シティオブトロイら3歳馬が中心、斤量重いドゥレッツァは前々からが理想
日本からドゥレッツァの遠征が実現した今年の英インターナショナルS。野趣あふれる英国の競馬場にあって、比較的平坦で日本調教馬に適しているとされる舞台設定ながら、これが5年ぶり3頭目とサンプルは少ない。日本からの遠征を活性化させるような、弾みをつける快走に期待したい。
英インターナショナルSは約1000mの直線を含むフェアなコースを舞台に、異なる世代や距離適性の強豪が集う全欧王者への登竜門となっている。日本では天皇賞(秋)のような性格を持つが、今年の英インターナショナルSは3歳世代が優勢の下馬評。現地前売りで大本命の評価を受けるシティオブトロイをはじめ楽しみな素材が顔をそろえた。
そのシティオブトロイは2410mの英ダービー快勝でスタミナに何ら不安はないばかりか、米三冠馬のジャスティファイを父に持つ血統背景から、スピードを生かせる今回の2000m前後がより適していると考えられる。前走のエクリプスSは道悪に脚を取られながらも勝ち切って底力を証明。この先には米BCクラシックでのダート挑戦を視野に入れており、総合力を問われるヨーク競馬場で、どのような内容を残せるか興味深い。
シティオブトロイに続く3歳世代も英ダービー2着のアンビエンテフレンドリーや上がり馬のカランダガン、近走は道悪に泣かされてきたゴーストライターと甲乙つけがたい。アンビエンテフレンドリーは英ダービー、ゴーストライターはエクリプスSでシティオブトロイの後塵を拝しているが、前者は愛ダービー(3着)ともども最後の200mで脚勢が鈍り、後者は重馬場の仏ダービー(4着)を受けてエクリプスSは戦前から良馬場を希望していた。それぞれ距離や馬場状態の変化を味方に雪辱のチャンスは残されている。
カランダガンは今回がG1初挑戦だが、シティオブトロイとは初対戦で未知の魅力がある。何といっても6馬身差の圧勝を収めた前走のキングエドワード7世Sが強烈で、追うほどに伸びる末脚はヨーク競馬場で一段と威力を増しそう。単純な比較ではあるが、前走の勝ち時計は翌日に同じ馬場状態と距離で争われた古馬のハードウィックSより3秒余りも速かった。ハードウィックSで2着(3馬身3/4差)のゴリアットがキングジョージ6世&クイーンエリザベスSを完勝したことからも、時計面はG1で通用の目途を立てている。
ドゥレッツァを除く古馬勢では、アルフレイラが現地で筆頭評価を受けている。4戦3勝と抜群のコース実績を誇り、英インターナショナルSの前哨戦に当たるヨークSを昨年、今年と連覇するなどヨーク競馬場で重賞3連勝中。唯一の黒星も本格化前のハンデ戦で2着と評価を下げるようなものではなく、ここは上位争いが前提となってくる。
また、前走のプリンスオブウェールズSで2着に好走したザラケムも侮れない。前々走のガネー賞は中盤から先頭に並ぶ積極的なレース運びが裏目に出て8着も、プリンスオブウェールズSでは後方からロスなく運んでディープインパクト産駒のオーギュストロダンに迫った。ハットトリックの血を引くG1常連のオリゾンドレとは前走まで3連戦して勝ち越しており、日本産種牡馬の産駒と親和性を感じさせる。そうした点でドゥレッツァの物差しになり得る。
マイル路線からはマルジュームとドックランズが参戦。両雄は6月のクイーンアンSで戦い、ドックランズがマルジュームに先着した(2馬身3/4差)。ドックランズはそれ以来の実戦だが、マルジュームは続くサセックスSで2着に前進。2頭とも今回が初の2000m級ながら、クイーンアンSの覇者シャリンは8月11日のジャックルマロワ賞も3馬身差で完勝しており、マイラーとして欧州トップレベルの裏づけはある。ドックランズはコックスプレート遠征を予定しており、プログノーシスと対戦する可能性がある点でも注目しておきたい。
ドゥレッツァにとっては例年にくらべて多い頭数が気懸かりも、シティオブトロイ以外に抜けた実績馬はなく、これからの馬たちが中心の相手関係ならチャンスもあるはず。やはり今回は距離が一つのカギになるものの、菊花賞勝ちはC.ルメール騎手の手腕に依るところも大きく、一介のステイヤーと決めつけることはできない。3歳馬より3.5kg重く、未経験の61kgという酷量を負担しての瞬発力では分が悪いだけに、日本調教馬の特長であるゲートの速さを生かし、菊花賞のように前々から押し切る形に持ち込むのが理想か。
ヨークシャーオークス(22日)との両にらみだったブルーストッキングが現地19日の出馬投票で出走に踏み切った。3歳の昨年はヨークシャーオークスで4着だったが、今年になって本格化を迎え、初戦で英インターナショナルSと同舞台のミドルトンフィリーズSを6馬身差で圧勝すると、続くプリティーポリーSでG1初制覇。前走のキングジョージ(2着)ではレベルスロマンスやオーギュストロダンら強豪牡馬にも先着した。オーナーブリーダーのジャドモントは英インターナショナルSのスポンサーでもあるが、確勝級と見られていた牝馬限定のヨークシャーオークスを捨て、あえて牡馬にぶつけてきた意気込みが何とも不気味に映る。
(渡部浩明)