競馬場があるニューマーケットはロンドンの北北東約100km、名門大学で有名なケンブリッジの近郊にある。英国はもとより世界のサラブレッド生産の中心地として名を馳せ、牧場や競馬場の他にも調教場や厩舎、市場(セリ)など、近代競馬に不可欠なあらゆる施設を街に集約。「競馬の故郷(=Home of Racing)」を自認し、その面目を躍如している。
ニューマーケットにおける競馬の歴史は17世紀初頭に遡り、1619年3月19日にジェームズ1世が滞在中に観戦した記録が最古のものとして伝えられている。次男で後継のチャールズ1世も競馬の愛好家でしばしばニューマーケットを訪れたが、ピューリタン革命により体制が混乱。1660年の王政復古によりチャールズ2世が即位すると、その治世下で発展を遂げていく。1666年に約6000mの周回コースで争われたニューマーケットタウンプレートは現在も同じ条件で施行されているなど、この時期を境に近代競馬の基礎が築かれていくことになった。
19世紀に入ると牡馬クラシック初戦の2000ギニー(1809年)、牝馬の1000ギニー(1814年)、さらに短距離のジュライC(1876年)といったニューマーケット競馬場の代名詞ともいうべき大レースが創設された。