ケンタッキーダービー
2022/5/8(日) 07:57発走 チャーチルダウンズ競馬場
クラウンプライド、天を味方に日本調教馬初のKYダービー制覇へ
2月のサウジアラビア、3月のUAEドバイと続いた中東シリーズを席巻して波に乗る日本調教馬。クラウンプライドはUAEダービーを制して一翼を担った1頭だが、勝利によって出走機会を得たケンタッキーダービーに是非とも勢いをぶつけてほしい。半年前にはマルシュロレーヌがBCディスタフで歴史的勝利を収め、ダートの本場をあっと驚かせたばかり。流れは確実に来ている。
日本調教馬がアメリカのダートに挑戦する際に課題となるのがスピードへの対応だが、これはクラウンプライドにとっても変わらない。1900mのUAEダービーを完勝して距離(スタミナ)に目途を立てたものの、走破時計の1分59秒76は2017年以降の過去5回で群を抜いて遅い。メーンレースのドバイWCも同様で、2分4秒97の決着時計は前年比で3秒36も要した。チュウワウィザードは前年より着順を1つ落としたが、勝ち馬との着差ならむしろ詰めている。今年のメイダン競馬場はダートが重く、日本調教馬に比較的適した状態であったと考えられる。
しかし、クラウンプライドに追い風が吹きそうな気配もある。舞台のチャーチルダウンズ競馬場があるケンタッキー州ルイビルの天気予報は、週初から週末まで雲が取れずに雨混じり。ケンタッキーオークスの金曜日(6日)は荒天も見込まれている。砂主体の日本のダートは水分を含むと脚抜きが良くなるが、本場のそれは文字通り重く時計を要す。マスターフェンサーが勝ち馬からわずか2馬身少々、日本調教馬としてKYダービー最先着(6着)を果たした2019年も不良馬場だった。
また、クラウンプライドの前に立ちはだかる本場のライバルたちに目を移しても、馬場状態が大きな影響を及ぼす可能性がある。今年の出走馬、とりわけ下馬評の高い実績馬たちは重馬場や不良馬場で重賞レースを戦った経験がないに等しい。その点ではクラウンプライドもアメリカ勢もイーブンの関係にある。
ただし、過去10回のKYダービー(コロナ禍で秋開催の2020年を除く)で3着以内に入線した30頭の前走から、ある程度まで相手関係を絞ることは可能だ。
ルイジアナダービー 7頭
サンタアニタダービー 6頭
アーカンソーダービー 6頭
フロリダダービー 5頭
ブルーグラスS 3頭
その他 3頭
各地区の「ダービー」が有力であることは一目瞭然。このうち、1位入線ながら失格や降着になった2021年のメディーナスピリット(サンタアニタダービー)と2019年のマキシマムセキュリティ(フロリダダービー)の結果を有効とした場合、ブルーグラスSとその他(ウッドメモリアルS)が各1頭減る。実に26頭が「各地区のダービー経由」だったことになる。30頭のうち28頭が3着以内、21頭は1着から駒を進めてきた。
最多の7頭を輩出してきたルイジアナダービーの優勝馬エピセンターは、現地2日の枠順確定後に発表された前売りで2番人気。2月のリズンスターSでエピセンターの3着に敗れたものの、前走のブルーグラスSで巻き返したゼンダンが1番人気に推されている。また、リズンスターSとブルーグラスSで2着のスマイルハッピーは、ルイジアナダービーで2着のゾゾスら6頭と並び7番人気タイ。この中にアーカンソーダービー勝ちのサイバーナイフやクラウンプライドも含まれている。
3歳初戦のホーリーブルS、そしてフロリダダービーと連勝中のホワイトアバリオは、ホーリーブルSで3着に退けたモードニゴールとともに4番人気タイ。2歳時に重賞初挑戦のG2でスマイルハッピーに完敗しているが、それが唯一の黒星で底を見せていない。また、モードニゴールはホーリーブルS後にウッドメモリアルSを勝っての参戦。昨年12月のレムゼンSではゼンダンを2着に下したことがあり、この辺りまでは対戦比較から紙一重の印象だ。
西海岸の最重要レースであるサンタアニタダービーを制したテイバは6番人気に甘んじているが、今回でデビュー3戦目とキャリア不足は否めないだけに致し方なしか。その一方、サンタアニタダービーで2着に敗れた僚馬メッシエーが3番人気に推されている。両雄にはB.バファート調教師のライセンス停止により、レース直前に転厩という事態に巻き込まれた背景もあり、その1戦だけで優劣はつけられない。環境の変化に動じない心身の強さを感じさせ、人気上位馬とも対戦歴がないだけに不気味なコンビだ。
いずれにせよ、今年のKYダービーは道悪になれば波乱の目も十分。鈍色の空から一筋の光がクラウンプライドを照らす結末に期待したい。
(渡部浩明)