アイリッシュチャンピオンステークス 2025/9/14(日) 01:30発走 レパーズタウン競馬場

見どころPREVIEW

昨年3着の雪辱を期すシンエンペラー。(Photo by Shuhei Okada)

真価を問われるドラクロワ、昨年の内容からシンエンペラーにも勝機

凱旋門賞を目指すシンエンペラーが昨年に続き愛チャンピオンSで始動する。その昨年はゴール前まで進路がふさがり、脚を余す格好で約1馬身差の3着。当時の矢作芳人調教師は凱旋門賞を見据えた休み明けで7割から8割の仕上げとコメントしていただけに、4歳秋の充実期に挑む今回は雪辱の勝利も期待できよう。

今回のシンエンペラーはデビュー以来最長となる5か月ぶりの実戦が課題だが、3か月半ぶりで初の海外遠征でもあった昨年の愛チャンピオンSを含めて休み明けの成績は悪くない。全兄ソットサスは4歳で凱旋門賞を制覇、半姉のシスターチャーリーも4歳以降にG1レース7勝と成長力を秘める血筋で、ネオムターフC勝ちで海外実績も積んでおり楽しみの方が大きい。アロヒアリイ、ビザンチンドリームと凱旋門賞に向けて絶好のスタートを切ったライバルたちに続いてほしい。

現地前売りで圧倒的な人気を集めるドラクロワが大きな壁となるが、実力的にはまだ判然としない面を残している。前走の英インターナショナルSはオンブズマンを徹底マークするも2着。前方でペースを抑え過ぎたダノンデサイルのレース運びはともかく、その前のエクリプスSでオンブズマンを鮮やかに差し切った内容や軽めの斤量からも、瞬発力勝負の展開そのものは向いていたはずで、突き放されて3馬身半差という内容はいささか物足りない。今回は真価を問われる場というのが現実的なところではないか。


現地前売りで圧倒的な1番人気となっているドラクロワ。(Photo by Getty Images)

現地ブックメーカー各社の前売りでは、シンエンペラーを含む4頭が差なく2番手グループに評価されている。そのうち実績上位は昨年の英チャンピオンS勝ちがあるアンマート、昨年のタタソールズゴールドC勝ちなどディープインパクト産駒のオーギュストロダンとライバル関係にあったホワイトバーチで、両雄は夏場の堅い馬場状態を嫌って稼働できずにきた点が共通している。

アンマートは7月のエクリプスSと8月の英インターナショナルSを相次いで見送り、今回は馬場の軟化を見込んで待望の実戦だが、良馬場が全くの不得手という訳でもない。6月のプリンスオブウェールズSはオンブズマンの瞬発力に屈したものの良馬場で2馬身差。3着のシーザファイアには2馬身1/2差をつけた。単純な比較になるが、これは英インターナショナルSにおけるドラクロワと両馬との着差より優れている。

一方、ホワイトバーチは明らかに道悪志向で、今年のタタソールズGCは良馬場でアンマートにも1馬身余りの後れを取って連覇を逃した。昨年来、脚部不安で順調に使い込めない面もあったが、レース間隔が開いても力を発揮できるタイプで、夏場をあきらめて愛チャンピオンSから再始動というプランは早々に決まっていた。1か月後に控える英チャンピオンSは道悪の期待値がより高いレースだけに、そこで連覇を狙うアンマートともども内容を残したい一戦になる。道悪は大いに歓迎の両雄に対し、その経験が少ないシンエンペラーとしては少しでも馬場が良くあってほしいところ。

3歳馬のザーランはクラシック未出走で今回がG1初挑戦。前走で重賞初制覇を飾ったばかりで格下の立場だが、そのG3ロイヤルホイップSでは昨年の愛チャンピオンSでシンエンペラーとアタマ差(4着)だったロスアンゼルスを、同じような位置から一瞬にして3馬身突き放した。別定戦で5.5kgの斤量差があったため即、通用となるかは分からないものの、定量戦の今回でも古馬とは2.5kg差があり、一線級と互角の計算は成り立つ。

ブックメーカーの評価ではこれら5頭が他を離して優勝候補とみなされている。ただ、ホタツェルは人気の盲点になっているかもしれない。2歳の昨年はクラシック登竜門のG1フューチュリティトロフィーでドラクロワを差し返すなど重賞3勝。今季は本命視されていた初戦の仏2000ギニーを堅い馬場が合わずに回避し、仕切り直した愛2000ギニー以降も望んだ馬場状態に恵まれず未勝利だが、勝負根性を問われるタフな条件になれば大きく浮上する可能性がある。

(渡部浩明)