際立つヴィアシスティーナの存在感、2番手争いは日本勢を含め混沌
春開催のコックスプレートと並び、豪州2000m路線の最高峰に位置づけられるクイーンエリザベスSは、過去に日本から5頭が遠征して2019年のクルーガーが2着、2020年のダノンプレミアムも3着と好成績を収めている。今年の挑戦者ローシャムパークとジオグリフは、それらに勝るとも劣らぬ実績の持ち主で上位争いに期待したい。
クイーンエリザベスSは過去5年のうち3回が道悪で行われてきたが、舞台のランドウィック競馬場があるシドニー地区の週間予報では、多少の雨こそあるものの概ね晴れが続いており、今年は極端な馬場の悪化を避けられそうだ。
前売りから圧倒的人気を集めるヴィアシスティーナは、10月のコックスプレートでプログノーシスを8馬身ちぎってレコード勝ち。ここも勝てば女傑ウィンクスのシーズン最多G1勝利記録(7勝)に並ぶ。昨年はこのレースでプライドオブジェニに6馬身余り及ばず2着だったが、当時は欧州から豪州に移籍したばかりでJ.マクドナルド騎手とのコンビも2戦目。すっかり息も合い、同じランヴェットS勝ちからの臨戦と今回は万全の態勢にある。
このヴィアシスティーナに挑む日本勢は、プログノーシスがコックスプレートでつけられた着差だけ見ればお手上げ。ただし、当時はプログノーシスがプライドオブジェニを深追いしたことでヴィアシスティーナをアシストしてしまった感もある。
ローシャムパークはゲートが速いタイプではなく、ヴィアシスティーナを追い掛ける形になりそう。どれだけついていけるかが勝負の分かれ目だが、2着に好走した昨年の大阪杯とBCターフを含め、重賞実績が小回りコースに偏っている点は気になる。ランドウィック競馬場は直線こそ中京競馬場に近いスケール感だが、1周2227mは東京競馬場をしのぐ大箱。第3コーナーからゴールまで約1000mあり、捲り気味に進出するスタイルに合うか。
ジオグリフはドンカスターマイルからの連闘だが、18着という結果は度外視。大外枠(20番)に決まった時点で勝ち目は薄く、レース内容も直線で脚を伸ばす程度だった。皐月賞馬にして昨年の札幌記念も2着と、実績的にはマイル戦より2000m向きでもあり、不完全燃焼に終わった前走の悔しさをここにぶつけてほしい。
2年前の覇者ドバイオナーが本番を前に評価を高めてきた。2年前は前哨戦のランヴェットSとクイーンエリザベスSを連勝したが、今年はタンクレッドSを快勝しての臨戦。英国調教馬ながら豪州ではG1ばかり無傷の3連勝と無類の相性を誇り、6歳の昨年から2400m路線にシフトして成績安定と衰えは見られない。2000mのG1は約1年ぶりという部分が課題も、豪州での実績的に大崩れは考えにくい。
地元の豪州勢でヴィアシスティーナに次ぐ人気はチェオルウルフ。8着に完敗した昨年の雪辱を期す。4歳の今季は春にエプソムHと豪キングチャールズ3世SでG1連勝と成長もしている。ただ、豪ダービーとローズヒルギニーで3歳限定戦ながらG1の2着があるものの、2000m以上では前走のG2ネヴィルセルウッドSが初勝利。調教師曰く太目残りだったとのことで、相手強化の今回は少しでも絞れていることが最低条件になる。
バッカルーとライトインファントリーマンはヴィアシスティーナと同じく欧州からの移籍馬。前売りではチェオルウルフやローシャムパークと3番手グループの評価を受けている。バッカルーは昨年のクイーンエリザベスSでチェオルウルフに約2馬身先着(6着)した。2000mでヴィアシスティーナに先着したことはないが、10月のターンブルSでは0.2馬身差の2着がある。
ライトインファントリーマンは欧州でG1勝ちこそないものの、ジャックルマロワ賞での2年連続をはじめ入着5回の実力派。豪州に移籍当初は振るわなかったが、8月からの今シーズンは前走のオーストラリアンCなどG1を2勝して軌道に乗ってきた。これからヴィアシスティーナのようになっていく可能性はあり少々不気味だ。
これらより下の人気では、ゴドルフィンのトムキトゥンにG1スプリングチャンピオンS勝ちの舞台実績がある。1か月前のオースターマイルで久々のG1勝ちなど今シーズンはマイル路線を歩んできたが、ゴドルフィンがコックスプレート3着の僚馬ブロードサイディングを次週のオールエイジドS(1400m)に回しての指名だけに侮れない。
ディナイナレッジは前走のオーストラリアンCでライトインファントリーマンの2着。当時は快足プライドオブジェニが逃げる展開だったが、今回は不在の上に昨年10月のG1コーフィールドSを逃げ切るなど手の合うM.ザーラ騎手で変わり身も。
欧州の長距離路線で活躍していたヴォバンは前々走で2000mのG3勝ちも、この相手関係でスピードに対応できるか。リンダーマンとフォークナーパークは前走のランヴェットSでヴィアシスティーナに着差以上の完敗だった。
(渡部浩明)