【来年こそは香港へ!~香港競馬観戦ガイド】 第5回:香港国際競走回顧
2024年12月10日 15:30
来年こそは香港競馬へ、という方にガイド的な内容をお届けする第5回。今回は12月8日に行われた香港国際競走の4競走を日本馬中心に回顧します。来年以降の参考にしていただきたいと思います。
■香港ヴァーズ
ステレンボッシュが単勝3.2倍の1番人気。スタートは同馬にしては悪くなかったものの、モレイラ騎手が選んだ位置は最後方でした。国枝師によるとレースプランは取れるなら4~5番手も、だったそうで、「スタート直後の反応が悪かったのかな」とジョッキーを庇っていました。
最後方から捲り上げたステレンボッシュは4角で3番手。直線では勝つのかというシーンもありましたが、最後は力尽きて3着に終わりました。正直なところ、モレイラ騎手の乗り方は強引過ぎたかな、という印象。ただそれで3着ですから、馬の力は証明できたと思います。
国際競走となると集まる騎手は名手ばかり。となると馬乗りの上手さだけでなく、機略こそが問われるのかもしれません。
香港ヴァーズは例年スローで入って徐々に加速していく競馬。今年も基本的にはそうでした。ただ、ステレンボッシュの捲りが前を一掃したこともあって、1,2着は「内半分の枠を引いた差し馬」。脚質と関係なく、来年以降の馬券では内枠を重視したほうがよいかもしれません。また、勝ち馬はスタミナ色がだいぶ強い馬で、2着馬は春の香港でこれまで結果が出ていなかった馬。ジャパンカップでは好走できない欧州馬ですが、香港ヴァーズではまだまだ彼らの底力を侮ってはいけませんね。
■香港スプリント
単勝1.1倍に推された地元のニュースター、カーインライジングが単勝1.1倍に推された一戦。同馬は好スタートを切るとパートン騎手は積極的に前に出し、ハナへ行ってしまうかという勢いを見せました。
しかし内枠から悪くないスタートを切ったカリフォルニアスパングルは、逃げないと即終了の馬。力づくで突っ張ってハナを死守します。2番手で余裕の手応えを見せるカーインライジング。4コーナーではもう勝ち馬は決まったという雰囲気でした。
直線追いすがったのはサトノレーヴ。道中の位置は7番手でしたが、4番枠ということもあって効率よく進めることもできました。沙田の馬場は中山より1~1.5秒くらい余分に時計のかかる馬場。洋芝好走歴のある同馬は合うのかもしれません。また、最近のスプリンターズSは内枠か先行馬がかなり強く、この馬は当時の12番枠に泣いた格好。このあたりの条件替わりも、来年以降の馬券のヒントになりそうです。
サトノレーヴを除くと、上位は地元馬が独占。来年以降も、まず欧州や米国からの遠征馬ではまず厳しいかと思います。
■香港マイル
ゴールデンシックスティ引退後は絶対的な王者がいない香港のマイル界。人気がどうなるか注目されましたが、地元のヴォイッジバブルが推されました。ハンデを背負う前哨戦を好走してきたこと、位置が取れる脚質、5番枠と内寄りの枠、鞍上にJ・マクドナルド騎手と確かに条件が揃った印象がありました。2番人気はギャラクシーパッチ。こちらは大外14番枠をどう克服するかがテーマとなっていました。
レースは大方の予想通りビューティーエターナルが逃げ、その後ろにヴォイッジバブルとジャンタルマンタル。しかし4コーナーを回るときの手応えには明らかに差があり、ジャンタルマンタルは直線他馬と接触すると早々に後退しました。木曜以降馬場入りしていませんでしたし、デキの問題もあったかもしれません。
ヴォイッジバブルが抜け出すと、外から差してきたのがソウルラッシュ。やはり力のある馬ですが、グリーンベルトのある国際競走で、外からの差しはどうしてもジリジリしたものになります。昨年より着順は上げたものの2着という結果でした。
やはりヴォイッジバブルのように条件が揃った人気馬には逆らわないほうがよいというのが馬券上の印象です。3連単の場合は前→後ろ、内枠→外枠のように組み立てたほうがよいかもしれませんね。
■香港カップ
安田記念での勝利で日本の皆さんにもおなじみ、ロマンチックウォリアーが登場。しかも沙田芝2000mでは絶対的に有利な内枠を引き、鬼に金棒状態でした。
スタートするとハナに行く勢いで1コーナーを回り、行きたい馬を行かせて4番手に。3~4コーナーでは徐々に進出し、4コーナーではもう勝ったという形を作っていました。 日本馬はタスティエーラがイン寄りを効率的に進み、リバティアイランドは持ち味の差し脚に賭けましたが、相手が悪すぎました。ゴール前マクドナルド騎手が挑発的に後ろを振り返る余裕を見せ、圧倒的な人気に応えました。
日本馬についてはとにかく相手が悪かったという印象で、悲観する内容ではなかったと思います。リバティアイランドは調教も返し馬もスローキャンターだとアタマを上げるシーンが見受けられましたが、そういう気性の馬がアウェイできっちり走ったのは収穫です。タスティエーラについては沙田の馬場が合っている印象。逆算して考えると、来年は札幌記念あたりで良い結果を出すかもしれません。
ロマンチックウォリアーが強すぎて来年以降の馬券に参考になる点は少ないような気もしますが、やはり内枠の人気馬、特に位置を取れるタイプの馬には逆らわないほうがよいという感じでしょうか。
(取材、文:須田鷹雄)