9頭立ても上位陣は拮抗、ジャパンCに近い展開なら日本勢に勝機
昨年は出走12頭のうち10頭がG1ホースという豪華メンバーで争われたドバイシーマクラシックだが、今年は9頭立てに収まった。ただし、馬券発売の4レースのうち、このシーマクラシックだけ混戦模様。日本の4頭を含む半分以上が優勝候補という実力伯仲のレースを楽しめそうだ。
昨年はレベルスロマンスが2番手から抜け出し、3番手から5番手を固めてマークするシャフリヤールにジャスティンパレス、スターズオンアースに影も踏ませず完封したが、連覇を狙う今年も前々で主導権を握る展開になりそう。前走のアミールトロフィーは日程や競馬場の変更というアクシデントこそあったものの、逃げ切っての臨戦は昨年と同じ。ワールドカップデーまでの間隔が1週延びた今年は調整の時間も十分にあり、明け7歳のシーズンでも不安は見当たらない。
今年の相手関係ならシンエンペラーが逃げる展開か。レベルスロマンスも逃げることはあるが、W.ビュイック騎手ら欧州の乗り役は基本的に前に馬を置くスタイル。シンエンペラーは前走のネオムターフCで逃げ切り、前々走のジャパンCでも逃げて2着と結果を出しており、日本馬ならではのゲートの速さで先手を打つこともありそうだ。
仮にシンエンペラーが逃げる展開なら、ジャパンCで同着のドゥレッツァにも流れは向くはず。当時の斤量2kg差が今回は0.5kg差になるうえ、調整も近走にないほど順調と報じられており、パフォーマンスを上げられる材料がそろっている。その一方、ジャパンCでシンエンペラーとドゥレッツァに後れを取ったチェルヴィニアは、当時から斤量増を補うだけの上積みが必要になる。
期待の大きさではダノンデサイルが一番だろう。昨年後半は菊花賞、有馬記念とかみ合わなかったが、前走のAJC杯を貫禄勝ちして一区切りつけた。レベルスロマンスを射程圏に入れつつ前々から自在に立ち回れる脚質も強みで、ダービーのような内容を再現できれば勝ち負けになって不思議はない。
カランダガンは英国はじめ海外のブックメーカーで1番人気に推されている。G1未勝利ではあるものの、ドゥレッツァを並ぶ間もなく抜き去った昨年の英インターナショナルSは強烈。英チャンピオンSでも勝ちに動いて半馬身の2着と実力は優にG1クラスにある。ただし、この馬にメイダン競馬場の直線は不足しているかもしれない。英インターナショナルSは仏G2ギヨームドルナノ賞との二者択一だったが、その理由はドーヴィル競馬場のタイトなコーナーと短い直線より、広々としたヨーク競馬場(直線約1000m)を優先したもの。直線の長さがドーヴィル競馬場と同じ450mのメイダン競馬場で、英インターナショナルSの内容を再現できる保証はない。
香港ヴァーズを鮮やかに制したジアヴェロットも不気味な存在だが、例年の香港ヴァーズとシーマクラシックでは相手関係が一枚違う印象。昨年は香港ヴァーズ勝ちのジュンコが7着に完敗している。ジアヴェロットは昨年、一昨年とドバイゴールドCに出走していたが、堅実な戦績が持ち味ながらメイダン競馬場では不振。今回は試金石と見ておくべきか。
昨年にドイツでG1勝ちのカリフは中東での成績が安定しているが、一線級が相手だとひと息足りなくなる。前走のネオムターフCでもシンエンペラーに封じられており、重賞未勝利のデイラマイルともども勝ち切るまでは難しそうだ。
(渡部浩明)