香港スプリント

Hong Kong Sprint

2017/12/10(日)15時40分発走 ※発走日時は日本時間

シャティン競馬場

  

【香港スプリント】栗山求氏による血統傾向と有力馬分析

2017年12月06日 13:00

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 過去10年間の連対馬20頭中14頭が地元香港調教馬。一昨年、昨年は香港馬がワンツーフィニッシュを決めた。芝短距離王国オーストラリアから多くのサラブレッドを輸入している香港はこの路線のレベルが高い。

 それらの多くは前哨戦のG2ジョッキークラブスプリントを使って本番に臨む。14年は1番人気ながら直線で挟まれて14着と大敗したエアロヴェロシティが巻き返し、15年は2着ペニアフォビア、16年は3着エアロヴェロシティが本番で着順を上げて快勝した。つながりの深いレースではあるものの、前哨戦(前身のインターナショナルスプリントトライアルも含めて)と本番を連勝した馬は、07年のセイクリッドキングダムまでさかのぼらないと見当たらない。

 今年はミスタースタニングがこの難題に挑む。G2プレミアボウルを勝って臨んだ前走のジョッキークラブスプリントは、後方馬群の外につけて直線で楽々と抜け出した。春にもG2を勝っており、G1チェアマンズスプリントプライズは2着。このレースは直線で馬群をさばくのに苦労し、内の馬に寄られる不利がありながらクビ差2着なので負けて強しの内容だった。

 父エクシードアンドエクセルはオーストラリアでリーディングサイアーとなり、ヨーロッパやアメリカでも大レースの勝ち馬を出している。デインヒル系ながら母方がアメリカ血統なので堅い芝にも適応している。母の父デイジュールは1990年代のヨーロッパ最強スプリンター。ミスタースタニング自身はダンジグ3×3で、スピードに特化した配合だ。ミスタープロスペクター系と並んでダンジグ系の血を持つ馬は香港スプリントの連対馬に目立っている。調整に狂いがない限り勝ち負けに持ち込めるだろう。

 ライバルのラッキーバブルズは昨年の2着馬。前哨戦のジョッキークラブスプリントは内枠が災いして道中インで詰まり、最後の直線でも二度挟まれて手綱を引っ張る大きな不利。最後はジョッキーが諦めて9着と大敗した。まったく競馬をしていないのでノーカウントでいいだろう。4月のG2スプリントCから4戦連続でミスタースタニングと対戦し1勝3敗。唯一の勝利である3走前のG1チェアマンズスプリントプライズは相手に不利があった。前々走のプレミアボウルでは0.4kg軽い斤量で半馬身先着を許した。力の比較をすれば若干ミスタースタニングのほうが上ととらえることもできるが、要するに道中不利があったほうが負けているので、どちらがスムーズに回ってこられるかの勝負になりそうだ。

 父シーブリングはモアザンレディ→サザンヘイロー→ヘイローとさかのぼる系統で、現役時代にオーストラリアの2歳牡馬チャンピオンとなり、種牡馬としても成功。初年度産駒から豪年度代表馬ディシデントや豪G1を4勝したクライテリオンといった大物を出している。母の父ヒューソネットはチリとオーストラリアの双方で首位となったミスタープロスペクター系の大種牡馬で、香港ではグロリアスデイズの父として知られている。スピードを競うカテゴリーだけに、このレースはミスタープロスペクター系と相性がいい。

 前哨戦2着のアメージングキッズは「ファルカーク×リズム」という組み合わせで、ミスタープロスペクター4×3。14年と16年の覇者エアロヴェロシティと同じニュージーランド産馬だ。父はニュージーランドのスプリンターで、テイルオブザキャットを経てストームキャットにさかのぼる系統。前走は直線で追い出しを待たされる不利があった。それがなければもう少し勝ち馬との差を詰めていたと思われる。

 前哨戦3着のディービーピンは、2着アメージングキッズよりも馬群をさばくのに苦労していたので、力の比較をすればこちらのほうが上だろう。こちらもニュージーランド産馬で、父ダルシブラーマはデインヒル系。母の父ピンズはエアロヴェロシティの父でもある。前々走のプレミアボウルでは軽ハンデで6着と敗れていたので、ここにきて急上昇している。

 ザウィザードオブオズは「リダウツチョイス×エンコスタデラゴ」というオーストラリアのリーディングサイアー同士の配合で、母プリンセスクープはニュージーランドオークスなどG1を4勝した名牝。ポテンシャルの高さを感じさせる良血馬だ。ここ2戦、9、5着と敗れており、春のG1チェアマンズスプリントプライズで僅差4着(勝ち馬からクビ、クビ、クビ差)と健闘したころの調子にはない印象だが、当初から目標はここなので、キッチリ仕上げてくれば勝ち負けに持ち込めるだけの能力は持っている。

【栗山求の最終見解】

 日本馬ロードカナロアが12、13年と連覇。14年にストレイトガールが3着、11年にカレンチャンが5着と、かつては難攻不落といわれた香港スプリントでも日本馬は健闘するようになった。とはいえ、香港は芝短距離王国オーストラリアから多くのサラブレッドを輸入しているだけあって、日本のスプリント路線よりもハイレベルな競馬を行っており、それ以外の年は苦戦している。昨年挑戦したビッグアーサーとレッドファルクスは二桁着順に沈んでいる。

 レッツゴードンキは桜花賞馬とはいえ、高松宮記念とスプリンターズSでは2着と勝ち切れず、スプリントG1のタイトルには手が届いていない。ワンスインナムーンは名繁殖牝馬ツーデイズノーチスの娘で、スプリンターズSでは逃げて3着と健闘。しかし、こちらも香港で好走した日本馬の域には達していない。外国馬を中心に馬券を組み立てるべきだろう。

 能力はミスタースタニングとラッキーバブルズの2頭が抜けている。ただし、馬群が密集する香港競馬はそれだけ道中のアクシデントも多く、馬群が壁になる、挟まれる、といった理由で能力を出し切れないケースも少なくない。この2頭もたびたび不利を受けて勝てるレースを落としてきた。

 スムーズにレースを進められた伏兵が馬券になることも珍しくないので、ミスタースタニングとラッキーバブルズの2頭が強いことを承知の上で、あえて伏兵ディービーピンから入りたい。前走は馬群をさばくのに苦労し、前々走6着は外枠から出て終始馬群の外を回らされたことも響いた。