【香港国際競走現地レポート】状態はいずれもよさそう、戦略と展開が結果を決めるか
2022年12月09日 17:59
昨日に続き、香港国際競走に出走する日本調教馬の関係者に取材した内容をお届けする。お話はいずれも木曜の枠順抽選会終了後に伺い、金曜のプレスカンファレンスも参考にした。
まずは、香港カップに出走するジャックドールの藤岡健一調教師。最初に天皇賞(秋)の結果について筆者の見解をぶつけてみたが、師の認識も概ね同じのようだった。パンサラッサが大逃げする一方で2番手以下は速い上がりを要求されていたことについて、師は
「キレるタイプの馬ではないので、あの展開と結果になると、結果論で語るなら前を追うべきだったと指摘されるのは分かります」
と冷静に振り返っていた。そこに筆者の見解を加えさせてもらうと、前を追って負けたらそれに対する非難もあったはずだし、結果論で語るのとレース中に判断することは前提条件が違うという面もあるだろう。
前走が悔しいレースとなっただけに、今回雪辱を期す気持ちは強いはず。武豊騎手への乗り替わりなので「騎手には具体的な指示を出しますか、それともお任せですか?」と聞いてみたところ、
「そのどちらでもなく、騎手と協議します(笑)。ゲートが開いてからはその時の状況に応じて騎手に委ねることになりますが」
というお答え。枠順抽選ではシャティン2000mで有利な内枠(2番)を自ら引き、小さくガッツポーズが出た。
「輸送などはすべて順調でしたし、デキは前走より良いです。馬場適性も、札幌記念を勝っているような馬なので路面としては東京よりシャティンのほうがよいでしょう」
とのことで、リベンジの条件は整ったと言えそうだ。
金曜のプレスカンファレンスでは「皆さんパンサラッサの逃げを想定しているでしょうが、こちらもスペシャルタクティクスを考えます」と意味深な一言。司会者の「逃げもある?」の質問には「秘密です」と煙幕を張った。
続いて、香港カップでライバルとなるパンサラッサの矢作芳人調教師。枠順抽選では8番を引いた。
「出遅れた場合のリスクを考えると、内すぎる枠より8番くらいでよいと思います。日本馬が内に何頭か入ったので、道中は日本馬が多く前にいる形になりそうですね」
と分析する。展開については、
「前走は東京競馬場だと後続が追って来ないということもありビッグリードをとる形になりましたが、今回どんな逃げを打つかはジョッキー次第ですね」
とのお話。筆者が「1コーナー勝負ですね」と振ったら、
「いや、2コーナーでも向正面でも、相手の出方次第ではどこまででも。やるべき競馬をやるだけなので」
と強い意志を込めたコメントが返ってきた。
「馬は疲れもないですし、馬体も減っていません。天皇賞(秋)の前は自分のコメントも口が重くなっていたと思うのですが、当時は良化途上でした。今回のほうが良くなっています」
と状態面でも自信をのぞかせる。
金曜の会見では戦略について聞かれると「(先に会見した)藤岡健師がすべて秘密としか言わないのでなんとも……」と会場を笑わせたが、前述の通り逃げの意志は固そうだ。
ダノン2騎をマイルとカップに出走させる安田隆行厩舎については、安田景一朗調教助手にお話を伺った。
香港マイルに出走するダノンスコーピオンは、マイルCSで外枠から位置を取りに行ったが取り切れず、末を欠いて11着となった。そのレースについては
「レース後も息遣いは乱れていませんでした」
と、力負けとは違う結果だったようだ。
「調教の雰囲気は前走も悪くはなかったのですが、右に張っていたのも今回は無くなり、今回のほうがよいですね。3歳馬の海外遠征ですが輸送のときも落ち着いていて、むしろ古馬のダノンザキッドのほうがそわそわしてましたよ(笑)」
と遠征でも準備は十分できているようだ。
香港カップに出走するダノンザキッドについては、
「毎日王冠で突進したような馬なので、輸送で少しソワソワしたぐらいは許容範囲内です。能力のある馬なので、今回の経験が来年以降の結果にもつながってほしいですね」
とのことだが、今回のレースでももちろん期待されている。
ここ最近は川田騎手→戸崎騎手→北村友騎手と乗り替わりが続いて競馬の内容も変わっていったが、それによってこの馬が能力を発揮できる前提条件が見えてきたようでもある。
「型にはめず、馬が自由に自分の意志で走れるような形になったほうが結果に繋がるのかもしれませんね。それさえできれば距離はマイルよりむしろ1800,2000mのほうが良いと思います。直近のレースに騎乗した戸崎騎手・北村友騎手もそのような見解でした」
とのことで、皐月賞以来の2000mはむしろプラスに働く可能性もある。
(取材、文:須田鷹雄)