英愛仏から強力メンバーが集結、シンエンペラーには試練の海外初戦
シンエンペラーの参戦により、日本でも馬券が発売されることになった今年の愛チャンピオンS。日本調教馬の出走は2019年のディアドラ以来、5年ぶり2頭目のことで、初制覇なるかが最初の注目ポイントとなるが、同じ2000m級でも相手関係は8月の英インターナショナルSより充実している。今回は3週後の凱旋門賞を大目標に据えての初戦でもあり、まずは先につながる内容が求められる。
現地10日の追加登録を終え、出走意思を残す馬は12頭に絞られた。そのうち5頭は地元・アイルランドが誇るA.オブライエン調教師の管理馬。直近10年で5勝(5連覇)、2着6回、ワンツーフィニッシュも2回(2019年は3着まで独占)記録する一方、連逸は2017年の1回しかなく、5頭のうち何かが勝ち負けになると考えておくべきだろう。
今年のオブライエン勢も強力で、連覇を狙うディープインパクト産駒オーギュストロダン、一昨年の覇者で昨年は2着のルクセンブルク、愛ダービー馬ロスアンゼルス、昨年の英セントレジャー馬で凱旋門賞も5着のハーツクライ産駒コンティニュアス、これにペースメーカーを務めることになりそうなハンスアンデルセンと質・量とも他陣営を圧倒している。
昨年はペースメーカーに行かせて2番手ルクセンブルク、3番手オーギュストロダンの隊列で主導権を握ったが、ディアドラが出走した2019年も前、内の有利な位置を4頭で固めて上位独占を果たした。ハンスアンデルセンを除く4頭には2400m以上でG1勝ちの実績もあり、オブライエン勢が前々からペースを操って底力勝負に持ち込む可能性が高そうだ。
シンエンペラーは末脚勝負の形になると思われるが、2020年の愛チャンピオンSに出走した全兄のソットサスは4着から次戦の凱旋門賞を制しており、この辺りの着順はクリアしておきたいところ。ただ、日本からの初遠征の上に日本ダービー以来の休み明けと、夏場に稼働していた欧州勢との比較で不利は否めない。着順よりも、いかに先につながる内容を残せるかが、現実的なテーマではないだろうか。
対オブライエン勢では、凱旋門賞でも対戦が予想されるコンティニュアスとロスアンゼルスは特に注目。今季のコンティニュアスは脚部不安で出遅れたが、叩き2戦目の前走はG3を貫禄勝ちして状態を上げている。また、3歳のロスアンゼルスは今回と同日の英セントレジャーが当初の目標。追加登録してまで前哨戦(グレートヴォルティジュールS)に出走した背景があり、2000mなら互角かそれ以上の結果が欲しい。
英国勢は大手ブックメーカー各社で前売り1番人気のエコノミクス、8月の英インターナショナルSで5着のドゥレッツァに6馬身先着のゴーストライター、同じくアタマ差の6着に続いたロイヤルライムの3頭。いずれもG1勝ちの実績がなく、エコノミクスに至っては5戦目にしてG1出走も古馬との対戦も初めてと経験が不足している。そのような3歳馬が昨年、一昨年の優勝馬を含む複数のG1ホースより人気というのは見込まれ過ぎの感も。下馬評に応えるようなら今後の欧州戦線を背負って立つスターとなっていくはずで、どのようなレースを見せてくれるか興味深い。
ファクトゥールシュヴァルとザラケム、メトロポリタンのフランス勢も侮れない。今季のフランス調教馬はゴリアットがキングジョージを圧勝、カランダガンが英インターナショナルSで負けて強しの2着と例年以上に国外での活躍が目立っている。
ファクトゥールシュヴァルとメトロポリタンは今回が初の2000mだが、前者には1800mのドバイターフ勝ち(2着ナミュール)があるうえ、この先にBCクラシック挑戦も見据えている。後者は仏2000ギニー勝ちにセントジェームズパレスS(3着)、ジャックルマロワ賞(2着)と3歳にして厚いG1実績があり、それぞれ距離を克服するだけの能力を秘めていても不思議はない。また、ザラケムはプリンスオブウェールズSでオーギュストロダンの2着に食い込んでおり、前年の優勝馬とは好走できる条件が近いことを証明している。
(渡部浩明)