見どころ
6連勝中のポストポンドが中心、マカヒキは死角を探り当てられるか
日本馬悲願の凱旋門賞制覇へ、マカヒキの挑戦がいよいよ週末に迫ってきた。日本の競馬ファンにとっての見どころといえば、この一点に尽きる訳だが、そこは世界最高峰の一戦。どの馬が凱歌をあげることになるにせよ、見逃せないレースであることは間違いない。
GI4勝を含む6連勝中のポストポンドが主役であることは衆目の一致するところ。馬場の巧拙も展開も問わず、地力勝負でライバルをねじ伏せる取り口に隙はない。死角らしい死角が見当たらない、戦績通りに不動の本命と評していいだろう。今回もまずは中団より前の位置に構え、先頭を射程圏に入れながら仕掛けのタイミングを計る形になるか。
今年はロンシャン競馬場ではなくシャンティイ競馬場での開催だが、レースに向けて馬場の内側10mほどを仮柵で保護し、当日にグリーンベルトが出現するメンテナンス態勢は例年通り。ならば、中団より前で直線を迎えるべき凱旋門賞の勝ちパターンにも大きな変化はないはず。自ずと、ポストポンドの前後で流れに乗ることが勝利への近道となる。
有力馬の中でポストポンドの最も近くにつけるのは英愛ダービー馬のハーザンドか。主役の前で待ち構える格好もあり得る。末脚を長く使う点はポストポンドにも通じるものがあり、本命馬の動きに合わせて自身の持ち味を生かせるのであれば願ったり叶ったり。前走の愛チャンピオンSで外傷を負い、中間は決して順調ではなかったものの、陣営が強気な姿勢を崩していない点は不気味この上ない。ただ、道悪希望を公言しており、当日の馬場状態が気になるところ。
マカヒキとファウンドはポストポンドの後ろから末脚の切れ味に賭ける。マカヒキはデビューからしばらくは行き脚がつかず、後方に収まることが多かったが、ダービーでは好枠を利して中団から抜け出した。日本ほど序盤の流れが速くならない欧州のレースであれば、中団辺りの位置取りは必須。ダービーと同じレースをできれば理想的だ。
昨年は出遅れて不本意な結果に終わったファウンドだが、中団より前からでも勝負できる馬。いつも何かに負けてしまうものの、結果的にマークする相手が見込み違いだったケースもある。目標をゴールデンホーン1頭に絞った昨年のBCターフでは見事な差し切りを演じており、ポストポンドが勝ち負けになるなら待望の勝利を手にしても不思議はない。今年のキングジョージを制した僚馬ハイランドリールに前を任せる展開が、前走の愛チャンピオンSで結果につながっているのも心強い。
そのハイランドリールはドバイシーマクラシックと英インターナショナルSでポストポンドに完敗しており、態勢逆転までは難しそう。後ろで有力馬がけん制し合った場合に、あるいは勝機を得るか。もう1頭の僚馬オーダーオブセントジョージはスタミナ自慢で、もつれる展開で出番を待つ。名門オブライエン厩舎は異なるタイプの3頭出しで、あらゆる流れに対応する態勢を整えてきた。
注目度は今ひとつなものの、データから見逃せないのがレフトハンド。前走ヴェルメイユ賞組は最近10年で最多の4頭が凱旋門賞を制し、同馬の場合はポストポンドより斤量も5kg軽い。シャンティイでは前走の他に仏オークス2着の好走歴があり、当時は内から馬群を割って多頭数への対応力も示している。前記の有力馬に対して後方からの競馬になりそうだが、気楽に一発狙っていける立場なのは幸いだ。
ニエル賞、ヴェルメイユ賞と同日、同舞台の前哨戦であるフォワ賞を制したシルバーウェーヴは、7月のサンクルー大賞でGI初制覇。5月にはガネー賞2着、イスパーン賞3着と充実しているが、イスパーン賞ではエイシンヒカリに大きく離された。今回のような超一流が相手になると一枚落ちの感は否めない。
イスパーン賞では昨年の仏ダービー馬ニューベイも大敗。凱旋門賞3着の実績があり、イスパーン賞後の2戦で徐々に持ち直してきた感はあるものの、有利な3歳時より着順を上げられるかとなると疑問符が付く。同じく元仏ダービー馬のザグレーギャッツビーは2年余り白星から遠ざかっている状態。最近は得意な良馬場を求めて予定変更を繰り返し、前走の英インターナショナルS(6着)から間隔が開いた。同じレースからでも、予定通り凱旋門賞直行のポストポンドとは調整過程に差がありそうなうえ、ニューベイともども本質的に2400mは長い。両馬とも持ち味の末脚を生かせるような展開の助けが欲しい。