど……バーボンはよく能力を発揮してくれました」
レース後のインタビューで西村騎手は悔しさをにじませた。発馬直後にすぐ外のソーハッピーに押し込められながらもポジションをしっかりと確保したダノンバーボン。1コーナーではUAEのシックススピードを前に行かせて、自身はインの2番手から追走した。
「1コーナーでは逃げ馬の後ろを取れて、ペースも落ちていい感じで息も入ってくれました。向こう正面でもスムーズに2番手に出せて、いいリズムで走れました」
西村騎手が振り返ると、池添調教師もこのポジションは「プラン通り」と語った絶好位だ。そして、抜群の手応えのまま4コーナー手前で逃げ馬をかわしに行くと、直線入り口では堂々先頭へ。そこからさらに後続を突き放していくダノンバーボンの姿に、日本の競馬ファンは早朝から大興奮だったに違いない。
だが、これが米国競馬の“顔”とも言えるケンタッキーダービーの壁の高さか。ゴールまで200m、いや100mほどまで先頭を死守していたものの、後方で脚をタメていたJRA発売分のオッズ1番人気レネゲイド(牡3=T.プレッチャー厩舎)、さらに大外から11番人気の伏兵ゴールデンテンポ(牡3=C.ドゥヴォー厩舎)の強襲に遭って力尽き、ダノンバーボンは1着からおよそ3馬身差の5着に惜敗した。
「関係者がいっぱい努力してくれて、僕も一生懸命乗りましたし、バーボンも一生懸命頑張ってくれました。結果だけが悔しいですけど、またこの舞台に戻ってきたいです」
西村騎手は何度も「悔しい」と繰り返した。それだけ鞍上の感触としても大金星をはっきりと意識できる手応えだったのだろう。ただ、結果は本当に残念だったが、日本の3歳ダート馬の実力を全米に広くアピールした走りだったことには間違いない。池添調教師も「まだ3歳ですし、十分にアメリカでも通用したと思っています。今後まだまだ成長する余地が十分ある馬なので頑張ってほしいと思っています」と話しており、さらにパワーアップして再び米国競馬にチャレンジする日が来ることを期待したい。
一方、UAEダービー1着から参戦したワンダーディーンは道中、ダノンバーボンを前に見る形の4番手グループから進めたものの、直線で詰め寄ることはできず8着に敗れた。坂井騎手によれば「1コーナーから2コーナーでかなり接触もあって、なかなか脚がたまり切らなかったところもありました」と、かなり厳しい流れになってしまったようだが、それでも最後はバッタリと止まったわけではない。そして、サウジ、ドバイ、そしてアメリカと遠征を重ねる中で、ジョッキー、高柳調教師がともに高く評価したのが精神面の向上だ。この馬もこれからの成長が楽しみな好素材であり、父ディーマジェスティ、母の父ワンダーアキュートという通好みの血統背景も合わせて、今後の日本ダート競馬に欠かせない存在になってほしいものだ。
なお、第152代ケンタッキーダービー馬に輝き、赤い薔薇で彩られた優勝レイを手にしたのはゴールデンテンポ。ゲートは出負け気味にスタートし、3コーナーでは“ポツン”最後方の追走ながら最後の直線で大外から豪快に伸びると、中団の後ろから馬群を縫って差し込んできた1番人気レネゲイドとの追い比べをクビ差制した。
ゴールデンテンポはこれで通算5戦3勝。デビューから2連勝で年明けのG3ルコントステークス勝利後、ここ2戦はG2リズンスターステークス、G2ルイジアナダービーと続けて3着だったが、大一番で末脚が爆発した。また、鞍上のホセ・オルティス騎手はケンタッキーダービー初勝利となり、2着レネゲイドの鞍上は1つ年上の兄であるアイラッド・オルティスJr.騎手。兄弟騎手によるワンツー決着となった。さらに、ゴールデンテンポを管理するシェリー・ドゥヴォー調教師も同レース初勝利であり、女性調教師による制覇はケンタッキーダービー史上初めての快挙となった。
また、この日は1400mダートのG1チャーチルダウンズステークスが行われ、日本から参戦した坂井騎手騎乗のテーオーエルビス(牡4=栗東・高柳大輔厩舎)が優勝。日本調教馬による米国のダートG1レース勝利はマルシュロレーヌ(2021年BCディスタフ)、フォーエバーヤング(25年BCクラシック)に続く3頭目の快挙となった。しかも、ハイレベルな米国のダート短距離で、2着馬に3馬身1/4という決定的な着差をつけての圧勝だ。現地に相当なサプライズをもたらしたに違いない。今後について高柳調教師は「海外遠征を含めて色々と考えていきたい」とコメントしており、テーオーエルビスが再び米国に戻ってくる可能性は十分高いだろう。
見せ場たっぷりだったダノンバーボンの奮戦に、テーオーエルビスの圧倒的なスピード――競馬ファンのみならず、全米のスポーツファンがチャーチルダウンズに注目したこの日、日本競馬はフォーエバーヤングだけではない日の丸ダート馬の質の高さを十分に示したのではないだろうか。
文:森永淳洋
