【海外競馬 ニュースまとめ】2018年6月中旬~7月

2018年08月10日 18:00

●香港競馬、馬券売り上げは史上最高

 香港の2017/18年シーズンが7月15日に閉幕。馬券売り上げは前シーズン比5.8%増の約1242億8200万香港ドル(約1兆7800億円)で、香港史上最高記録となった。

 香港の馬券売り上げは、2016/17年シーズンも前シーズン比10.7%増の約1174億5600万香港ドルで当時の香港史上最高の記録をマークしており、これで2シーズン続けての記録更新となった。

 1シーズンの開催日数が、2016/17年シーズンに83日間から88日間へと増えた影響も大きいが、目を引くのは、コミングリング(香港のレースを香港以外の国で、香港と同じ賭事プールで発売する)売り上げの急激な伸び。なんと前シーズン比154.8%増の約165億7700万香港ドル(約2380億円)となり、馬券売り上げ全体の約13.3%を占めるまでになった。

 実は香港内における馬券売り上げはわずかに減少しているのだが、香港内に留まらず、コミングリングを通じてその外にまで市場を広げる香港ジョッキークラブの方針が2シーズン続けてのレコードという結果を生んだ。

●日本のジェニアルが仏G3を制覇

 7月22日にフランスのメゾンラフィット競馬場で行われたG3メシドール賞(3歳上、芝1600m・直線)は、日本から参戦したジェニアル(牡4歳、父ディープインパクト、栗東・松永幹夫厩舎)が武豊騎手を背に好スタートから先手を奪うと、そのまま押し切って優勝。重賞初制覇を海外で果たした。

 ジェニアルは、父がディープインパクト、母がG1仏オークスやG1サンクルー大賞などG1・3勝を挙げたフランスの名牝サラフィナという超がつく良血馬ではあるが、日本では出走時点で500万下に在籍していた条件馬。

 日本の馬もここまで強くなったのかと感慨深いものがあるが、そもそも挑戦しなければ、今回の重賞制覇はなかったわけで、その潜在能力の高さを信じ、適性の高そうなレースを選んで、一気に重賞制覇にまでつなげた陣営の慧眼には感服するばかり。ジェニアルにとっては、将来の種牡馬入りへの道が大きく開けたという意味でも大きな勝利になったし、日本の条件馬がアウェーの重賞を制したという事実は、日本競馬のレベルの高さをアピールするに十分過ぎるもの。日本馬の販路拡大という意味でも価値ある優勝となったことは間違いない。

 なお、今回のレースは最終的に4頭立てになったが、2着に下したジミートゥータイムズはG2ミュゲ賞など重賞3勝を挙げる実力馬で、4着のターリーフは昨年のこのレースを含む重賞5勝馬かつ昨年のG1ムーランドロンシャン賞でも2着に入ったほどの馬。決して相手に恵まれたわけではないことは強調しておきたい。

●米三冠馬ジャスティファイが引退

 今年の米三冠を制したジャスティファイ(牡3歳、父スキャットダディ、B.バファート厩舎)の引退が7月25日に陣営から発表された。ジャスティファイは、6月9日のベルモントSの後、左前肢の球節を負傷。最大目標としていた11月のG1BCクラシックを含む秋のキャンペーンに間に合わないことから引退が決まった。

 すでにアメリカ競馬において最高の価値を持つ米三冠を達成し、残すビッグタイトルは“グランドスラム”がかかるG1BCクラシックだけという状況だったジャスティファイ。

 米三冠を制したスーパーホースとして、また早世した父スキャットダディの後継種牡馬として生産界から大きな期待が寄せられていることを考えれば、陣営が今年のBCクラシックに出走できなくなった時点で、来年の現役続行というリスクを冒さずに引退を決断したのは当然のことではあると思うが、それにしても今年2月18日のデビューから半年足らずで引退はさすがに早すぎる。残念としか言いようがない。

 ジャスティファイについては、たとえばロンジンワールドベストレースホースランキングにおけるベルモントS後の評価は124ポンド(Iカテゴリ)となっており、3年前の米三冠馬アメリカンファラオの同時期における128ポンド(Lカテゴリ)よりも低い評価になっている。

 確かにベルモントSにおけるアメリカンファラオの走りは非常に強烈で、このレースだけを切り取ればアメリカンファラオの方が上という評価はうなずけるものではあるのだが、ジャスティファイのG1サンタアニタダービー(9ハロン)の勝ちっぷりをみると(ジャスティファイのG1ケンタッキーダービーG1プリークネスSは道悪で評価が難しい)、少なくとも中距離におけるスピード能力ではアメリカンファラオに勝るとも劣らないものがあったのではないかとも感じている(最終的にアメリカンファラオはIカテゴリで134ポンドを獲得)。はたしてジャスティファイはどれくらい強かったのか。それを確かめる意味でも、もう少しその走りを見てみたかった。

文:秋山 響(TPC)