【ワールドカップ】栗山求氏による血統傾向と有力馬分析!
2018年03月29日 11:00
今年のアメリカ馬の大将格はウエストコースト。昨年の3歳クラシックには間に合わなかったものの、8月のトラヴァーズS(G1・ダ10f)、9月のペンシルベニアダービー(G1・ダ9f)を連勝して一線級へ躍り出た。秋の大一番、11月のブリーダーズCクラシック(G1・ダ10f)はガンランナー、コレクティドの3着、年明け1月のペガサスワールドC(G1・ダ9f)はガンランナーの2着と、いずれも勝ち切れなかったが、ガンランナーが引退した現在、アメリカ最強を名乗る資格は十分。
母カレシングは米2歳牝馬チャンピオン。2代母ラヴィンタッチはゲイホステス≒フォレストプリンセス2×1という異様な配合構成で、この歪みがもたらす活力がファミリーをグレードアップさせているのではないかと考えられる。ウエストコーストの甥にJBCスプリント(Jpn1)など8つのダートグレード競走を制したダノンレジェンドがいる。
父フラッターはコングラッツ(ハートレーの母の父)の全兄で、プルピット、マインシャフト、マリブムーンなどと同じく「エーピーインディ×ミスタープロスペクター」のニックスから誕生している。プルピット直系の孫カリフォルニアクロームが16年優勝、15年2着と好成績を挙げており、アメリカで勢力を拡大しつつあるエーピーインディ系の波がいよいよドバイワールドCにも押し寄せつつある。過去の連対馬を見るとミスタープロスペクター系を持つ馬が強いレース。父フラッターの母の父がミスタープロスペクターで、自身はその父レイズアネイティヴを4×4で持っている。血統的には文句なし。昨年の優勝馬アロゲートの域にはまだ達していないが、平均的な勝ち馬のレベルにはある。
牝馬のフォーエバーアンブライドルドは昨年の米古牝馬チャンピオン。8月のパーソナルエンスンS(G1・ダ9f)で通算14戦13勝の女傑ソングバードを撃破し、11月のブリーダーズCディスタフ(G1・ダ9f)で3歳女王エイベルタズマンをくだした。父がアンブライドルズソングでミスタープロスペクターのクロスを持つ、という配合は昨年の優勝馬アロゲートと同じ。ただ、牡馬相手のレースと10ハロンのレースはデビュー以来初めて。どちらもプラス材料とはいえない。
昨年のブリーダーズCターフの勝ち馬タリスマニックは、メダリアドロ産駒という血統面の可能性からダートに矛先を向けてきた。父はアメリカ有数の大物種牡馬なので、レイチェルアレクサンドラやソングバードをはじめダート向きの大物を多数出している。今月6日、シャンティイ競馬場のダルシャーン賞(AW1900m)で凱旋門賞2着馬クロスオブスターズを破り、今シーズンは幸先のいいスタートを切った。ここへ向けて状態面の不安はなさそう。とはいえ、初ダートのヨーロッパ調教馬が一泡吹かせることができるかというと、そう甘くはないだろう。
昨年春のクラシックでは力不足だったが、夏からグンと成長してきたガンナヴェラ。前走、ペガサスワールドCは3着。ただし、2着ウエストコーストから10馬身以上の差を付けられている。エーピーインディ、ストームキャット、アンブライドルドのトライアングルを持つ馬は、ボードマイスター、ハンセン、ケアレスジュエルをはじめよく走っている。ウエストコーストと同じエーピーインディ系で、抜群の底力を伝えるグロースタークを持つのもいい。4歳シーズンの今年は大いに楽しみではあるが、トップクラスと互角の勝負に持ち込むまではもう少し時間が必要か。連下候補の1頭。
【栗山求の最終見解】
過去10年間のうち、10年から14年までの5年間は、ダートではなくオールウェザーで行われた。日本馬ヴィクトワールピサとトランセンドがワンツーフィニッシュを決めたのはこの期間中の11年だった。
ダートで行われたのはナドアルシバ競馬場の08、09年と、現在と同条件の15~17年。これら5年間の連対馬10頭のうち6頭を占めているのがアメリカ調教馬。アロゲート、ガンランナー、カリフォルニアクローム、カーリンといった年度代表馬級のビッグネームが並ぶ。このクラスが本気を出してしまうと、日本やヨーロッパなど芝競馬がメインの国々は太刀打ちできない。ダート競馬の本場アメリカからやってきた実力馬は素直に評価するのがセオリーだ。
人気だがウエストコーストには逆らえない。前チャンオピンのガンランナーを自らの手で引きずり下ろしたわけではなく、同馬の引退によって空位となったポジションに滑り込んだ形ではあるが、出走メンバーのなかで能力は明らかに上。仕上げを間違えなければ連から外れることはなさそう。同厩舎のコレクテッド、ムブタヒージが馬券の中心。後者はコース経験が豊富なので侮れない。