コラム

Column

【香港チャンピオンズデー:回顧】QE2Cはパキスタンスターが重賞初制覇、日本馬の連覇はならず

2018年05月01日 11:00

  • 友だち追加数

 4月29日、香港のシャティン競馬場で3つのG1レースが組まれた香港チャンピオンズデーが行われた。メインレースのG1クイーンエリザベス2世カップ(以下QE2C)には昨年のネオリアリズムに続く勝利を目指して、日本からアルアインとダンビュライトの4歳馬コンビが出走したが、結果はアルアインが5着、ダンビュライトは7着に敗れた。優勝したのは、日本のオッズで5番人気だったパキスタンスター。昨年のQE2Cで2着に入るなど香港でもその実力を認められながら、気性の難しさからここまで重賞タイトルに手が届いていなかった馬が、大人の走りを披露して勝利を収めた。

 レースは昨年12月のG1香港カップを逃げ切ったタイムワープがここでも主導権を握り、楽には行かせまいとダンビュライトが差のない2番手からプレッシャーを掛ける。後方からレースをすることが多かったパキスタンスターが好スタートから3番手につけ、アルアインはスタートでやや出遅れたが、すぐに4番手のポジションをキープ。今年の香港ダービー馬ピンハイスターは後方に構えた。

 最終コーナー手前でアルアインが動いてダンビュライトの外へ進出して最後の直線を迎え、残り300mでタイムワープとダンビュライトの間を割ってパキスタンスターが抜け出して後続に3馬身差をつける完勝。優勝タイムの2分00秒21は2000mで行われている1997年以降では、1999年のジムアンドトニックに次ぐ速いタイムだった。

 800mの通過タイムは50秒47(400mごとのラップは25秒74-24秒73)。超スローペースの昨年(54秒80)と比べれば速いものの、平均的な前半の入り。その後の400mごとのラップタイムは、23秒71、23秒18、22秒85と刻まれて、上り800mのタイムは45秒75。400mごとの後半3つのラップすべてで24秒を切り、なおかつ加速していったのは1997年以降で初めて。好位グループにつけた日本の2頭にとっては道中で息の入りにくい厳しい流れになったが、対照的に3番手でレース進めて優勝したパキスタンスターにとっては、その強さが際立ったレースになった。

 5着に終わったアルアインのC.デムーロ騎手はレース後、「先行馬の後ろにつける完璧なレースはできましたが、前を捕まえにいくところで馬の気難しさが出てしまいました。ブリンカーを付けた方が良いかもしれません」とコメント。また、管理する池江泰寿調教師は、「道中はタイムワープを先に行かせて3、4番手でという作戦で、これは作戦通りでした。ただ、結果的にペースが速くて先行馬が総崩れしていますので、オプションとして速ければ中団でもということを持っておけば良かったなと思います」と話した。

 7着ダンビュライトのT.ベリー騎手は、「道中は良い感じでレースができていました。しかし、残り800mあたりでスピードには乗っていけたものの、ぺースが一定になってしまい、彼の末脚を出すことができませんでした。残念です」と語った。

 勝ったパキスタンスターは、昨年の香港ダービーを最後方から追い込んでラッパードラゴン(史上初めて香港4歳クラシックを完全制覇)の2着に入り、昨年のQE2Cでネオリアリズムをクビ差まで追い詰めた実力の持ち主だが、その後はレースや調教で自ら走るのをやめてしまう悪癖を覗かせて迷走。調教試験に合格してようやく今年2月にレース復帰を果たすも、前走のG2チェアマンズトロフィー(4着)でまたレースを途中でやめようとして、再び調教試験へ。その結果次第ではこのレースへの出走が危うい状況だったが、試験にパスして何とか出走にこぎ着けていた。

 騎手も当初予定していた昨年の英国リーディングジョッキーのS.デソウサ騎手が、25日になって香港行きが難しくなったためにキャンセル。その代打に指名した豪州のK.マカヴォイ騎手も耳の疾患で飛行機に搭乗できなくなり、急遽白羽の矢を立てたのがW.ビュイック騎手。そんな紆余曲折を乗り越えて掴んだパキスタンスターの重賞初勝利だけに、関係者の喜びはひとしおだったはず。今シーズンはまだ4戦しかしておらず、次走は5月27日のG1香港チャンピオンズ&チャターカップ(芝2400m)が有力だが、陣営は6月に英国で開催されるロイヤルアスコットを含め海外遠征プランも検討するという。

 なお、G1チェアマンズスプリントプライズ(芝1200m)に出走したG1高松宮記念優勝馬ファインニードルは、道中5番手から最後の直線でもしぶとく伸びて4着。騎乗したT.ベリー騎手が「初めての非常にメジャーなレースでペースも速かったと思いますが、ラスト150mは上位3頭よりも良い脚を使っていたと思います。まだ若いですし、今後に期待したいと思います」とコメントしたように、ハイレベルな香港スプリント界のトップクラスの中で健闘を見せた。QE2Cで敗れた日本馬2頭とともに、また秋に国内でいいレースを見せて、12月の香港国際競走で今回の雪辱を果たしてくれることを期待したい。

(サラブレッドインフォメーションシステム 伊藤 雅)

ページトップへ