日本馬挑戦の歴史
息を呑むゴール前、ステイゴールドとサトノクラウンの劇的勝利
日本調教馬はレース創設元年の1994年から香港ヴァーズに参戦し、これまで思うように勝ち星を伸ばせずにいる。しかし、2001年のステイゴールドは海外遠征史の枠を超え、日本競馬界屈指のドラマチックレースとして語り草。まさに STAY GOLD な一戦となった。
レースでのステイゴールドは大外14番枠からの発走。中団から後方寄りで折り合いに専念し、そのまま3コーナーを迎えた。すると、2番手を追走していたエクラールがピッチを上げて先頭に立ち、後続を見る見る引き離していく。これを見た武豊騎手がステイゴールドを促して追撃開始。対応が遅れたライバルたちを置き去りにして、5馬身から6馬身前方のエクラールをただ1頭、追い掛けていった。
ステイゴールドは直線早々にステッキを受けて急ピッチにギアを上げたものの、残り200mでもまだ4馬身ほどのビハインド。内にササる悪癖も出し、万事休すかと思われた。しかし、立て直してあと100mという所から最後にひと伸び利かせ、粘るエクラールを一完歩ずつ追い詰めてゴール。闘志あふれる走りを披露し、見事にアタマ差で勝利をもぎ取った。ステイゴールドは引退レースと決めて臨んだ一戦で悲願のG1制覇を成し遂げ、惜敗続きのキャリアに最高の形で終止符を打ったのだった。
ステイゴールドの劇的すぎる勝利後、日本調教馬は善戦こそするものの勝利には手が届かず、2005年のシックスセンスと2012年のジャガーメイルによる2着が最高だったが、15年の時を経てようやく2回目の勝どきを挙げる日が訪れた。
デビュー3連勝で臨んだ皐月賞で1番人気に支持されるなど早くから才能を発揮していたサトノクラウン。しかし、気性の若さもあってG1になると苦戦が続き、春に遠征したクイーンエリザベス2世カップ、再遠征を控えた天皇賞・秋ではともに2桁着順の大敗を喫していた。7度目のG1挑戦となった香港ヴァーズでも、世界を股に掛けてG1勝ちを量産するハイランドリールが立ちはだかり、厳しい戦いになることは明らかだった。
それでも、この日のサトノクラウンは課題の折り合いもすぐにつき、中団後方のラチ沿いをスムーズに追走。軽快に飛ばして逃げ込み態勢に入った王者ハイランドリールを馬群の中から追撃する。残り300mで2番手に上がった時は4馬身ほどの差があったが、一完歩ずつ詰め寄ると最後の二完歩で大逆転。15年前のステイゴールドを彷彿とさせる勇猛さで待望のG1タイトルを手にしたのだった。
年 | 馬名 | 性齢 | 着順 | 騎手 | 調教師 |
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1994 | エイシンテネシー | 牝5 | 4 | 増井裕 | 坂口正則 |
1995 | タニノクリエイト | 牡3 | 4 | 蛯名正義 | 森秀行 |
1997 | エイシンサンサン | 牝5 | 12 | 武豊 | 坂口正則 |
1999 | ローゼンカバリー | 牡6 | 7 | 菊沢隆徳 | 鈴木康弘 |
2001 | ステイゴールド | 牡7 | 1 | 武豊 | 池江泰郎 |
2005 | シックスセンス | 牡3 | 2 | 四位洋文 | 長浜博之 |
2006 | ソングオブウインド | 牡3 | 4 | 武幸四郎 | 浅見秀一 |
アドマイヤメイン | 牡3 | 8 | 武豊 | 橋田満 | |
2008 | ジャガーメイル | 牡4 | 3 | M.キネーン | 堀宣行 |
2009 | ジャガーメイル | 牡5 | 4 | C.スミヨン | 堀宣行 |
2010 | ジャガーメイル | 牡6 | 4 | C.ウィリアムズ | 堀宣行 |
2011 | トレイルブレイザー | 牡4 | 6 | 安藤勝己 | 池江泰寿 |
2012 | ジャガーメイル | 牡8 | 2 | D.ホワイト | 堀宣行 |
2013 | アスカクリチャン | 牡6 | 7 | 岩田康誠 | 須貝尚介 |
2014 | カレンミロティック | セ6 | 5 | 池添謙一 | 平田修 |
2016 | サトノクラウン | 牡4 | 1 | J.モレイラ | 堀宣行 |
ヌーヴォレコルト | 牝5 | 4 | 岩田康誠 | 斎藤誠 | |
スマートレイアー | 牝6 | 5 | 武豊 | 大久保龍志 |