香港マイル 2024/12/8(日) 17:00発走 シャティン競馬場

見どころPREVIEW

マイルCSの覇者ソウルラッシュ。(Photo by Shuhei Okada)

絶対王者が退き混戦模様、ソウルラッシュとジャンタルマンタルにもチャンス

今年の香港マイルは地元勢8頭に日本を含む海外勢6頭と多彩なメンバーが顔をそろえた。絶対王者として君臨してきたゴールデンシックスティがターフを去ったことにより、層の厚い香港勢の中に受けて立つほどの存在もなく混戦模様。どの馬にもチャンスがありそうで見どころは多い。

地元勢は昨年の香港マイルで2着のヴォイッジバブルが大将格。国内では安定上位の実力馬で、前哨戦のジョッキークラブマイルも番手抜け出しの快勝と暫定王者の地位を得ている。昨年は7カ月ぶりのJCマイルを叩いて2戦目だったが、今年は4カ月ぶりのシャティンTから始動して3戦目と順調に来ており、晴れて王座を継承する可能性は十分にある。

このヴォイッジバブルが大将格なら日本のソウルラッシュとジャンタルマンタルにも勝機があっていい。ソウルラッシュは昨年の香港マイルでヴォイッジバブルから1馬身1/2差の4着だが、馬群の中から終始スムーズに進んだヴォイッジバブルに対し、ソウルラッシュは最終コーナーで外を回るロス。パワーアップを印象づけたマイルCSの内容から逆転も期待できよう。

スケール感ではジャンタルマンタルの楽しみも大きい。皐月賞は3着で距離の壁に泣く結果となったものの、レコード決着の激流の中で早めに抜け出す強い内容。NHKマイルCでは文句なしの完勝劇で高い適性を証明した。熱発でそれ以来の実戦になってしまったのは誤算だが、このレースを史上唯一の3歳で制したアドマイヤマーズと戦歴も似ており、春の力通りなら金星を手にしても不思議はない。

JCマイルで2着のチェンチェングローリーが少々不気味。昨シーズンの4歳三冠シリーズは香港クラシックCでの2着が最高だが、アメリカ産馬のため半年遅生まれのハンデがあり、香港クラシックCの時点では満4歳の誕生日も迎えていなかった。香港ダービー後はマイル路線に注力し、重賞では2着と3着が各2回と勝利こそないものの堅実。実年齢では今が4歳秋の充実期に当たり、まだまだ成長を見込める。

前哨戦のJCマイルを快勝したヴォイッジバブル。(Photo by The Hong Kong Jockey Club)

ギャラクシーパッチは香港ダービー2着から香港チャンピオンズマイルに挑み、5着に終わったもののゴールデンシックスティに次ぐ2番人気(香港発売分)に推されていた。その後は重賞3連勝を飾り、前走のJCマイルは単勝1.7倍の圧倒的人気で3着。大舞台で一歩足りなくなるが、地元での評価が一貫して高く、今しばらく注目しておきたい1頭。

また、JCマイル4着のハッピートゥギャザーはヴォイッジバブルを早めに捕らえに動いた結果。4月のクイーンエリザベス2世Cでは日本勢に割って入る4着と、これまでは長めの距離で実績を積んできた面があり、より厳しい流れの本番で自分の型に徹すれば上位争いも可能だろう。

4月の香港チャンピオンズマイルでヴォイッジバブルとギャラクシーパッチに先着したビューティーエターナル(1着)とレッドライオン(2着)は、その後にシャティンT、JCマイルと2戦するも5着以内がない。香港チャンピオンズマイルはゴールデンシックスティの末脚が不発に終わるほどの道悪だっただけに、巻き返しには天の恵みが必要か。

日本勢以外の遠征馬では豪州のアンティノ、英国のドックランズとラマダン、フランスからはラザットが参戦。アンティノは直近4戦でG1トゥーラックH勝ちを含む3着以内の勢いと安定感に魅力がある。2022年の香港マイルでは豪州のローズオブインディシーズが3着に激走したが、同馬も3走前にトゥーラックHで2着に好走していた。

ドックランズとラザットは豪州からの転戦。ドックランズは直近3戦で2000mに挑み結果を出せなかったが、得意のマイルに短縮して変わり身があれば。ゲートが遅く大跳びのタイプだけに、直線が長めのシャティン競馬場もプラスだろう。ラザットは7戦目の前走で初黒星を喫したが、G1級のメンバーが集うゴールデンイーグルの2着は価値が高い。1300mのモーリスドゲスト賞を勝つほどのスピードがあるだけに、前走から100mの延長が課題ではあるが、道中で溜めが利く展開になれば残り目も。

G1連対のないラマダンは実績的に格下で、今回はフランスのC.ヘッド厩舎からF.ファーガソン厩舎への移籍初戦。いろいろと難しい面がありそうだ。

(渡部浩明)