プリンスオブウェールズステークス

Prince of Wales's Stakes

2019/6/19(水)23:40発走

アスコット競馬場

見どころ

遠路参戦することになったディアドラ。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

上位評価の地元勢に死角あり、ディアドラには実力発揮の条件そろう

当初は史上最高のメンバーも想定されていた今年のプリンスオブウェールズステークスだが、回避馬が相次ぎ多少は相手関係も軽減された。残った中心勢力には死角も散見し、日本から遠路参戦することになったディアドラにもつけ入る隙はありそうだ。

現地ブックメーカーで前売り1番人気を争っているのは、シーオブクラスとマジカルの4歳牝馬たち。前者はG1レース2勝に凱旋門賞でエネイブルと短クビ差の2着があり、実績から最右翼の評価もうなずける。ただ、今回は凱旋門賞から8か月半ぶりの復帰戦と間隔が開いているうえ、ひと叩きするはずだった前哨戦を熱発で回避した事情がある。また、もともと今季の大目標を3か月半先の凱旋門賞に置いているため、ここから全開の仕上げは難しいはず。アスコットも未経験で今回ばかりは地力頼みか。

マジカルのG1実績もシーオブクラスに劣らないが、凱旋門賞では2着のシーオブクラスに5馬身ほど離された。次戦でG1初制覇を飾り、さらに中1週で臨んだブリーダーズカップターフではエネイブルの3/4馬身差2着に巻き返したものの、その2戦は道悪が向いた面もあり、エネイブルとの着差比較でもシーオブクラスになお届かない。今季は10ハロン前後の重賞を3連勝しているとはいえ、全て自厩舎のステイヤーが2着。中距離の本格派に通用するか、それが明らかになるのは今回だ。

ヴァルトガイストとクリスタルオーシャンの牡馬2頭が3番人気を争う関係にあるが、ここに至る経緯では前記の牝馬2頭に決して負けていない。ヴァルトガイストは凱旋門賞でシーオブクラスに1馬身半差の4着も、当時の斤量4.5kg差から今回は1.5kg差で戦える。1kgで1馬身とされる机上の計算では優に逆転できる関係だ。しかも、今季初戦のガネー賞を圧勝しての参戦。フランスに9年ぶりのタイトルを持ち帰ることも十分に可能だろう。


万全の態勢を整えたクリスタルオーシャン。

また、クリスタルオーシャンはG1未勝利ながら2着が3回あり、そのうち2回は1/2馬身以内の僅差。アスコット競馬場でも重賞4戦で1勝、2着2回、3着1回と経験豊富なうえ、昨年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスではクビ差の2着と他馬にはない充実した戦績を誇っている。昨年のロイヤルアスコット開催ではハードウィックステークスを快勝したが、今年も全く同じローテーションで連勝中と万全の態勢にある。

これらに続く5番手がザビールプリンス。今季初戦のG3で重賞初制覇、2戦目の前走はG1イスパーン賞で連勝と、6歳にして素質を開花させてきた。ただ、イスパーン賞で3/4馬身差の2着馬は、ガネー賞でヴァルトガイストに4馬身余り離された。それに加え、当時の1850mがキャリア最長距離。タフなアスコットの1990mではまだ胸を借りる立場か。

ここから大きく離された6番手グループの中に含まれるディアドラは、マジックワンドやハンティングホーン、デザートエンカウンターとブックメーカーによって評価を前後する関係。ただ、これら3頭は3月のドバイシーマクラシックで3着のスワーヴリチャードに8馬身以上も後れを取っている。ディアドラとすれば今回はアウェーでの戦いになるものの、その不利を差し引いてもこの3頭と同格の評価というのは侮られている印象だ。

ドバイに向けて日本を発ったのが3月20日。今回のレース当日でちょうど3か月と異例の遠征に出ているが、英国の調整地であるニューマーケットに到着したのは日本時間の5月2日早朝で、1か月半の十分な時間を過ごしている。ディアドラには秋華賞での道悪実績があり、天候が変わりやすい現地に不安はなく、父ハービンジャーもアスコット競馬場を大の得意としていた。実力を発揮できる条件はそろっており、現地の評価を覆す激走に期待したい。