2強ムードもストレートノーチェイサーが優位か、乱戦なら日本勢に出番も
枠順確定後にジャスパークローネが出走を取り消し、12頭で争われることになったドバイゴールデンシャヒーンだが、下馬評はアメリカのスプリント王ストレートノーチェイサーと昨年の優勝馬タズの一騎打ちムード。両雄が先行力で勝負するタイプだけに、他の10頭はもつれる展開に活路を見出すしかなさそうだ。
2強対決の下馬評ではあるものの、実力的にはストレートノーチェイサーが上手かもしれない。前走のリヤドダートスプリントでは並走するジャスパークローネを最終コーナーで置き去りにする一方、連覇を狙うリメイクの追撃も許さず日本勢に格の違いを見せつけた。ダートの本場アメリカでBCスプリント制覇の実績はやはり伊達ではなく、今回の相手関係もBCと比較すれば多少は楽。現地滞在中で遠征による課題らしい課題も見当たらない。
一方のタズは昨年の内容が圧巻。日本のドンフランキーと並んで逃げ、最終コーナーでは1馬身後れを取るも、猛然と巻き返して6馬身半も突き抜けた。それ以降、8歳の今季も無傷の4連勝と元気なところを見せている。ただし、そのうち3戦の2着は今回も対戦するカラーアップで、同じような相手関係の中で勝ったもの。前走の2着も日本の3歳馬アメリカンステージと、ストレートノーチェイサーにくらべれば戦ってきた相手が落ちる。
カラーアップをはじめ、タズに連敗していたドリューズゴールドやイースターンワールドではなお苦しい。昨年のタズがそうであったように、近年のドバイゴールデンシャヒーンは1番枠と2番枠の好走が目立っているだけに、タズが失速する展開になれば好枠のカラーアップとドリューズゴールドには逆転の余地があるかもしれないが。
また、前走ではタズに5馬身余りの差をつけられたアメリカンステージも現実的には厳しい。まだ3歳で才能は十分に示しているだけに、まずは自分のリズムに徹して1つでも上の着順を目指し、来年以降にタイトルを持ち帰るための糧を得てほしいところ。同じ3歳の地元馬ダークサフロンには負けたくない。
2強に割って入るか、あるいは乱戦となった際につけ込むとすれば、まずは日本のリメイクとアメリカのナカトミが候補となるか。昨年のリメイクはタズと1勝1敗の関係。リヤドダートスプリントで大外枠のタズに完勝、ドバイゴールデンシャヒーンで2番枠のタズに完敗(4着)だったが、いずれも中枠だったリメイクは今年も昨年と同じ8番枠。対して今年のタズは5番枠と近い。ストレートノーチェイサーには前走で完敗だったが、より厳しい展開になりそうな今回は末脚が生きることもあるだろう。
ナカトミは昨年のドバイゴールデンシャヒーンで3着。リメイクには1馬身余り先着しており、当面のライバルとなる。BCスプリントではストレートノーチェイサーに完敗(6着)したが、当時の人気はこちらが上だった。持ち味とするしぶとい末脚も、昨年より今年の方が生かせるかもしれない。
もう1頭のアメリカ馬スーパーチャウは昨年のこの時期にG3を3勝。前走は9か月ぶりの白星だったが、きっかけになっていれば上位争いも。モデルとしても活躍した女性騎手のC.サザランドが、落馬による引退危機を乗り越えて2012年のドバイWC(ゲームオンデュード)以来、13年ぶりにWCナイトで騎乗することでも話題を呼んでいる。
海外初挑戦のクロジシジョーは追い込みに近い末脚勝負型だが、難しい脚質の割に戦績が安定しているのは魅力。前々走で接戦のガビーズシスターがリヤドダートスプリントで3着に好走したことから上位争い可能な実力を感じさせ、現地での調整が上手く運べば日本勢で最先着を果たしても不思議はない。
C.ルメール騎手を鞍上に迎える地元馬のロイヤルコマンドは、今年2月に2年近い休養から復帰して2連勝。英国からの移籍馬で休養前の2023年2月からダートは計5戦と経験が少ない。それでも、前走はジェベルアリ競馬場のリステッド(直線1000m)で、欧州の芝重賞勝ちがあるポントスや今回も対戦するカラーアップらに快勝している。先行力があって枠順(3番)も良く、少々不気味な面がある。
(渡部浩明)